・ターボファンエンジンとギヤードファンは何が違うのか?
話題のエアバス A320neoに搭載されているPW1100Gエンジンは、ギヤードターボファン(GTF)を採用したことで、これまでのターボファンに比べて燃費が格段によくなり、騒音も劇的に改善されました。
いったい何がどう違うのか?
今回は、GTFエンジンの元祖ともいえる【ハネウェル TFE731】エンジンのファンブレード画像と併せてその仕組みを解説します。
もくじ
ハネウェル TFE731-3 ファンブレード
TFE731-3 エンジン
Honeywell TFE731-3 Engine
FAN BLADE
型式 | ハネウェル TFE731-3 |
推力 | 1,680 kgf (3,700 lbf) |
全長 | 1.26 m |
直径 | 0.87 m |
重量 | 330 kg |
ファンブレード枚数 | スナバー付ファン 22枚 |
搭載航空機 | ファルコン20/50、リアジェット55、サイテーション |
リアジェット25
ターボファンとギヤードファンの違い
ターボファンエンジン
・現代のジェット旅客機に搭載されているほとんどのエンジンがターボファンエンジンと呼ばれるもので、前面の大型ファンがグルグル回っているのが特徴です。
ファン部分の直径は大きくするほど燃費が良くなるといわれ、現代のエンジンはファン直径が大きくなる傾向にあります。
しかし、ファンの直径をただ大きくしてしまうと、1枚1枚のファンブレードの重量が重くなり、過大な遠心力にディスクが耐えられず応力限界に達する問題や、他にも超音速流による空力的な損失が増加する場合もあります。
下記の図が大型ターボファンエンジンの断面図です。
・前面の大型ファン(Fan)はエンジン後方の低圧タービン(Low-pressure turbine)によって駆動されています。
ここで注目することは、ファンを駆動するためには低圧タービンが4~6段も必要ということです。
タービンは本来、高速で回転させるほど効率的に燃焼ガスからエネルギーを取り出せる為、必要な段数は少なくてすむ=部品数を減らせます。しかし、ファンを高速で回すと先ほど説明した(過大な遠心力、超音速流による空力的損失)となるため低回転で作動させたほうが効率がよくなります。
まとめると、
ターボファンエンジンは
・タービンを高速で回転させるほど効率が上がるため、必要な段数は少なくてすむ。
・ファンは低速で回転させたほう遠心力や空力損失が少なく効率が良い。
ギヤードファンGTF
・この相反する矛盾(タービンは高速回転、ファンは低速回転)を解決するために考え出されたのが、ファンとタービンの間に減速歯車を組み込み、お互いが最適な回転数で駆動できるようにしたギヤードターボファンGTFエンジンです。
下の図にあるパーツ②が減速歯車
By Tosaka – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
・効率的なGTFエンジンを大型エンジンにも採用すればいいように思いますが、大型ファンを駆動するには大馬力を変換する必要があり、減速歯車の伝達損失や発熱・構造重量など技術的課題を解決する必要がまだまだあります。
このような問題から、これまでGTFエンジンはTFE731など推力1~5トンクラスのエンジンにのみ採用されていましたが、一気に推力15トンクラスのA320に採用されたということで注目されました。
A320neoに搭載されているPW1100Gエンジンでは、既存の推力15トンクラスのエンジンと比較して燃費が約10~15%も改善されています。
ANA エアバスA320neo PW1100Gエンジン
TFE731-3のファンブレード画像
・ファンブレードは全長19㎝と短いブレードが22枚取り付けられています。このサイズだとGE90の高圧圧縮機(HPC)の1段目と同程度の大きさとなっています。
推力1.6トンを発生させる元祖GTFエンジンのファンブレード
異物突入による前縁ダメージによってスクラップになったブレード
大型機のエンジンに比べると曲線が結構キツイ形状
ブレードの全長は約19㎝比較の737は1/200模型
ファンブレードのサイズ
・ファンブレードのサイズは下記のとおりです。
エンジン型式 | TFE731-3 |
ブレードタイプ | スナバー付き・ファンブレード |
材質 | チタン合金(Ti-6Al-4V) |
全長 | 190 mm |
全幅 | 105 mm |
重量 | 360 g |
※若干の測定誤差はご了承ください。