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【ジャンボを飛ばした心臓部】三者三様の表情が高性能の証(B747-400のタービンブレード)

BOEING 747-400|世界3大エンジンメーカー勢揃い

・旅客機の歴史を振り返るうえで絶対に外せない機種の一つがボーイング747(通称:ジャンボジェット)。その中でも、特に高い経済性と安全性を有したのがハイテクジャンボと呼ばれたダッシュ400。

B747クラシック(100型~300型)で確立された頑丈な構造を継承しつつ、大幅なコンピューター化と空力性能の改善、効率的なエンジンの採用によって、前シリーズの-300型より10%のコスト削減に成功したとされている。

747の特徴の一つに、運航するエアラインが3社(PW・GE・RR)のエンジンメーカーから選択できるという方式がとられていた。

3社とも推力や燃費など目指す基本目標が同じことから、外観はおのずと似たような形状に見えるが、内部にある心臓部を観察することでメーカーの思想やそこに至る歴史を知ることができる。

 

 

GE CF6-80C2

Lufthansa Boeing 747-400 (D-ABVU) at Frankfurt Airport (2)tjdarmstadt, CC BY 2.0,

・CF6-80C2シリーズは、1984年に最初の型式がA300/A310(CF6-80C2A1)に搭載され運用を開始。その後に派生型としてB747-400用のCF6-80C2B1Fが開発され、1987年3月にFAAの型式証明を取得し運航に入った。

このエンジンは対応する推力範囲が広く・高い信頼性・メンテナンス性が良く、燃費や経済性など様々な面においてバランスが優れていることから、B767シリーズ、A300、MD-11、C-2、C-5Mなど様々な機種に搭載され、今でも現役のエンジンとして活躍している。(2022現在)

 

F-GITD (24434847895)ERIC SALARD from PARIS, FRANCE, CC BY-SA 2.0,

CF6-80C2 エンジン:高圧タービンブレード1段目 動翼

・高温高圧の燃焼ガスを最初に受ける高圧タービン1段目部分(ノズルや動翼)は、燃費や性能に大きく影響を与えるエンジンの要となる心臓部分でもある。そのため、開発時はその時代最高の技術が投入されている。

また、時代と共に進化する材料や加工技術を常に取り入れて改良されることから、見た目は同じ形状でも耐久性が全く違うというのがこの型式ではよくみられる。

画像の高圧タービン翼 1段目(HPT1)を例に挙げると、開発当初はCF6-50EやCF6-80Aと同じ材質(DSR80H:Rene 80H)が数年ほど使用されていた。その後、第2世代 一方向凝固合金と呼ばれるDSR142(Rene 142)に変更されたことで耐久性が大幅に向上した。

日本で就航した頃には、ほぼDSR142材のHPT1に置き換わり適用期間も長かったことから、航空機の廃品オブジェやジャンク市で出回るほとんどのブレードがこれといっても過言ではない。

2000年以降は、砂塵地域での耐久性向上やメンテナンスコストを抑える意味も含めて、より耐久性の高い単結晶材 Rene N5に変更された。このブレードはタイミング的に退役する747-400ではなく、767シリーズやA330(CF6-80E1)に多く使われている。

 

P&W PW4000-94(PW4056)

United Airlines - N175UA - Boeing 747-400 - San Francisco International Airport-0413© Raimond Spekking

PW4000-94シリーズは、P&W JT9D(JT9D-7R4)の後継機・換装用として開発がスタートし、1984年4月 試験運転に成功。

商業運航は1987年6月20日、パンナムのエアバス A310-300に搭載されたPW4152が最初の型式として運用に入った。

この第4世代 民間ターボファン・エンジンは、747クラシックで使用されていたJT9Dの後継モデルとして考えられていたことから、PW4000には画期的な進化が求められていた。

大きな特徴としては、JT9Dと比較して部品数を50%削減、耐久性と信頼性の向上、燃費の改善、メンテナンスや修理工程の共通化などがあった。一見、どのメーカーでも行う普通の改良のようにも思えるが、部品削減は構造だけでなく動翼や静翼といったクリティカルな部分にまで及んだ。

