国内ではあまり知られていない幻の初期型限定タービンブレード(CFM56-3 1984年モデル)
・737CL(クラシック)シリーズは、1984年2月に737-300のプロトタイプが初飛行。続いて1988年1月に737-400、短胴型の737-500が1989年6月にそれぞれ初飛行した。
登場から38年、現在でも活躍している息の長いCFM56-3エンジン。
その中でも1984年のわずか1年だけ使われた、「1st generation type」のブレードを紹介します。
Dylan Ashe from San Jose, USA, CC BY-SA 2.0,
CFM56-3 高圧タービンブレード
Boeing 737-300
CFM International
CFM56-3-B1/-3B-2
Turbine Blade Stg1
- エンジン型式:CFM56-3-B1/-3B-2
- 開発年:1984年(-3C1は1986年)~
- 材質:ニッケル基耐熱超合金
1984年:Rene 80H (1st generation)
1985年以降:Rene 125(2nd・3rd gen~) - コーティング:アルミ拡散(1st Gen)
- 結晶構造:一方向凝固(DS)
- 冷却方式:コンベクション+インピンジメント+フィルム
- 搭載機種:B737-300/-400/-500
・CFM56-3シリーズは、初期モデルとなる “CFM56-3-B1” が1984年1月にFAA型式証明を取得、737-300に搭載され同年2月に初飛行を行った。
“ 最初期のタイプには 1st Generationと呼ばれる、Rene 80H( 一方向凝固合金材)による高圧タービン翼が限定的に使われていた。
この材料は、当時 CF6-80Aシリーズの高圧タービン翼や、一時的にではあるが最初期の CF6-80C2 HPT1・2にも使われていたことがある。(-80C2は、早々に Rene142に変更されたことでコアの耐久性と効率が飛躍的に向上した。)
CFM56-3もまた初期モデルにおいて、コアエンジンの寿命に関する若干の問題があったことから、翌年の1985年に高圧タービン翼の材料をRene 125に変更。EGTマージンや耐久性が向上した性能改善型(2nd Generation)が登場した。
その後も、何度かコアの改修が行われ世代を更新。2022年現在でも737CLシリーズは世界中で数多く運用されている。
CFM56-3シリーズは、初運転から38年(受注台数 4,482基)という長い歴史があるが、Intro Typeと呼ばれる初期型(1st Gen)は、1984年のわずか1年だけの限られた台数のみだった。-3のベースとなった原型ブレード、その形が紹介のタービンブレード。
タービンブレードの画像
・全長わずか約7センチの小さなブレード。
最大出力時、燃焼室では1秒間に約2.5リットルのケロシンが燃焼する。その高温・高圧の燃焼ガスがこのタービン翼に吹き付けられることで回転力となり、軸で接続された高圧圧縮機を駆動する。これがファンの駆動源であり推力の源となる。
また、機内の電力・油圧・圧縮空気(空調等)を作り出すのも、この高圧タービンブレードによって発生した力が使われている。
・中期以降のタイプは、翼(腹側)にフィルム冷却孔が1列(16孔)追加されている。
また、中期タイプは10年程度使われていたこともあり、航空ジャンク品としては頻繁に見かける機会の多い馴染のブレードとなっている。
・CFM56-3シリーズは、737CLに採用されたことで受注台数は4,482基(2000年11月時点)、総飛行時間は1億時間を超えるベストセラーエンジンとなった。
また 2003年9月には、独 ハパックロイド航空の機体に搭載されていたCFM56-3が、総飛行時間 40,729時間/17,504 サイクルの連続使用記録を達成。これは13年間、機体に取り付けられていたことになる。
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