【錆びない超合金】B747-400 キーホルダーの話

【A330】ロールスロイス Trent 700の緻密で繊細な部品|HPTブレード

・アメリカ製エンジンとは一味違った独自の高性能を誇る、エアバス A330用の ロールスロイス製 Trent 700 エンジン。その心臓部となる高圧タービンブレード(HPT)を紹介します。

これまで日本では、少しマイナーな存在だったRR(ロールスロイス)の航空機エンジンですが、Boeing 787やAirbus A350の就航によって身近な存在となりました。

RB211から受け継いだ伝統を継承しつつ大幅に改良されたTrent700エンジン。その技術は後のTrent 800・900・1000・XWBへと発展していきます。

 

RR Trent 700 高圧タービンブレード

Airbus A330-200/-300

Rolls Royce Trent 700

High Pressure Turbine Blade (HPT)

  • エンジン型式:Rolls Royce Trent 700
  • 開発年:1995年
  • 材質:ニッケル基耐熱超合金 CMSX-4
  • 結晶構造:単結晶(SC材)
  • 冷却方式:コンベクション+インピンジメント+フィルム
  • 搭載機種:エアバス A330-200/-300
  • 備考:ブレードの先端にシュラウドを設けることで、燃焼ガスの漏洩を最小限に抑えるTrent 700(他シリーズ共通形状)の高圧タービンブレード。しかし、ブレード先端に重いシュラウドがあることで、離陸時には1枚のブレードに約18トンという大きな遠心力が根元に作用する。効率は良いが、全体的に頑丈に作る必要があるという不利な面もある。一方、アメリカ製のエンジンでは、先端シュラウドがないフラットなHPTブレードを持つエンジンが多い。効率では若干劣るが、軽量というメリットを活かして高圧軸を高回転で運転し圧力比を稼ぎ、トータル効率でカバーするという設計のエンジンも多い。Trent 700 HPTのもう一つの技術的特徴は、高圧タービンブレードにHP側(高温)LP側(低温)の異なった二種の冷却用圧縮空気を同時にブレード内に導入している。それも、毎分 10,000回転以上で回っている状態で。

RR Trent 700 HPTブレードの詳細

・Trent 700 エンジンの燃費や性能を決める心臓部となる高圧タービンブレード。離陸出力時には1,500℃に迫る高温高圧の燃焼ガスを受け、毎分10,000回転を超える速さで運転している。

長さ11㎝・重さ210グラムの小さなブレード。

最大出力時、この1枚が約700馬力を発生させる。

 

・実際のブレードでは高温高圧の燃焼ガスからメタルを保護する目的で、ブレード表面には白色のセラミックコーティング(TBC)が施される。

※このブレードは展示鑑賞用オブジェのため、TBCなどのコーティング類は剥がされスクラップ処理が施されています。

 

・ブレード前縁のへこみや後縁の損傷は、燃焼室やタービンノズルベーンで発生した欠けや剥がれた異物が、高速回転で運転しているブレードに突入し損傷したものと思われる。

 

・後縁側も旧式の直線状ではなく、空力的に考慮されたカーブを描く形状となっている。

 

・先端シュラウドは燃焼ガスの漏洩を抑えるために鋭いエッジ状になっている。シュラウド冷却のための圧縮空気は、前縁側と後縁側が高圧(HP)側からの抽気。中央側は低圧(LP)側からのより冷たい抽気を使って冷却している。

 

2種の冷却空気で空冷するHPTブレード

HP側(高温)冷却空気

・Trent 700 HPTの技術的特徴の一つに、高圧タービンブレードの冷却用圧縮空気をHP側(高温)LP側(低温)の異なった冷却空気を同時にブレード内に導入しているということ。

離陸出力時、燃焼ガスは(約1,500℃、圧力3,600 kPa)という高温高圧の状態でHPTブレードに突入する。特に高温となるブレード前縁腹側(凹側)には燃焼前の(約700℃、3,800 kPa)の高圧空気をブレード底面から導入し冷却している。

