元・ANAのボーイング747SR(ジャンボジェット)に搭載されていたエンジンの一部を加工したネクタイピン。
1万時間以上空を飛び、定期交換で取り外され廃棄を待つだけだった超合金。『タービンブレード』に新たな命を吹き込んだ全日空の整備士の方々。
発売当時、航空ファンの間では『絶対に落ちないお守り』として話題となりANAの機内販売でも登場。1万円以上するネクタイピンが、あまりの人気に再販しても蒸発するかのように一瞬で消えた。
まさに【技術を芸術に替えた品】今回はそのネクタイピンを紹介します。
B747SR JA8145のタービンブレード ネクタイピン
・このようなジェットエンジンの部品を加工して作られたアクセサリーが販売されていたのは、1995年~1999年頃でした。
全日空のB747(ジャンボジェット)として1万時間以上空を飛び、定期交換で取り外され捨てられる運命のエンジン部品。壊れてもいない部品をどうにかできないかと当時の全日空の整備士の方々がアイディアを出し商品化したのがこのアクセサリ。
テレビでも紹介されたことで大人気となり、機内販売もされるほどに。
イベントでの即売会では¥5,000前後、機内販売だと¥10,000(証明タグ打刻のキーホルダー付き)だったかと記憶しています。
さらに、航空ファンの心を掴む演出までされていました。
『CERTIFICATION TAG』と呼ばれる証明書には、このB747SR JA8145の3番エンジン(CF6-45A2)に搭載され15,600時間飛行したというカードまで入っていました。
その証明カードを残念ながらなくしてしまい実物を紹介できませんが、メモに残っていたデータを再現すると、このような感じのカードでした。
CERTIFICATION TAG | |
REM. A/C TYPE | BOEING 747SR |
REM.A/C | JA8145 |
REM.DATE | 1996/3/15 |
POS.No | #3 |
ENG.TYPE | CF6-45A2 |
PARTS | HPT STG1 BLADE |
USED HOUR | 15,600 hr |
INSPECTOR | 担当者サイン |
※REMは”REMOVE”、A/Cは”AIRCRAFT”の略
タービンブレード ネクタイピンの画像
・ジェットエンジンの心臓部 タービンブレード1段目(HPT1)は、エンジン内で最も過酷な環境で動作することから、熱に大変強く、錆びにくく、加熱するほど強度が増す(800℃前後まで)という通常の金属とは違う性質をもつ特殊な超合金で作られています。
それでも、離陸時には燃焼ガスが1,300℃前後に達することから、ブレード内部に8箇所の通路を設け燃焼前の圧縮空気で冷却しています。
・タービンブレードの材質は、ニッケルに様々な元素を配合したニッケル基耐熱超合金と呼ばれるものが使用されています。マニアックな表現をすると、CF6-45A2エンジンのHPT1はRene 80という合金を一方向性凝固させ製造したものです。
下記のようなタービンブレードをスライスした断面が、ネクタイピンのような通路を構成しています。興味がある方は参考にしてみてください。
まとめ:現在の入手事情(タービンブレード・アクセサリー)
・このようなジェットエンジン アクセサリーが販売されていた時期が、1995年~1999年と古いため現在では中古市場でのみ限定的に流通しています。
オークションサイトや中古リサイクルショップなどを根気よく探していると出会える可能性があります。
相場的には、全日空のB747 タービンネクタイピン(¥6,000前後)、タービンブレードキーホルダー(¥8,000前後)、タービンチョーカー(¥7,500前後)といったところです。