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30年の進化「コンプレッサーブレード」|旅客機のエンジンをもっとマニアックに楽しむ

もし、いま搭乗している飛行機のエンジンが1980年代に設計されたものなら、それは「お古」なのか?

答えは否。

軍用機は勿論、旅客機のエンジンも一度設計したらずっと同じではなく、燃費効率や部品寿命の延長・運用による不具合などを改善するために、新しい空力解析や設計・製造加工・新素材など常にその時代の最先端の技術によって改良されている。

それでは、30年でどれくらい変化するのか紹介します。

 

コンプレッサーブレードの進化

・エンジンメーカーが新型エンジンを開発する場合、コア(高圧圧縮機・燃焼室・高圧タービンなど)と呼ばれる性能の決め手となる部分は、数十年先の使用も見越して設計している。

ベースとなるコアを共通とし、低圧部(ファン・低圧圧縮機・低圧タービン)を軍用機・旅客機などそれぞれの用途に応じたタイプに付け替えることで派生型エンジンとしている例が数多くある。

また、型式が変更される場合(例えば CFM56-3 → -7Bなど)は、ファンを含む低圧部だけでなくコアの再設計や材質変更などが行われる場合も多く、外観は似ていても性能は格段に進化している。

 

【1980年代】

1980年代は、60~70年代と似たような全体的に直線的なブレード形状となっている。

ブレードの2/3付近にあるリブは、スティフナーと呼ばれる異物突入に対する補強

1970年代~80年代は、航空機の設計やエンジン開発にCADなどの設計支援ソフトが使われるようになったが、コンピュータの性能がまだまだ低く、流体の流れの解析は難しいとされていた。

エンジン内の空力設計は、過去の経験を参考にしたり実験による検証などアナログ的手法によるものが多く、ブレードの形状も直線的なタイプとなっていた。

 

【1990年代】

先端部が若干前へせり出し、スティフナーの形状が変更されている。ブレードも全体的に数㎜程度、大型化している。

・スーパーコンピューターなどデジタル技術の進化によって、CFD(数値流体解析)による流体の流れを考慮した翼型の設計が少しずつ可能となってきた。

ただ、大型コンピューターでも当時の能力では解析に膨大な時間がかかるため、翼型形状の変更は先端付近の改良や、スティフナー(異物突入に対する強化)の形状変更、全体形状の最適化など微小な変化にとどまった。

 

【2010年代】フォワード・スウェプト型

現在主流の「フォワード・スウェプト・ファン」と似たような形状がコンプレッサーブレードにも採用されている。

・2000年以降、半導体素子の高密度化が急激に進みCPUの性能は著しく向上。CFD(数値流体解析)による流れの解析も3次元的に短時間で検証できるようになった。また、製造技術の革新によって複雑な形状でも加工できるようになった。

現在のファンは、空力技術や材料・加工技術の進歩によって、既存のブレードでは考えられないほど高い空力負荷のブレードが設計可能となっている。

その代表的な例が、GE90-115BやGEnx・LEAP・PW1100Gなど最新のエンジンで見られる「ワイドコード・フォワード・スウェプトファン」の形状。

現在主流のファンや圧縮機は、翼端周速度(チップスピード)が非常に速く、ブレードから見た相対マッハ数はM1.2~M1.4が一般的となっている。しかし、衝撃波の発生により隣のブレードと干渉し効率が低下することが問題となっている。

ブレードは長手方向によって相対速度が変化する。根元付近は亜音速でも、中腹部では遷音速、先端部は超音速と変化する。衝撃波の発生もこれによって変わるため、ブレードの全体形状もこれに合わせてグニャグニャした形になっている。

一般的にファンブレードで見られる手法だが、最近では圧縮機の動翼(コンプレッサーブレード)にも採用されることが多くなった。

型式名は同じでも進化し続けているパーツ

同じシリーズの派生型エンジンでも内部は常に進化し続けている。

30年前のエンジンコアでも、その時代に使える最新の空力設計・加工・材料技術によって改良することで、燃費効率が上がり、整備費用も削減されるなど、全く別物のエンジンになる。

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