ブレード底面から流入した冷却空気は、ブレード内部を循環冷却しながら前縁から後縁にかけて配置された微小な冷却孔からシャワー状に噴き出して翼表面を空気の膜で包むフィルム冷却の役目も兼ねている。

底部から導入した冷却空気を内部循環させながら無数の冷却孔から噴出させ翼表面を冷却

LP側(低温)冷却空気

・先述の燃焼前の高圧空気 HP側(高温)の抽気を使った冷却方法は、どのエンジンメーカーでもほとんど似たような仕組みで行っているが、RB211やTrentシリーズではもう一つ興味深いブレード冷却を行っている。

HPTブレード背側(凸面)の根元導入孔から、低温のLP側 圧縮空気を導入してブレードの背側と先端のシュラウドを空冷する仕組みを持っている。

このような高速回転しているHPTブレードに、温度や圧力の異なった二種の空冷用圧縮空気を同時に導入する冷却方法は珍しく、RRエンジン以外ではあまり例がない。

 

冷却空気は導入孔から先端シュラウドまで一直線に流れる

参照
・The development of jet and turbine aero engines
・SUPER ALLOYS
・The Jet Engine

RR Trent シリーズについて

・ロールスロイスの航空機用 大型ターボファンエンジンは、ロッキード・トライスター(L-1011)やB747用として開発された歴代の傑作エンジン RB211の技術を継承しながらも、より高性能で低燃費なエンジンとして改良され続けている信頼性の高いエンジンです。

日本ではトライスターに搭載されたRB211-22以降、ほとんどの旅客機でアメリカ製エンジンが採用されたことで、RR製のエンジンは少し遠い存在でしたが、Boeing 787(Trent 1000)やAirbus 350(Trent XWB)が就航したことで最近では身近なエンジンとなりました。

共通コア

・エンジンの性能(推力・燃費)を左右する内部コアに関しては、高圧タービンブレード(HPT)も含めて、下記の3タイプのエンジンは共通のコア仕様となっていることも技術的に興味深い内容となっています。

 

  • B747-400用:RB211-524G/H-T
  • A330用:Trent 700
  • B777用:Trent 800

既存のRB211-524G/Hシリーズの高圧タービンブレード(HPT)には、一方向性凝固 DS材( Mar-M-002)が使用されていた。しかし、Trent 700のコア部分が-524G/Hエンジンに適用可能ということがわかり-Tシリーズが誕生した。-524G/H-Tになったことで、より低燃費で環境に良いエンジンとなった。

タービンブレードの材質や形状

・これら3タイプのエンジンは、RB211-524G/H-T(推力 58,000 lbf)からTrent 800(90,000 lbf級)まで共通のコアとなっており、基本的に HPTブレードに関しても同一の材質・形状となっている。

約2倍の推力差を共通コアでどのように達成したのか?

高圧軸に関しては、HPTブレードのフィルム冷却孔の追加やコーティングなど小規模な変更だけに止め、形状や材質など大幅な設計変更はしなかった。そのかわりに、中圧段の圧縮機を高負荷型にすることで全体の圧力比を高めた。また、ファンを大型化することで推力を劇的に向上させた。

結果的に、高温・高負荷となるTrent 800の中圧軸のタービンブレードには、より耐熱性の高い第三世代の単結晶材(CMSX-10)が採用されることになった。

 

ニッケル基耐熱合金 単結晶材
エンジン型式高圧側 タービンブレード中圧側 タービンブレード
RB211-524G/HMar-M-002不明
RB211-524G/H-TCMSX-4CMSX-4
Trent 700CMSX-4CMSX-4
Trent 800CMSX-4CMSX-10

※資料:SC and DS Blades and Vanesより

 

航空資料館

近日中に747-400で使用された旧タイプのRB211-524GエンジンのHPTブレードを紹介する予定です。お楽しみに!

 

アメリカ製のHPTはどんな形タービンブレードについてもっと知りたい方はこの記事もおすすめです。

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