最大離陸重量185トンの巨鳥は、わずか7秒で時速100kts(185km/h)に達し、音速の2倍で飛行した。
”3-2-1-Now” スロットルが最大まで押し進められると、エンジンは瞬時にスプールアップし7秒で最大推力に達する。そのパワーは、エンジン1基で客船タイタニックの1.6倍(46,000馬力)に相当した。
4基で184,000馬力を超える強大なパワーによって滑走路を猛進し数秒後には地面を蹴る。
通常の旅客機が飛ぶ高度の2倍(約18,000メートル)の上空を音速の2倍で飛行させるために開発されたのが、オリンパス593と命名されたアフターバーナー(リヒート)付・2軸式ターボジェットエンジンだった。
エンジンの排気速度が飛行速度以上に速くなければ推進力とはならない。一説によると、M2.0での巡航時のエンジン排気速度は900m/s(一般的なターボファンは300m/s前後)に達したと言われている。
また、エンジン内部構造についても単段の高圧タービン・単段の低圧タービンを採用することで、排気速度を極限まで高速に保ったまま噴出させる仕組みとなっている。
排気速度を極力低下させずに必要な駆動力を燃焼ガスから受け取るため、一般的にはあまり見ることのない巨大なタービンとなっている。
※F-15戦闘機に搭載されているF100エンジンには、高圧(2段)・低圧タービン(2段)が採用されている。
コンコルドと、B747 ジャンボジェットのタービンを比較した画像がこちら。
サイズの比較:左からオリンパス593(低圧)(高圧)・JT9D(高圧)のタービンブレード
・超音速飛行を可能にするために極限まで追求された優美な機体は、全機退役した現在でも多くの人を魅了している。
また、ライフルの銃弾よりも速かったこの”美しい白鳥”を推進させたパワーの源が、RR/SNECMAのオリンパス593エンジン。今から約56年前(1965年)に初めて運転された。
このコア技術は、現代のB777のエンジンと同クラスの推力を達成できるとさえいわれており、この凄まじいパワーを秘めたエンジンに魅了された熱狂的な航空ファンが世界中に多くいる。
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