・B737-800(B737NG シリーズ)のコックピット付近にある規則正しく並ぶ10個の突起物。
ボルテックスジェネレーターと呼ばれるこの部品は、翼や胴体尾部の気流の流れを整えるデバイスとして使用されています。
しかし、なぜこのデバイスがコックピット付近に10個もあるのか?
調べてみると意外な効果があることがわかりました。
ボルテックス・ジェネレーターの役目
・ボルテックス ジェネレーターの目的は、意図的に小さな渦を発生させることで気流の流れを層流境界層から乱流境界層に変換することです。
層流に比べて乱流は少しだけ空気抵抗は大きくなりますが、たとえ気流が剥離しても再付着しやすい(剥離しにくい)という特性があります。
また、ボルテックス・ジェネレーターは境界層制御装置とも呼ばれており、一般的には下記のような場所で使用されています。
- 主翼上面の気流が剥離しやすい箇所
- エルロンやラダーなど舵の効きを改善したい場合
- 胴体後方から垂直尾翼付近にかけての気流を整流
飛行機は設計段階で何度も縮尺模型を使った風洞試験を行いますが、実物サイズで飛ばしてみると風洞試験では出なかった不規則な気流の動きや空力特性など、微妙に設計とは異なる場合があります。
性能に大きく影響する場合は設計変更が必要になりますが、微小な影響ならこのような境界層制御装置(ボルテックス・ジェネレーター等)が使える場合もあります。
これは従来機だけでなく、現行の最新鋭機でも使われている方法です。
B737-800 胴体尾部(ボルテックス・ジェネレーター)
B767 の後縁フラップ(ボルテックス・ジェネレーター)
B787 主翼上面(前縁側に規則的に配置されたボルテックス・ジェネレーター)
3db(デシベル)の効果とは
・B787やB777の曲面的な横顔と比べて、B737は旧世代の平面的な造りとなっています。
ノーズからコックピットにかけての曲率の大きなカーブや、コックピット正面の窓と胴体の接続部など、気流がスムーズに流れず部分的に剥離するため空気抵抗が大きくなるだけでなく騒音の発生源にもなります。
このような場合、適切な箇所にボルテックス・ジェネレーターを取り付けることで気流の流れを改善することが可能。
コックピット周辺部の気流がスムーズに流れることによって、空気抵抗が減少しただけでなく、コックピット内の騒音も約3db(デシベル)低減した副次的な効果もあった。
これまでのボーイング機には無かったコックピット周辺の突起物。
737NGシリーズには、ボルテックス・ジェネレーターの珍しい利用方法が採用されていました。
※参考にした資料『THE BOEING 737 TECHNICAL GUIDE』