2001年よりも前に航空力学を習った方は覚えているだろうか?誰もが一度は習った揚力の説明。しかし、あのお決まりはもうない。
飛行機物語:羽ばたき機からジェット旅客機まで
目次
- 揚力はなぜ発生するのか
- リリエンタールからライト兄弟へ
- エンジンはどのように開発されたか
- プロペラはなぜ推力を発生するのか
- 翼理論が誕生するまで
- 金属の機体が誕生するまで
- ジェットエンジンが誕生するまで
- ジェット旅客機が開発されるまで
本の内容
誰もが一度は習った揚力の説明。しかし、今はこの説明がなくなった。
飛行機の翼の断面は下側が平らで上側が反っている、翼が空気中を移動すると空気は上面と下面を通る流れに分かれる。上下に分かれた空気は後縁で合流するが、上面は反っている分だけ移動距離が長くなる。その結果、上面の流れは下面より速くなる必要がある。流れが速いということはベルヌーイの定理によって空気の圧力が下がる、この上下の圧力差によって上向きに揚力が生まれ飛行できる。
少しニュアンスが違うかもしれないが、だいたいこんな説明だったかと思う。
2001年、この説に異議を唱えたのがアメリカ フェルミ研究所のアンダーソン氏だった。
長い間この揚力説明をしていた業界はその異議に激震した。
詳細は本書に詳しくありますが、結局は上下流の同時到着がおかしいという話でベルヌーイの定理を否定したものではなかった。
ほかにも『ウサギとカメ』を使った揚力の説明を覚えているだろうか?
同時に出発した例の『ウサギとカメ』という気流。上面をウサギ・下面をカメが走り同時にゴールする。上面は距離が長い分ウサギは走る必要がある・・・
しかし、なぜ同時にゴールする必要があるのか。むしろ同時に到着しないということが風洞実験で証明されている。
その後は、航空教室など一般向けの説明でも『ウサギとカメ』を例にしたような上下流の話はなくなりました。
本題は羽ばたき機からジェット機までという科学と技術の内容ですが、揚力の章が大きく取り上げられていました。
こんな人におすすめ
難しい定理をやさしく説明しようとするあまり、逆に深みにはまるということは多々あります。
この【飛行機が飛ぶ原理】揚力についても、身近なことで説明しようと例の『ウサギとカメ』や『マラソンしている人』が同時にゴールという強引に説明した結果、疑問が生じたのではないかと思います。
ただ、一般受けするのはどっちだろうと個人的には思います。
最近は『作用反作用の法則』で説明したり『空気を下向きに曲げる・・・・』など、解釈の問題ということで統一性のない無難な揚力説明になった気がします。
著者のこの言葉が気に入った!
むずかしい理論を簡単に説明しようとするあまり、間違ってしまうこともある。
航空資料館