・世界最大の双発旅客機 ボーイング B777-300ER、その機体に搭載されていたGE製 GE90-115Bの高圧1段目のタービンブレード(HPT1)を紹介します。
このエンジンは、1基でB747のエンジン2基分の推力を発生させるというモンスターエンジン。
GE90-115B 高圧タービンブレード 1段目
Boeing 777-300ER
General Electric
GE90-115B
High Pressure Turbine Blade Stg1 (HPT1)
- エンジン型式:GE90-115B
- 開発年:2004年
- 材質:ニッケル基耐熱超合金 Rene N5またはN6
- 結晶構造:単結晶(SC材)
- 冷却方式:コンベクション+インピンジメント+フィルム
- 搭載機種:ボーイング B777-300ER、B777-200LR
- 備考:CF6の約2倍の推力を誇るGE90-115Bでは、ブレードの形状や材質も全く違うブレードとなっている。公式の発表ではないが、耐熱温度は1500~1600℃級に達するという。材質については、論文等ではRene N5となっているが、第三世代単結晶材であるN6ではないかという話も一部である。
GE90 タービンブレードの詳細
・GE90-115Bエンジンの燃費や性能を決める心臓部。高圧1段目のタービンブレードは、長さ11㎝・重さ350グラムの小さなブレード。
離陸時には、この1枚が1000馬力を超える力を発生させる。
・表面のコーティングは、ブレードを熱から守るセラミックコーティング(TBC)と呼ばれるもので、新品時は白色のコーティングだが、離陸時には1500~1600℃に達する燃焼ガスを受けることで画像のようにキツネ色に焼ける。
TBCが剥がれた箇所は、メタルが高温ガスに晒されることで酸化または溶融した状態となっている。
シェイプトフィルム冷却孔
近代のターボファンエンジンは、ブレードを高温ガスから保護するために翼表面を空気のカーテンで膜を作る(フィルム冷却方式)がほとんどのエンジンに採用されている。
このフィルム冷却と呼ばれる空気の膜。これまで多くのエンジンでは、単にレーザーで数十個の穴を規則的にあけてシャワー状に冷却空気を噴出させる円孔タイプだったが、GE90の場合は矢尻のような形状のシェイプトフィルム冷却孔が採用されている。
シェイプトフィルム冷却孔は、これまでの円孔に比べて表面を均一に冷却することができることから、冷却効率が約2倍高まるといわれている。その結果、円孔に比べてトータルの冷却空気量を大幅に削減できる効果がある。
結果的に高温化・高効率エンジンを達成できる。
但し、シェイプトフィルム冷却孔は円孔に比べて加工が困難という短所もある。
参考画像円孔タイプ フィルム冷却(CF6-80C2 HPT1)
シェイプトフィルム冷却の流れを動画で見る
・通常は翼表面を空気のカーテンで冷却するので状態を見ることはできないが、空気のかわりに水を流すことで可視化する方法がある。
動画では円孔の流れとシェイプトフィルムの均一な流れを比較することができます。
GE GE90-115B エンジンについて
エンジン概要 | |
型式 | GE GE90-115B |
最大推力 | 52.3 t |
ファン直径 | 3.2m |
ファンブレード数 | 22枚 |
バイパス比 | 7.1 |
全圧力比 | 42.1 |
搭載機種 | Boeing 777-300ER |
・Boeing 777のエンジンとして1990年に開発がスタートしたGE90エンジン。初期のGE90-85Bエンジン搭載機は1995年に初飛行した。その後、2000年に初期モデルを改良したGE90-94Bを発表し多くのエアラインで採用されている。
2002年には世界最大の大型双発機 Boeing 777-300ERのエンジンとしてGE90-115Bエンジンが登場。名称はGE90だが、ファンや内部コアなど全てが再設計され別物エンジンといわれるほど画期的に進化したエンジンとなっている。
GE90-115Bには、B747のエンジン2基分の推進力を1基のエンジンで発生させる凄まじいパワーが秘められている。
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