制限時間は2時間、飛行機マニアが全力で「エンジンボルト」の詳細を調査。
・JALエンジニアリングから、本物の飛行機整備関連グッズが出てくるガチャポン「整備のお仕事」が羽田空港限定で発売された。
第1弾(2022年1月17日)、第2弾(2月10日)ともに数日で完売。
景品の内容は、コックピットで使う「操作禁止タグ」、エンジンの「スペーサー」や「リンクアーム」のほか、「エンジンボルト」など5種類+シークレット1種となっている。
その中でも「これ何するの?」的なコメントが多かったエンジンボルト。マニアにとっては、超の付くほど凄いお宝なんですが…そのレアさを証明します。
リーフレットにない情報を <ネット検索> だけでどこまで調べられるか?
航空資料館
もくじ
【準備編】エンジンの型式を特定する
① JALの機材
・まずは、いつも航空券の予約や座席変更で何度もお世話になっているJALさんの公式サイトで、機材情報を確認してみます。
A350-900:Trent XWB
B787-8/-9:GEnx
B777-300ER:GE90-115B
B777-200ER:GE90-94B
B767-300ER:CF6-80C2
B737-800:CFM56-7B
② エンジンメーカーでさらに絞る
・対象となる機種は7機種だが、エンジンメーカー別に分けると3社に絞れる。
- RR系列:Trent XWB
- GE系列:GEnx、GE90、CF6
- CFM系列:CFM56
③ 燃料ノズルの形状で型式を特定する
ここでリーフレットを再確認してみると「燃料噴射ノズルは1か所につき3個のボルト・・・」ここに大事なメッセージがある。
3個のボルトで固定。そう、エンジンの型式によっては4個のボルトで固定しているタイプもある。
該当するのは「GEnx」、TAPSⅡ燃焼室に取り付けられる燃料ノズルは4つのボルト固定タイプとなっているのでリストから除外できる。
次に「GE90」、ダブルアニュラ―燃焼室のため1本のノズルには2つの噴射孔がある。大きく重い燃料ノズルは4本ボルトによる固定式となっている。
GEnxの検索結果
GE90の検索結果
もう一つ「RR Trent XWB」、これに関してはまだ導入して間もないので、ガチャに入れるほど大量の本数はないだろうと楽観的に考えてとりあえず除外。
新しいエンジンほど資料集めには苦労するので、2時間では足りないというのが正直なところ。もしも可能性があるなら再び調査するという方法にした。
これでだいぶ絞られた。残るは「CF6」か「CFM56」のどちらかだ。
CF6ならB767-300、CFM56-7BならB737-800となる。
【動画】
・こちらは、A330用 CF6-80E1の燃料ノズルの「ボルト」が登場する動画。
同一形状・焼けの色・サイズ・共通のCF6コアなどから、今回のボルトが<CF6-80C2>という可能性をより高めてくれた。
「CF6-80C2」は、当初の予想通り燃料ノズルは3つのボルトで固定するタイプとなっている。問題はCFM56だ。
航空ファンの方ならご存じの通りCFM56のコアはGE製、よって燃料ノズルもCF6と同じく3つボルトの固定タイプとなっている。
おまけにボルトのサイズ・長さまで同じという信じがたい事実も同時に見つけたが、今回は無視してCF6で進めよう。
④ リーフレットのエンジン型式は?
