ターボプロップ機の独占路線網に初めて切り込んだ、50席クラスのリージョナルジェット機(地域間輸送旅客機)
ボンバルディア CRJファミリーは、これまでターボプロップ(プロペラ機)が主流だった小需要・短距離航空路線に参入した初の50席クラスのジェット旅客機。
ファミリー初となるCRJ-100は 1991年5月に初飛行。
短距離路線において経済性が優位なターボプロップ・エンジン。
それに対抗するために開発された GE製 CF34 ターボファンエンジンとは。また、燃費効率の要となる高圧タービンブレードはどんな形状なのか紹介します。
Cory W. Watts from Madison, Wisconsin, United States of America, CC BY-SA 2.0,
CF34-3B 高圧タービンブレード
Bombardier CRJ100 / 200
General Electric CF34-3B/-3B1
High Pressure Turbine Blade (HPT)
- エンジン型式:General Electric CF34-3B/-3B1
- 開発年:1995年(TF34-GE-100 1972年)
- 材質:ニッケル基耐熱超合金(Rene 142)
- 結晶構造:一方向性凝固
- 冷却方式:コンベクション+フィルム
- 搭載機種:CRJ100/200(-3B/-3B1)
・GE製 CF34エンジンは、軍用のTF34から開発されたバイパス比5~6の民間型 高バイパス比ターボファン・エンジン。
軍用エンジンとしては、A-10(サンダーボルト)やS-3(バイキング)などに搭載、民間型はビジネスジェット(チャレンジャー601)やCRJ100/200の他、派生型の推力増強タイプがCRJ700・E170/175に搭載されている。また、CFM56-7の技術を転用した全く新しいタイプのCF34-10Eが開発されE190に使われている。
TF34/CF34 誕生の歴史は、1964年まで遡る。元々は、GE T64 ターボシャフト/ターボプロップ エンジンがベースとなっている。
当時、ターボシャフトエンジンといえば遠心式圧縮機だけを使用したものや、遠心+軸流圧縮機を組み合わせたものが一般的だった。(アリソン T56は軸流14段式 1954年)
軸流圧縮機を用いたほうが高圧力比を容易に達成でき燃費効率が優れるなど様々な利点があるが、コンプレッサーストールと呼ばれる圧縮機翼の失速や、サージマージンが狭いなど運用においては繊細な制御が必要で構造も複雑になるという短所もあった。
しかし、燃費効率を重視したGE T64は軸流14段圧縮機を採用。それが後々の発展型ベースエンジンとなった。二段の出力タービンからは 4000~4700 SHPの出力が得られるT64。この出力を、プロペラではなく、ファンを駆動させようというコンセプトで開発されたのがTF34/CF34エンジン。
推力8,000lbf級のCF34-3/-8シリーズ。推力増強型として一新されたCF34-10は、性能の要となる高圧タービンにRene N5材(単結晶鋳造)が採用されるなど新技術が大幅に取り入れられ進化した。
B747-400 CF6-80C2 HPT1とのサイズ差はこれくらい、CF34-3Bシリーズの高圧タービン(HPT)は全長5cm程。推力増強型の-8シリーズは一回り大きくなり、-10シリーズでは CFM56-7のHPTをスケールダウンした形状に変更された。
タービンブレードの画像
前縁にフィルム冷却がない旧来のターボプロップ/シャフトエンジンの高圧タービンに近い形状のブレード。TET(タービン入口温度)は1,100~1,200℃といわれている。
シンプルな形状ではあるが、3D翼と呼ばれる流体の流れを解析した効率の良い翼型設計が採用されている。翼内の空冷には、圧縮機出口の空気をブレード根元2カ所から取り入れて、後縁のスロット及び先端の空冷孔から排出している。
全長47ミリ、重量40グラム、サイズ的には T64エンジンの高圧タービンブレードとほとんど変わらない。
推力 50,000~60,000 lbf級のCF6-80C2、対する8,000 lbf級のCF34-3シリーズの比較画像。
(おまけ)CF34-8Cの高圧タービンブレード
過去には、IBEXからボンバルディアCRJ700型機で使用された CF34-8C5B1エンジンの高圧タービンブレードが販売されていた。-3シリーズと比べると、デザインは似ているが形状が一回り大きくなっている。
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