JT8D-200シリーズとD-30KU
Cory W. Watts from Madison, Wisconsin, United States of America, CC BY-SA 2.0,
・P&W JT8D-200はダグラス MD-80シリーズ用に開発されたエンジンで、B727/737に搭載された旧型 JT8D(-3~-17)のコアを改良、ファンを再設計し大型化(リ・ファン)することで、推力を増強しながらもクリーンで静かなエンジンとして1970年代に登場。
新型エンジンの開発は、常に莫大な開発費や期間・納期リスクを背負うことになるが、リファン・エンジンは旧型コアを流用することでそれらのリスクを減らせるというメリットがある。
aeroprints.com, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
・中距離型 Tu-154用のエンジン(ソ連製 D-30KU-154シリーズ)もまた同じく、信頼性の高い旧D-30(Series ⅠⅡⅢ)のコアを改良してバイパス比を上げるという方法で、推力の増強と燃費削減を両立させた。
性能の要となる高圧タービン動翼初段を比較すると、画像のとおり D-30の方がコンパクトな形状となっている。
左:D-30 右:JT8D-200シリーズ 高圧タービン翼初段、共に翼内空冷ため中空になっている。
・両者のサイズが大きく異なるのは、JT8Dが7段の高圧圧縮機(HPC)を単段タービンで駆動するのに対して、D-30KU-154はタービンを2段式に分割(11段のHPCを駆動)したことでタービン動翼のサイズが小型化された。
単段高圧タービンのメリットは、ブレードやディスクの部品点数が少ないため整備コストが安く軽量という点が上げられる。一方、2段式タービンは複雑で部品点数は多くなるが効率に優れ、燃費の面で有利とされている。
JacobAviation, CC BY-SA 4.0, A320ceo (Engine:IAE V2500)
・身近な旅客機だと、A320ceoに搭載されている2社のエンジンも興味深い特徴を持つ。
A320ceoはユーザーがCFM56(高圧:単段タービン)か、V2500(高圧:2段式タービン)のどちらかを選べるエンジン選択式が採用されており、前者は整備性や部品コストの安さが有利とされ、後者は複雑で整備コストは増すが燃費の良さでカバーできるという話もある。
内容を戻すと、JT8D-200シリーズは 1978年にサーブ 37ビゲン 戦闘機用エンジン ボルボ RM8(ドライ16,200lbf、AB 28,100lbf)となり、D-30は1979年にMig-31 戦闘機用のD-30F6(ドライ:20,944lbf A/B 34,215lbf)となった。
どちらも最初は民間機用として開発された後、推力を増強した派生型の軍用タイプが設計された。時は1970年代、目標推力も同じく20,000 lbf級というのは興味深い。
Ragnhild&Neil Crawford from Sweden, CC BY-SA 2.0, Saab 37 Viggen
Alex Beltyukov – RuSpotters Team, Mig-31
スペックで比較
Blervis, CC BY-SA 4.0, P&W JT8D-219
Solovei777, CC BY-SA 3.0, D-30
P&W JT8D-200 series | D-30KU-154 series | |
推力 | 18,500~21,700 lbf | 23,100~24,250 lbf |
構成 | 1+6+7+1+3 Fan+LPC+HPC+HPT+LPT |
3+11+2+4 Fan(LPC)+HPC+HPT+LPT |
ファン直径 | 1.25 m | 1.45 m |
バイパス比 | 1.74 | 2.42 |
吸気空気流量 | 221 kg | 265 kg |
全体圧力比 | 17.1~19.4 | 15.4~19.2 |
全長 | 3.9 m | 5.7 m |
重量 | 2,090 kg | 2,305 kg |
燃料消費率(巡航) | 0.72~0.75 lb/hr/lb | 0.70~0.71 lb/hr/lb |
搭載機種 | MD-80シリーズ | Tu-154M |
運用開始 | 1979年 | 1978年 |
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