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低圧タービンブレード|巨大なファンを回すパワーの源

低圧タービンとは

1枚の力は小さくても集まれば巨大な力となる

150席クラスの旅客機の場合、エンジン前面で回転しているファンを駆動するには約3万馬力程のパワーが必要だという。

その駆動力を発生させるのが低圧タービンと呼ばれるもので、燃焼ガスのエネルギーを回転力に変換しシャフトを介してファンに伝達される。

低圧タービンはヒョロヒョロと細長い見た目から、このブレードが数万馬力のパワーを出せるのかという印象すらある。しかし、1枚では弱そうに見えるブレードも数百枚となると巨大な力となる。

今回は、ファンの駆動力を生み出す低圧タービンを紹介します。

 

低圧タービンブレード(LPT)

形状

エンジンにもよるが、初段で800℃~最終段で500℃程度の燃焼ガスを受けて回転。これがファンの駆動力となる。

巨大なファンを駆動するためには、低圧タービンが大きなトルクを発生させなければならない。

そのためには、高負荷型の翼型や半径方向に細長いブレード形状にする必要がある。幸いというか、低圧タービンに流入する燃焼ガスの温度は800℃前後となるため、素材となるニッケル基耐熱合金は無冷却で使用できる。

翼内空冷回路を必要とする分厚い高圧タービンに対して、低圧タービンは無冷却で使用できることから、効率の良い翼型や形状設計が可能。ただし、ブレードが細長くなると振動が発生するため、先端にシュラウドを設置する必要がある。

 

先端にはブレード同士が支え合うシュラウドを設け、その上部にはフィンを取り付けることでガスの漏洩を抑える構造となっている。

材質

1970年代に開発されたターボファン・エンジンの低圧タービン動翼には、Inconel713CRene77などの材料が全ての段(4段)に使われる場合もあった。

1970年代に開発されたエンジンの低圧タービンは、全段とも同じ材質という構成が多かった。

 

1980年代に入ると高バイパス比で燃費効率の良いエンジンが求められ、低圧タービンの初段に入るガス温度も高温化が顕著になってきた。

そのような経緯から、全ての段で同じ材質を使うエンジンは少なくなり、初段には耐熱温度の高い高性能なDS材を使い、後段はRene77など旧タイプを使うハイブリット型も登場した。

一方向性凝固(DS)で製造された低圧タービンブレード初段、900℃を超える燃焼ガスを受けても運転することが可能となった。

 

1990年~2000年代以降は、大口径のファンが主流となりバイパス比は5:1を軽く超え、9:1などハイバイパス・エンジンが一般的となった。それと同時に、低圧タービン初段に入る燃焼ガスの温度が 1,000℃を超えるエンジンも登場した。

これまでは高圧タービン(HPT)に使用されていた単結晶材が、低圧タービン(LPT)の初段にも使われるようになった。耐熱温度の高い単結晶材を使うことで、無冷却で使用できる限界温度を高く設定でき燃費の面でも有利となっている。

※一部のエンジンでは、低圧タービン初段に内部空冷回路を備えるタイプもある。

低圧タービンの初段にも単結晶材が使われるようになり、950℃の燃焼ガスにも耐えられるようになった。

ブレードの枚数

B747 JT9Dエンジンの低圧タービン部:段数は4段、1つの段に約110枚前後のブレードが取り付けられている。

推力 25,000 lbf級(150席クラスの旅客機)のファンを駆動するには、約3万馬力程のパワーを低圧タービンが発生しディスクとシャフトを介してファンに伝達する必要がある。

そのためには、低圧タービン動翼が何枚必要で、一枚あたりはどれくらいの馬力を生み出すのか。

推力 25,000 lbf級 ターボファン・エンジンの場合、1枚のディスクに低圧タービン動翼が約130枚程取り付けられている。このディスクが4枚、つまり低圧4段のタービンによってファンを駆動している。

全4段に取り付けられたブレード総数は、520枚という数になります。3万馬力のパワーを得るには、1枚の低圧タービン動翼が約58馬力の回転力を発生させる必要がある。

ヒョロヒョロと細長いこのブレード1枚が、軽自動車1台分に匹敵するパワーを生み出している。

 

小型のエンジンで1枚あたり60馬力程度、大型エンジンだと1枚あたり120馬力にもなるタイプもある。

ファンが大型化すれば低圧タービンの段数も増える

B777-300ER GE90-115B

大型のエンジンになると、 ファンを回転させるために 5万~10万馬力以上というパワーを低圧タービンによって発生させる必要があります。この場合、4段では足りず6段や7段構成となっているエンジンもある。

また、初段には単結晶(N5)が使用され、内部空冷回路を持っているものさえある。現代のエンジンは、1970年代に使用された高圧タービンよりも遥かに高性能なブレードが低圧段に使用されている。

高バイパス比エンジンの登場によって、低圧タービンの直径は限界まで達したといわれている。GE90の場合、低圧タービンのガス経路勾配は34°にもなっている。

 

ここまでの内容は、「ジェットエンジンの推力は何馬力?」とは違います。ファンを駆動するにはシャフトにつながった低圧タービンが何馬力発生するのかという解説です。

おまけ:ターボファン・エンジンの高圧・低圧軸って何?

現代の旅客機に装備されているターボファン・エンジンは、図のように一般的には同芯2軸(RR系は3軸)となっており、高圧軸と低圧軸に分割されている。

高圧軸(紫部分)は、高温高圧の燃焼ガスを最初に受ける高圧タービンと高圧圧縮機で構成されており、そのエンジンの性能・燃費効率など全てに関わるエンジンの中枢とされている。(最大出力時:10,000~15,000 rpm)

低圧軸(緑部分)は、高圧タービンを通過した燃焼ガスのエネルギーを回転力に変換する低圧タービンと前面のファン・低圧圧縮機で構成されている。(最大出力時:2,200~5,500 rpm)

ターボファン・エンジンでは、その全推力の8割近くを低圧タービンで駆動される大型ファンによって発生している。

 

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