ジェットエンジンのパイオニア「フランク・ホイットル」もその設計で大変苦労したといわれている燃焼室
限られた狭い空間内で、いかに多くの燃料を燃やすことができるか。これがジェットエンジンのパワーの源になる。
ホイットルが設計した「WUエンジン」の単位体積あたりの燃焼密度は、家庭用のガスコンロやヒーターと比較して20倍ともいわれていた。
しかし、現代の大型ターボファン・エンジンの燃焼密度は5千倍以上にもなる。離陸出力時には、1秒間に約2.7リットルの燃料を一瞬で燃焼させ煙にする能力がある。
燃料を単純に高圧洗浄機のようなノズルで噴射させれば良いというわけではない。そこには、炎を竜巻状にする技が隠されている。
【CF6-80C2】Swirlerと呼ばれるジャンク部品
アメリカ国立公文書記録管理局, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
・今回紹介するジャンク部品は、スワラ(Swirler)と呼ばれる燃焼室関連のパーツ。燃料ノズルとセットになっており、CF6エンジンには30個取り付けられています。
Swirlerの中心部に燃料ノズルが装着され、下の図だと左側から高圧空気が流れ込み旋回気流を作り出し右側へ流れます。
SidewinderX, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
こんな役目
・一般的な大型ターボファン・エンジンの場合、高圧圧縮機出口での空気の速度は秒速150~180m/s程度となっており、直後のディフューザー(Diffuser)で25m/s程まで減速させ燃焼室へと入る。
しかし、液体燃料を安定して燃焼させるには 1m/sという非常に遅い速度まで空気の流れを減速させなければ消えてしまう。
そこで考え出された方法が、強い渦の旋回気流の中心に燃料ノズルを設置することで中心部の炎を安定して燃焼させるという方法。
スワラは、小さな竜巻状の旋回気流を発生させるパーツ。
サイズと材質(マテリアル)
・サイズは5㎝程度、重さ70グラムの小さな部品。CF6の場合、30本の燃料ノズルと同じ数が燃焼室の周囲に取り付けられています。
材質: Udimet L605 コバルト基耐熱合金
(燃焼室全体はHastelloy XやHaynes188などで構成)
※材質は複数の資料で確認していますが、勘違いや間違いの場合もあります。
大量の燃料を安定して燃焼させる現代のエンジン
・冒頭でも紹介しましたが、B767-300やB744・C-2などに搭載されているGE製 CF6-80C2の場合、最大出力(離陸時)を発生させるのに、1秒間に「約 2.7リットル」の燃料を燃やす必要がある。
この量は「1時間」でもなければ「1分間」でもない、わずか「1秒」で完全に燃焼させ煙にしてしまう。
また、航空機の場合は飛行環境も目まぐるしく変化する。地上で最大出力を発生させたエンジンは、10数分後には気温-50℃・気圧1/4以下という全く違った環境に晒される。
しかし、どんな状況でも一度点火された火は、機体が完全に停止するまで消えることはない。
(大雨や雲中など大量の水分を吸い込む可能性がある時は、点火プラグを連続使用する場合もあります)