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【飛行中の外気温】-50℃はどのように測っている?|仕組みの話

機内モニター

只今の外気温は-50℃」飛行中の機内モニターに表示される外の温度。

客側としてはスゴク寒そうという答えしかありませんが、時速800㎞/hで飛行する機外の温度は一体どのように測定しているのか?

いつも何となく暇つぶしに見ている外気温の情報。その仕組みについて紹介します。

 

旅客機の外気温センサーはどこにある?

・飛行中のコックピットの窓から、温度計を外に出して気温を測ることは不可能。赤外線温度計やサーモグラフィーといった流行の装置を使っても対象物がないので測定はできません。

外気温を測定するには、温度センサーを機外に出す必要があります。一般的な旅客機の場合、その取り付け場所は機首(鼻先)部分にあります。

(機首付近には、その他にも速度・外気温・迎角を測るための様々なセンサーがあります。)

 

JAL Boeing 767-300ER

機内モニターB767-300ER:外気温を測定するTATセンサー

TATセンサー(Total Air Temperture:全温度)

・外気温を測定するセンサーは、TATセンサー(Total Air Temperture:全温度)と呼ばれています。

形状は一般的な温度計からは想像できないほど特殊な形状をしています。

 

TATセンサー:サイズは10㎝X15㎝程度の大きさ

TATセンサー左側が機首方向(気流は左から右へ通過する)温度センサーは中央の翼型部分にある

 

機内モニターに表示される外気温の仕組み

機内モニター

・TATセンサーで測定した全温度から実際の外気温を求める簡単な方法は、飛行中の速度を調べてその温度上昇分を引き算すれば求めることができます。

外気温=全温度ー飛行中の速度による温度上昇分

(詳しくは、おまけの章で解説)

全ての機体メーカーが同じ仕組みではありませんが、一般的に機首部分のセンサー(ピトー管、静圧孔、TAT)で得られた情報は、ADC(エアデータ・コンピュータ)という装置で処理されコックピットの計器や自動制御装置・エンジンコンピューターへ送られます。

機内モニターに映し出される外気温もこのデータを利用しています。

 

おまけ(もっと詳しく知りたい方)

 

一般的な温度と全温度は何が違うのか?

TATセンサーは全温度を測定しています。一般的な温度とは何が違うのか簡単に解説します。(厳密にはおかしな部分もありますが、あくまで概略の紹介です。)

流体(液体や気体)にはネバネバした性質があり、人間にはほとんど感じませんが空気にも粘性の性質があります。

ハエや蚊といった小さな昆虫は、空気をネバネバした水飴のように感じながら飛んでいるという話もあります。(興味のある方はレイノルズ数を参考にしてみてください)

大気中を飛行機が高速で進むと、機体の表面は粘性摩擦によって加熱され温度が上昇します。他にも高速飛行により空気が圧縮されることで発生する熱もあります。この現象は「空力加熱」や「熱の壁」ともいわれています。

単純にいえば、スピードを速くすると周囲の空気温度よりも温度が上がりますよという話。

極端な例を紹介すると、過去に音速の2倍で飛行していたコンコルドという超音速旅客機。-50℃という環境の中をマッハ2.02(2,180 km/h)で巡航飛行中、胴体の先端付近の温度は空力加熱により約+127℃まで上昇したといわれています。

このTATセンサーで測定した温度には、実際の温度+速度上昇分の温度も含まれているということで「全温度」と表現されています。外気温を求める簡単な方法は、飛行中の速度を調べてその温度上昇分を引き算すれば求めることができます。

 

Concorde - airframe temperaturesSteal88, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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