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ブレーキ・クーリングカート|わずか25分で350℃のブレーキを150℃まで冷却

空港に到着した飛行機のブレーキは、状況によって350℃を超える場合がある。

夏の暑い季節になると見かけることが多くなる光景。到着したばかりの航空機は、ブレーキが過熱している場合があり、これを冷やさなければ次の出発便に支障をきたす場合があります。

ブレーキクーリングカート呼ばれる特殊な装置により、折り返しのわずかな時間でブレーキを冷やすことが可能。

空港内では目立たない存在だけど重要な装置を紹介します。

 

ブレーキはどれくらい熱くなるのか

200トンを超える巨体も難なく停止させる旅客機の強力なブレーキ。

ほとんど機体には、制動力と放熱性に優れたカーボンブレーキが採用されています。しかし、夏の暑い時期や状況によっては、到着した飛行機のブレーキ温度は350℃を超える場合もあります。

 

過熱しすぎは制動力に影響する場合も高性能なカーボンブレーキでも過熱しすぎると制動力が落ちることもあります。

折り返しで次の出発がある場合、ブレーキが規定値内まで冷えていなければ、万が一の離陸中止時にブレーキが十分性能を発揮できない可能性があることから、ブレーキの温度管理は重要な項目となっている。

クーリングカートを使う目安は

旅客機のメインギアに装備されているディスクブレーキには、各車輪ごとに温度センサーが取り付けられており、コックピットのEICASと呼ばれるシステム関連の画面で温度が確認できます。

また、タイヤごとの温度表示を231℃、238℃、215℃などと表示しても、瞬間的に状況を読み取ることが難しいため、2桁または1桁の数字で表示する機種もあります。

例えば、B777の場合は0.0~9.9の2桁で表示。【5.0】を超えるとEICASにブレーキクーリングの必要性を示す警告がでる。B767だと0~9という1桁で表示されます。

また、全てのタイヤが同時に過熱するわけではなくバラツキがあるので、折り返しの時間までに冷えない可能性のあるブレーキから優先的にクーリングが行われます。

 

クーリングカートの仕組み

ブレーキ・クーリングカートの仕組みは、芝刈り機やスクーターなどに使われている2ストの小さなガソリンエンジンでファンを回すことで、ブレーキ内の熱を吸引し排出する方式でブレーキを冷却しています。

扇風機やドライヤーのような風を送るタイプではなく、PC内の熱を外部に放出するような冷却方式が吸引式と呼ばれるもので、対象物を効率よく冷却することが可能。

空港内で使用されているブレーキ・クーリングカートの冷却能力は、周囲環境にもよりますが(371℃→149℃までわずか25分で可能*1)とされています。

折り返しの平均時間は、737クラスの小型機で30分、大型機で45分くらいなので到着後すぐに使用すれば十分冷却できる性能があります。

 

ホイールに内蔵された電動ファン

A321neoのメインギアに装備されている電動ファン

一部の機体には、ホイールに電動ファンが装備されており、地上走行中に規定値の温度を超えると自動的にファンが作動するタイプがある。

このシステムは古くからあり、日本特有の多頻度運航用に対応させるために改良した B747SR、B747-400Dにも装備されていた。他にもA320シリーズに電動ファンが装備されている。

B747SRの場合:120℃を超えると自動的に作動、80℃まで下がると停止。

電動ファンは、自動的にブレーキ・クーリングができる便利なシステムではあるが、ホイール内に装備されることから故障の原因や、タイヤ交換時の煩雑さ、重量増しなどデメリットもある。

ボーイング機のほとんどが電動ファン非装備となっており、夏場の空港内ではブレーキ・クーリングカートが大活躍している。

 

おまけ:ブレーキが消耗するのは着陸時ではない⁉

時速 250km/hほどで着陸した機体を、わずか数十秒で自転車並みの速度まで減速させる強力なブレーキシステム。一般的にブレーキ消耗の大部分が着陸時と思われるが、意外にも全摩耗量の25%でしかない。

 

【旅客機のブレーキ】どれほど強力なのか|離陸中止は燃える勢いで全力制動し機体を止める

 

※1 参考:AGP ブレーキクーリングカート

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