空を飛ぶ役目を終えた部品に新たな命を吹き込む
アップサイクル(Upcycle)、本来であれば捨てられるはずだった廃材や廃棄物に新たな命を吹き込み、新しいものに生まれ変わらせて再利用する。
リサイクルやリユースとは違う
「リサイクル」という言葉は、空き缶やペットボトルなどを分解処理し新たな資源の原料として再利用する際に使われる。
また、「リユース」は一度誰かの手に渡ったものを修理や綺麗な状態に戻して、改造することなく”再び同じ状態”で繰り返し使うことをいう。
SDGsが世間に幅広く普及したことで話題となっている「アップサイクル」、この意味は本来は捨てられるはずだった廃棄物や廃材(簡単にいえばゴミ)に新たな価値を付けて再び生まれ変わらせることを指している。
Kiru・Kezuru・Migaku
Kiru 切る
飛行機を空中に浮かすジェットエンジン。その内部は、高温高圧という一般的な機械では到底耐えられない過酷な環境となっている。
その中でも、千数百℃の燃焼ガスを受けて回転力を作り出すタービンブレードはエンジン性能の肝とされることから、高温に強いニッケル超合金という特殊な材料が使われている。
特殊というだけあって通常の加工法では困難を極める。業界では”難作材”として扱われ、普通の工具ではまず切ることすらできない。
Kezuru 削る
工業製品をアクセサリーに変身させるための重要なプロセスがこの削るという工程。
キーホルダーやバッグチャーム、ネクタイピンなど用途に応じた形になるまでひたすらこのウイングシルエットを削る。
一般的な金属材料は簡単に削ることができるが、難削材とよばれる材料は同じ量を削るにも2倍3倍の時間を要する。
また、ニッケル超合金は赤熱するほど強度が上がるという特殊な性質があるため、適度に冷やしながら加工を続けないと一向に削れないという難しさもある。
Migaku 磨く
磨きといってもジュエリーとは少し違う。タービンブレードは高温・高圧の環境に一万時間以上も晒されている。
熱に強い特殊な材質とはいっても、酸化や腐食などが徐々に進んでいく。取り外された状態の廃材は、焼け焦げているといっても大袈裟な表現ではない。
その焼けやキズは深く入り込んでいるので、表面を簡単に磨くだけでは取れない。また、材料を鏡のようになるまで磨き上げるには、プラチナリングを磨くよりも数倍の作業時間を要する。
勿論、曲面の多い部品だけあって機械での作業は困難を極める。全てが手作業だ。
1万円以下でなければ販売する価値は無い
誰でも買える1万円以下、この魅力的な価格で提供できなければその販売価値はない。
売る側として忘れていけないのは、お客様に飛行機を楽しんで貰うという事。
このような商品を熱望するのは航空ファンだけではない。将来、航空業界を目指す学生や飛行機に興味を持ったばかりという人も多い。
これに独自の付加価値とそれに見合った適切な値段をつけることで、販売者と購入者の関係が持続できる。
SDGsが掲げた17目標、その12番目に「持続可能な消費と生産の確保」がある。
目先の利益だけで高く売れば、翌年にはその存在すらなかったことになるだろう。まさに幻の逸品と化してしまう。
魅力あるこのウイングシルエット、販売の壁はやはりコストをどう壊すかになるだろう。この壁が壊れた暁には、多くの人が手軽に身につけられるアップサイクル品となるはずだ。
私達(TEAM スカイプロジェクト)は、金属加工技術者と一丸となり日々それを目指して挑戦し続けている。