高圧タービン静翼(NGV:ノズルガイドベーン)は、エンジンの燃費や推力・タービン効率を大きく左右する重要部品の一つとされている。
燃焼室から出てきた高温高圧の燃焼ガスを、最初に受ける高圧1段目のタービン静翼は、タービン動翼が効率的に作動するよう燃焼ガスの流れ方向と流速を変える部品です。
今回は、B747-200Bに搭載されていたCF6-50E2のHPT 1段目 ベーン(ジャンク品)について紹介します。
CF6-50E2 高圧タービンノズル 1段目
BOEING 747-200B
General Electric CF6-50E2
High Pressure Turbine Vane Stg1
- エンジン型式:GE CF6-50E2
- 開発年:1982年
- 材質:コバルト基耐熱超合金 X-40
- 結晶構造:精密鋳造
- 冷却方式:コンベクション+インピンジメント+フィルム
- 長さ: mm
- 重さ: g
- 搭載機種:ボーイング B747-200B
- 備考:離陸出力時には、約1,300~1,400℃に達する高温高圧の燃焼ガスを最初に受ける高圧1段目ベーンは、燃焼ガスをタービン動翼が適切に作動する流入角と速度に変換する重要な部品。タービン動翼と違い、遠心力を受けないベーンには、熱衝撃性と高温耐食性に優れた材料が要求される。CF6-50の場合、高圧1段目NGVにはX-40(コバルト合金)、高圧2段目のNGVにはRene80(ニッケル合金)が使用されている。これらの合金でも高温耐食性が不十分な場合は、表面にニッケル・アルミナイト溶射やTBC(セラミック)コーティングが施される場合もある。
ノズル ガイド ベーンの画像
・材料の融点を超えるほどの燃焼ガスに曝される高圧1段目ノズルには、熱から守るために様々な空冷が利用されている。
その方法としては、中空構造になっているノズルガイドベーンの翼内に、燃焼前の圧縮空気を流すことで部品内部を冷却する方法。そして、冷却後の圧縮空気を翼表面の無数の孔からシャワー状に噴射することで空気の膜を作るフィルム冷却などがある。
これらの空気冷却を用いることで、燃焼ガスの温度を上げることが可能となり燃費効率が向上する。しかし、冷却に使用する圧縮空気を作るにも燃料を消費するため、少ない冷却空気で効率よく冷やすことが要求される。
その結果が、機械部品ではあまり目にすることのない独特な部品形状となっている。
・入口は広く、出口は狭くすることで燃焼ガスを加速させるノズル形状。それと同時に、タービン動翼に最適な流入角になるようガス流を偏向させる役目もある。
・ノズルベーン翼内を空冷した圧縮空気は、翼表面に規則正しくあけられた0.5㎜ 程度の無数の孔からシャワー状に噴出させ表面に空気の膜を作る。
このフィルム冷却法によって、メタルが燃焼ガスに直接晒されるのを防いでいる。
特に高温となる翼前縁には、多量の冷却空気が中空構造のベーン内部を通り前縁を中心に冷却している。
・高温・高圧の燃焼ガスが通過した様子が翼表面の焼け具合から観察でき、空冷孔付近では冷却空気の流れの様子も確認できる。
回転せずに固定されているタービンベーン(静翼)は、タービン動翼のような遠心力が作用しないため、中空構造(内部冷却)にしやすい厚翼を採用したり、耐熱性や熱衝撃・高温腐食に強い材料や形状となっている。
下記の画像はタービン動翼の断面構造。タービン動翼は高温だけでなく、高回転による過大な遠心力も作用するため軽量化も要求される。
画像:タービンブレード内部 空冷構造から
CF6-50E2の関連記事
【B747-200B】のファンブレード|CF6-50E2 ターボファンエンジン B747-200B 高圧タービンブレード|GE CF6-50E2 エンジン B747-200B 高圧2段目 タービンブレード|GE CF6-50E2 エンジン 【飛行機と火山灰】ジェットエンジン内部のわずか0.5㎜の穴が墜落か生還かを左右する
懐かしいNGVですね。現役の頃を思い出します。これは非常に程度がいい、もっと酷い熱損やクラックだらけの物も見てきました。きっと丁寧に扱われた経歴のエンジンなのでしょう。大切にされてください。