・リーフレットにはカバーが取り外されたエンジンの写真(空港で見かける状態とは違う)がある。
これの型式を特定してみよう。まず特徴的なのはファンケースのカバー、万が一ファンブレードが破断しても外へ飛び出さないようにケブラー素材が巻かれている。
黄色(オレンジ)っぽいグルグル巻きにされたファンケース、FADECの取付け位置、アクセサリーギアボックスの場所と熱遮熱板から、JALの機材で該当するのは 767-300ERのCF6-80C2とわかる。
第一弾のリーフレットには、燃料ノズル付近の整備風景画像もあった。(第2弾ではスペースの都合上なくなっている)
その画像を詳しく見ると、燃料マニホールドから伸びるU字型の配管→シュラウド・カップリング→燃料ノズル、これもたぶんCF6だろう。
これである程度の方向性が決まった。ここから先は、7割程度 CF6、3割はCFM56という可能性も残しつつ調査してみる。
JALガチャ 第2弾のシークレット(ちょっと一息)
・JALガチャポンのシークレットが気になっている人も多いはず。「豪華な景品」と噂されているシークレットを予想してみた。
ありがたいことに、リーフレットにそのシルエットが描かれている。
(ネタバレが嫌な人は読まずに飛ばしてください)
IDG ピストン キーホルダーと思われる5個限定のシクレ。似たような商品が、過去に7000マイル(限定70個)で販売されていた。
【マニアの意地】削られた部品番号(逆引きで割り出す)
・飛行機パーツマニアの間では、部品番号(パーツナンバー)からエンジンの型式や名称を調べる方法がもはや常識となっている。
オークションやフリマでは、出品者にパーツナンバーを質問してネットで検索する人も多くなった。これが商品説明と一致していれば素性は正しいと判断して購入する人が大半を占めている。
そのおかげで、「B787の圧縮機ブレードと偽って、古いB747のブレードを売る」という昔ながらの間違いはかなり減った。
しかしこの識別は便利な反面、大きな欠点もある。
正しい部品番号がわからなければ次に進めないのだ。
今回のボルトも、ジャンク品らしく「部品番号を削る」というスクラップ処置が施されている。
それでは、ここからはマニアの意地を見せよう。
部品番号がなくても割り出せる高度な識別方法を使ってみる。それは、パーツの特徴から部品番号を当てる“逆引き”という技だ。
結構面倒で時間を要すので、普段は古いタービンブレードの材質研究や型式特定など重要な情報を調べるときに使う技だが、今回はこのボルトに使ってみる。
もちろん誰でも利用できる「Google 検索」だけで調査。
- 一般的な方法:部品番号→エンジン型式や名称を調べる
- 逆引き:部品の特徴→部品番号を割り出す
検索結果
・検索結果はこんな感じで、下記の “CF6-80C2” の箇所にボルトの情報が表示されている。
「検索キーワード」や「部品番号」「サイト」の公開は少し支障があるので、別の機会にでも紹介する予定です。
判明したボルトの部品番号
*****07D
※都合により5ケタの文字は伏せています。
材質や新品価格など
・部品番号がわかれば一気に検索を進めて、材質と新品価格まで調べてみます。
材質:インコネル 718
新品価格:700円くらい
※この2項目は、たぶんだろうという程度です。
【調査終了】2時間の成果がこちら
2時間前
付属のリーフレット情報のみ(機種不明・エンジン型式不明)
↓
2時間後
JAL ガチャポン 「整備のお仕事」<第2弾> | |
景品名 | ③ エンジンボルト |
① 機体型式 | ボーイング 767-300ER |
② エンジン型式 | CF6-80C2B7F |
③ 取付箇所 | 燃料ノズル 固定ボルト |
④ 部品番号 | *****07D |
⑤ 材質 | Inconel 718 |
⑥ 新品価格 | 約 700円前後(予想) |
⑦ 磁性 | 非磁性体 |
⑧ サイズ | ネジ部 0.625インチ(15.88 ㎜) |
※表の内容はネット検索レベルの結果です。信頼度はわかりません。あくまで遊びという事をご理解ください。
さいごに:リーフレットを隅々まで見ていれば・・・
・今回は、2時間という限られた時間内で「機種不明」「エンジン型式不明」のボルトを調査するという遊びを楽しみましたが、最後に改めてリーフレットを確認したら衝撃の事実がわかりました。
左下にQRコードがあり、試しに読み取って見ると<商品についての説明動画>が始まりボルトの紹介もありました。その中で、何と767 CF6から外したと解説されていました。
これを先に見ていれば、前半の機種特定はせずに1時間で詳細を調べることができたはず。小さな説明書には無数の情報が凝縮されていました。
「ガチャポン」で飛行機のボルトが出てきたらどう遊ぶか?という楽しみ方の紹介でした。
航空資料館
JAL 767-300ER JA616J(那覇空港)