【航空エンジンの歴史Ⅳ】JT8D タービンブレード|名機 B727・B737

P&W JT8Dエンジンは、空飛ぶスポーツカーと呼ばれていた3発ジェットのボーイング727、小さな働き者と呼ばれていたB737-200、他にもDC-9・MD81など民間機だけでも数多くの飛行機に搭載されていた。

初期の低バイパスターボファンエンジンとして、民間機から軍用機まで幅広く販売された大ベストセラーエンジン。総運転時間は15億時間にも及ぶ。

1964年に開発、その後1970年代~2000年代にかけてどのような変遷があったのか、エンジンの心臓部である高圧タービンブレードの形状も併せて紹介します。

 

P&W JT8Dエンジンのラインナップ

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By Alan Radecki Akradecki投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

プラット・アンド・ホイットニー JT8Dエンジンは、軍用エンジンJ52の派生型として1961年に設計開始。推力14,000 lb級(約6~7トン級)のエンジンとして、ボーイングB727やB737-200、カラベルなど民間機に採用されるとともに、C-1輸送機などにも搭載される世界有数の製造を誇るエンジンとなった。

しかし、初期のJT8Dは黒煙混じりの排気ガスと低バイパスエンジン特有の騒音が問題となっていた。しかし、改修キットにより黒煙は改善され、騒音も徐々に静かになりつつあった。

その後、MD-80シリーズ用に改善されたJT8D-200シリーズが誕生。

この-200シリーズは、世界初のリファン・エンジンと呼ばれるもので、エンジンコアはそのまま利用し、ファン部分を既存のものより大型化することで、推力増加と燃費を改善に成功。これまで、ファン部分は2段構成だったが-200シリーズからは1段ファンとなった。

リファン・エンジンは、既存のエンジンコアを流用した改造のため、開発のリスクが小さく・開発期間が短いというのが特徴。

 

JT8Dエンジンのラインナップ

  • JT8D-5:推力 12,250 lbf (DC-9)
  • JT8D-7:推力 14,000 lbf (B727-100/-200)
  • JT8D-9:推力 14,500 lbf (B727・B737-200)
  • JT8D-11:推力 15,000 lbf (B727-200)
  • JT8D-15:推力 15,500 lbf (B727-200・B737-200)
  • JT8D-17:推力 16,000 lbf (B727-200・B737-200)
  • JT8D-209:推力 18,500 lbf (MD-81)
  • JT8D-217:推力 20,000 lbf (MD-82/MD-87/MD-88)
  • JT8D-219:推力 21,000 lbf (MD-83/MD-87)

B737-200:JT8D-17

カナディアン・ノース航空の737-200C型機 エンジン下部にダクトが見える
By Alasdair McLellan投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

エンジン概要

・ボーイングB727・B737-200・DC9・C-1用に開発されたJT8Dエンジンは、初期の-5から-17まで(推力 12,000~16,000 lbf)多種多様なシリーズがある。

このシリーズナンバーは設定推力だけでなく、騒音低減オプションや黒煙減少キットも含まれている。JT8D-5~17シリーズは、ファン部分が2段構成となっているのも大きな特徴。

本来、バイパス比が大きくなるほど燃費は改善されるが、開発された1961年当時は、チタン合金製の大型ファンブレードの開発が難しく技術的に困難だったことから、バイパス比は1に近い低バイパスエンジンとなっている。

離陸時のバリバリバリという大きな騒音は有名で、空港周辺では騒音被害が問題となっていた。

高圧タービンブレードの形状

・高圧タービンブレードは1段で、高圧圧縮機7段を駆動。

高圧タービンブレード:全長11.5㎝

高圧タービンブレード 背側

コンベクションクーリング用 11個の冷却孔

根本から先端へ冷却空気が流れる1960年代の空冷方法

このタービンブレードと似たような構造を持つのが、1969年の初飛行したコンコルドに搭載されているオリンパス593エンジン。

気になる方はこちらもどうぞ

【航空エンジンの歴史Ⅲ】超音速旅客機 コンコルド のタービンブレード

MD-82/MD-87/MD-88:JT8D-217

エンジン概要

・MD-80シリーズ用に開発されたJT8D-200シリーズ(推力 20,000 lbf級)は、ファン直径をこれまでより約20㎝大型化したことで、推力が向上し燃費が改善された。

大型ファンブレードの採用で、これまで2段構成だったファン部分が、-200シリーズからは1段となった。バイパス比は1.73となり、これまでの-5~-17エンジン(バイパス比1.0)に比べて騒音が小さくなった。

コア部分は基本的に同一構造となっているが、より高温の燃焼ガスに耐えられるよう、高圧タービンブレードは内部の空冷構造が改良されている。

冷却空気は、根元底部から入りブレード内部を循環後、根本側面から排出されるコンベクションクーリングとなっている。

高圧タービンブレードの形状

高圧タービンブレード:全長11.5㎝

高圧タービンブレード 背側

根本底部の冷却空気導入孔

冷却空気排出孔

初期のJT8Dとは異なる先端部

まとめ:パワフルで強力なJT8Dエンジン

・空の貴公子と呼ばれていたB727、小さな働き者B737-200、90度旋回も可能と噂のC-1輸送機など、JT8Dエンジンはとにかくパワフルで強力なエンジンとして有名だった。

これらの名機を誕生させたのもP&W JT8Dエンジンの功績だろう。

しかし、低バイパスエンジン(今でいう戦闘機のエンジンに近い)特有の高速排気による爆音は深刻な騒音問題となっていた。他にも排気ガスの黒煙や燃費の面で最新の高性能ターボファンには勝てず現在はあまり使用されていない。

航空機での活躍は減っているJT8Dだが、FT8と呼ばれる転用型の発電用エンジンなどではまだまだ活躍している。

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1 Comment

散歩中の人

お久しぶりです。タービン第4弾ですね。楽しみにしてました。当時、私も旧型のJT―8は扱ったりしてました。しかしMD用とここまで構造が違うのには驚きを隠せません。だいぶ進化したのですね。いつも興味深く拝見しています。また面白い記事を楽しみにしてます。

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