・コンコルド(Concorde)は音速の2倍(マッハ2)を超える速度で飛行していた超音速旅客機。民間機では唯一のアフターバーナー付きターボジェットエンジンを搭載。1967年~2003年の間、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とエールフランス(AF)によって運航されていた。
マッハ2.05で巡航飛行中の際、各エンジンは1基あたり36,000馬力に相当する推進力を発生する強力な「ロールスロイス/スネクマ製 オリンパス593」が搭載されていた。
そのエンジンの心臓部となる高圧タービンブレード(HPT)を紹介します。
Arpingstone, Public domain,
オリンパス593 高圧タービンブレード
SST Concorde
RR / Snecma Olympus593
High Pressure Turbine Blade (HPT)
- エンジン型式:RR Olympus 593 Mk610
- 開発年:1966年
- 最大推力:38,050 lb(アフターバーナー使用時)
- 高圧段 最大回転数(N2):9,016 rpm
- タービン入口温度:1150 ℃(最大)
- 材質:ニッケル基耐熱超合金 Nimonic(開発当初)~IN100(1998年時点)
- 結晶構造:鍛造(開発当初)~精密鋳造
- 冷却方式:コンベクション
- サイズ:全長 約18cm 重量 450グラム
- 備考:開発当時(1960年後半)、寿命の長いタービン素材として有名だったニッケル基耐熱合金 Nimonicを採用していたが、1998年の時点ではIN100を使った鋳造タイプ(画像のブレード)に変更されている。また、翼表面にはアルミナイズ・コーティングが施されている。高圧圧縮機5段目から抽出した約400℃の空気でブレード内部を空冷することで耐熱温度は1150℃に達した。ちなみに、同時期に登場したB747は1190℃前後だった。
タービンブレードの画像
・オリンパス593エンジンの燃費や性能の決め手となる高圧タービンブレード。
サイズは長さ18㎝・重さ450グラム、計87枚で構成される1段の高圧タービンで、7段の高圧圧縮機を最大9,000rpmで駆動する。
PW4000、CF6、Trentといった現代のエンジン、その高圧タービンはどれ全長が10㎝・重さは250グラム程度。オリンパス593の高圧タービンブレードはかなり大きな部類に入る。
高圧タービンブレード 約18cm
高圧タービンブレード 背側
コンベクションクーリング用 18個の冷却孔
・冷却孔は根元から先端へ貫通している
・左からオリンパス593(低圧タービン)、(高圧タービン)、JT9D(高圧タービン)
RR オリンパス593 Mk610 仕様 | |
最大推力 | 38,050 lb(アフターバーナー使用時)、31,350 lb(未使用時) |
サイズ | 全長:7.11m、直径:1.21m |
重量 | 3,175 kg |
構成 | 圧縮機:低圧7段、高圧7段 |
タービン:低圧1段、高圧1段 | |
総圧力比 | 15.5:1 |
推力重量比 | 5.4 |