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【1時間に0.75 リットル】空中給油を続けても飛行時間や航続距離を無限にできない単純な理由

空中給油

「もしも、空中給油が常に可能なら飛行時間や航続距離に制限はなくなるのか?」

・実は空中給油による燃料補給だけでは、飛行時間や航続距離が無限に伸びるわけではありません。

メカ的にそれは可能なのかという話なので、パイロットが疲れるから無理、交代が必要などの人間がテーマではありません。

タイトルで意味がわかる方も多いと思うので、マニア好みの数値も掲載しました。

 

燃料だけではない、ある液体の消費量

・最近の自動車のエンジンは、10,000㎞(または半年)程度はオイル交換や補充の必要もなく走ります。また、日々の走行前にボンネットを開けてオイル量を確認するドライバーもほとんどいないと思います。

自家用車に限っていえば、走行によってオイルが極端に減るというのは無くなりつつあります。車検で交換するあの液体ねという程度のイメージではないでしょうか。

 

それに対してタービンエンジンは軸受けの構造上、多少のオイル漏洩は避けられません。

運転中は常に高速回転・高荷重を受ける軸受けは高温(270℃程度)になることから、オイルを直接ベアリングに吹付ける強制潤滑冷却が行われています。しかし、軸の高速回転による遠心力でオイルとそのミストの一部が軸受外に飛散します。

それを防ぐ目的で、オイルシールやエアシールで気密性を保っていますがやはり多少のオイル漏洩は避けられない。その量は一般的に 1時間当り0.4~1.9リットルとされています。

実際、民間エンジンと軍用エンジンで違いはあるのか。飛行可能時間はどれくらいなのか比較してみました。

 

民間機エンジンのオイル消費量

 

CF6-80シリーズの場合(B747・767、A300、その他)

  • オイル消費量1時間あたり0.75リットル(0.75 ℓ/hr)
  • 潤滑回路全量:33.1リットル
  • オイルタンク容量:25.5 リットル
  • サービス可能オイル量:12.3 リットル

オイルレベルが ”FULL”の場合は、最大16時間30分の連続運転が可能

 

※オイル消費量は最大推力時や巡航の一定出力などで変化します。平均的な数値です。
※CF6-80シリーズには様々な型式がありタンク容量や消費量はその一例です。
※オイルシールやエアシールの気密性は常に改良されています。

軍用機エンジンのオイル消費量

 

F100エンジン(F-15、F-16)

  • オイル消費量1時間あたり0.47リットル(0.47 ℓ/hr)
  • オイルタンク容量:19 リットル
  • 平均的なサービス可能量:9.5 リットル

オイルレベルが ”FULL”の場合は、20時間程の連続運転が可能

F110エンジン(F-16)

  • オイル消費量1時間あたり1.4リットル(1.4 ℓ/hr)
  • オイルタンク容量:25.5 リットル
  • 平均的なサービス可能量:9.5 リットル

オイルレベルが ”FULL”の場合は、7時間程の連続運転が可能
(極端に消費量が多いのは最大推力時の数値と思われます。実際はF100と同等と考えられる)

F119エンジン(F-22)

  • オイル消費量(Normal)1時間あたり0.7リットル(0.7 ℓ/hr)
  • オイル消費量(MAX)1時間あたり1.3リットル(1.3 ℓ/hr)
  • オイルタンク容量:12.5 リットル
  • 平均的なサービス可能量:6.5 リットル

オイルレベルが ”FULL”の場合は、9時間程の連続運転が可能

 

※オイル消費量は最大推力時や巡航の一定出力などで変化します。平均的な数値です。
※容量や消費量は一般的に公開されている情報です。実際とは大きくかけ離れている可能性もあります。
※連続運転時間は状態により変化します。目安なので一概にこの数値が全てではありません。

長時間の飛行には燃料だけでなくオイル補給も必要

・軍用機・民間機を問わず、空中給油によって常に燃料が受けとれる状況が仮に可能だとしても、オイル補給のために20時間程度で地上に戻る必要があります。

空中でエンジンオイルの供給も同時に受けられれば飛行時間の延長は可能となりますが、軍用機ならミッションに応じてオイルタンクを大型化すればよいだけの話なので、空中オイル補給は現実的ではありません。

今回は「もしも、空中給油が常に可能ならどれくらい空中に滞在できるのか?」という素朴な疑問を、少し趣向を変えてメカ的な視点で検証しました。

結果としては何日も滞在できません。20時間程度で地上に戻る必要があります。


おまけ:Mobil Jet Oil Ⅱ(1クォート)の値段

ちなみに、B737-800(CFM56-7B)でも使用されているエクソン・モービルの【Mobil Jet Oil Ⅱ】タービンエンジンオイル。

化学合成油で軍用ミルスペック(MIL-PRF-23699-STD)規格に承認されたこのオイルは一般でもネット購入できるようですが、価格は1缶 4,814円(946ml入りクォート缶)と結構なお値段です。

モービルジェットオイルⅡは、スペースシャトルでも採用されたという実績があるようです。

 

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