旅客機の電源はなぜ特殊なのか。それは軽量化にあった。
一般家庭のコンセントは AC100V 周波数 50(東日本)/60Hz(西日本)となっているが、旅客機の電源はAC115V 400Hzが主に使われている。
なぜ、航空機は400Hzを使うのか。
旅客機の交流電源
・旅客機の電源には、三相4線式(3相中性点接地式)AC 115/200(V)周波数 400Hzの電源が使われています。
三相4線式(3相中性点接地式)
・三相4線式は、三相交流電力を4本の電線で配電する方法。
電圧線が3本(A相・B相・C相)、中性線が1本(N相)の計4本となっている。
・A相ーN相の相電圧はAC115V
(B相ーN相、C相ーN相も同様にAC115V)
単相115V負荷に接続する。
・A相ーB相の線間電圧はAC200V
(B相ーC相、A相ーC相も同様にAC200V)
三相200V負荷に接続する。
・三相4線式なら、接続方法によって簡単に電圧を使い分けられるメリットがある。
機内照明や計器類、座席モニターなど負荷の小さな装置には単相115Vを使用し、油圧ポンプや燃料ポンプの電動モーター、送風用電動ファン、機内オーブンなど負荷の大きな装置には三相200Vと使い分けている。
なぜ、周波数は400Hzなのか?
・航空機の電源は、なぜ周波数が400Hzになっているのか。
一般家庭 50Hzに対して、8倍も周波数が高い400Hzは、モーターや発電機・トランスなどを作る場合に、鉄心や銅線量が1/8ですむという大きなメリットがある。
例えば、B747で使用されている90kVA(一般家庭 約30軒分を賄える)発電機の重量は約40㎏程度となっている。
これがもし周波数50Hzなら単純に320㎏の重さとなり、エンジンの数と同じ4台分だと相当な重さとなってしまう。
それなら、もっと周波数を上げて400Hz以上にしたほう機器を軽量化できるような気がするが、あまり周波数を上げ過ぎると電力ロスや発熱などの問題もある。
双方のバランスが良いのが400Hzという周波数となっている。
大きく変化したB787の電力システム
これまで、旅客機の主電源はAC115V 400Hzが一般的だったが、B787では定格250kVA、AC 235V、周波数360~800Hz の可変周波数発電機が搭載されたことで、電力システムが従来とは大きく変化した。
各エンジンには2台の発電機が搭載され、計4台(1,000kVA)という大容量の発電が可能となっている。
従来機では、エンジンの回転数に関係なく発電周波数を400Hzに保つ定速装置(油圧ポンプ・油圧モーター・ガバナー)が必要だったが、B787では定速装置を無くしたことで小型軽量・大出力が可能となった。
エンジン回転数に応じて可変する周波数(360~800Hz)は、半導体スイッチングによって一定に保たれている。この技術はパワーエレクトロニクスの進歩によって可能となった。
まとめると
旅客機の電源は
- 三相4線式(3相中性点接地式)
- AC 115/200(V)周波数400Hz
- 照明など小さな負荷には単相115V、モーターなど高負荷には三相200V
- 一般家庭の50Hzより8倍高い周波数は、鉄心や銅線の使用量が単純に1/8で済む。
- 400Hzによる装置の軽量化の効果が大きい。