翼形状を少し変えるだけでも様々な要素に大きく影響するエンジンの改良。性能に関わる圧縮機やタービンを新たに設計することは、多大な開発コストや納期リスクを伴う。

また、闇雲にタービン動翼だけを大型化して部品の削減ができたとしても、重いブレードは遠心力の影響を大きく受ける。それはブレードを保持するディスクにも及ぶため頑丈にする必要があり、結果的にみれば全体が重いエンジンになるという負のスパイラルに入る。

PW4000の開発に当たっては、PW2000の新技術とJT9Dの経験を含めて設計が進められた。

 

P1010968.jpg(mediaclass-lightbox-img.5a17fc1f47109709397ae88813c748b421ef8e41)Dutch Safety Board, CC0

・3社の中で一番大きな動翼だが、その理由は部品数の削減と回転数の増速(JT9Dの25%増し)にある。

JT9Dの高圧1段目タービン翼は、細長く小さなブレードが1枚のディスクに118枚植え込まれていた。これに対して、PW4000は60枚と約50%近く枚数を削減。

また、回転数の増速に伴う遠心力の増大に耐える必要から、ブレードは肉厚となり重くなるためさらに頑丈に作る必要がある。その結果がこのサイズに表れている。

材質は、第一世代 単結晶材(PWA1480)が使われていたが、後の改良型は第二世代 単結晶材(PWA1484)に変更された。

当初 PW4000(-94シリーズ)は、推力5万~6万lbクラスとして開発されが、この新しいコア(圧縮機・燃焼室・タービン)の性能は凄まじく、ファンを大型化することで 7万lbfクラス(A330用:PW4000-100)、9万lbfクラス(B777用:PW4000-112)という様々な推力範囲をカバーする派生型を生み出した。

 

Rolls Royce:RB211-524G

Ba b747-400 g-byge arpArpingstone, Public domain

RB211-524G/Hは、524D(B747クラシック)の派生型として1989年1月に型式証明を取得。

-524Gがベースモデル、-524Hは推力増加型としてラインナップされ、どちらも747-400 / 767シリーズに対応している。

-524Dからの技術的な変更点としては、ワイドコードファン・圧縮機の改良・高圧タービンの再設計・FADEC燃料制御などがある。これらの改良により、-524Dと比較して巡航時の燃料消費率は約8.8%改善された。

ロッキード トライスター(L-1011)RB211-22から継承された伝統の3軸エンジン。

ライバルの 二社は2軸方式、対してRRは軽量・高効率・静粛性に優れた3軸方式で対抗した。

RB211シリーズは、構造が複雑で整備性が悪いという欠点もあるが、低圧・中圧・高圧と3つに分割された軸は(ファン、圧縮機、タービンなど)重要な要素を常に最適な回転数で運転できることから、必要な圧縮機やタービンの段数が2軸式よりも少ないというメリットがある。

 

B-HOP (6641188875)Edwin Leong, CC BY-SA 2.0,

・747クラシック(RB211-524D)から大幅に改良された-524Gは、高圧タービン動翼も一新された。全体的な形状に大きな差はないが、翼型のデザインや空冷用の翼内通路、フィルム冷却の配置など様々な箇所に変更が加えられている。

当初の材質は、一方向凝固合金(Mar-M-002)を使い運用に入ったが、後にトレント700 / 800シリーズの技術を転用した単結晶材(CMSX4)ブレードに変更された。


 

・現代の旅客機は、一部を除きそのほとんどがエンジンメーカーを2社または3社から選べるエンジン選択制となっている場合が多い。

しかし選べるとはいっても客の立場として見れば、どれも同じよう飛び、同じような音、乗り心地も全く変わらない。

しかし、そのエンジンカバーを外して内部を覗き込めば三者三様、様々な表情をした部品たちが現れる。その一つ一つに、メーカーは持てる技術を全て投入している。

目指す頂上(目標推力・燃費・安全性)は同じでも、メーカーの思想やそこに至る歴史によってアプローチが変わる。その様相は、タービンブレードを観察することでその高性能の証が垣間見れる。

 

※画像のタービンブレードは、翼面や底面に再使用不可のスクラップ処置が施された鑑賞用ブレードです。実際のブレードとは色合いなど違いがあります。

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