【錆びない超合金】B747-400 キーホルダーの話

【外気温-50℃】飛行機は機外の温度をどのように測る?|仕組みの話

機内モニター

只今の外気温 -50℃」飛行中の機内モニターに表示される外の温度。客側としては(スゴク寒そう)という答えしかありませんが、時速800㎞/hで飛行する機外の温度は一体どのように測定しているのか?

いつも何となく暇つぶしに見ている外気温の情報。その仕組みを雑学程度に知っておくと、いつか誰かに凄いと尊敬されるかもしれません。

 

旅客機の外気温センサーはどこにある?

・飛行中のコックピットの窓から温度計を外に出して気温を測ることはもちろん不可能。赤外線温度計やサーモグラフィーといった流行の装置を使っても対象物がないので測定はできません。

外気温を測定するには、温度センサーを機外に出す必要があります。一般的な旅客機の場合、その取り付け場所は鼻先(機首)部分の近くにあります。

(機首付近にはその他にも速度・高度・迎角を測るための様々なセンサーがあります。)

 

JAL Boeing 767-300ER

機内モニターB767-300ER:外気温を測定するTATセンサー

TATセンサー(Total Air Temperture:全温度)

・外気温を測定するセンサーは、TATセンサー(Total Air Temperture:全温度)と呼ばれています。

形状は一般的な温度計からは想像できないほど特殊な形状をしています。

 

TATセンサー:サイズは10㎝X15㎝程度の大きさ

TATセンサー左側が機首方向(気流は左から右へ通過する)温度センサーは中央の翼型部分にある

 

機内モニターに表示される外気温の仕組み

機内モニター

・TATセンサーで測定した全温度から実際の外気温を求める簡単な方法は、飛行中の速度を調べてその温度上昇分を引き算すれば求めることができます。

外気温=全温度ー飛行中の速度による温度上昇分

(詳しくは、おまけの章で解説)

全ての機体メーカーが同じ仕組みではありませんが、一般的に機首部分のセンサー(ピトー管、静圧孔、TAT)で得られた情報は、ADC(エアデータ・コンピュータ)という装置で処理されコックピットの計器や自動制御装置・エンジンコンピューターへ送られます。

機内モニターに映し出される外気温もこのデータを利用しています。

 

おまけ(もっと詳しく知りたい方)

 

一般的な温度と全温度は何が違うのか?

TATセンサーは全温度を測定しています。一般的な温度とは何が違うのか簡単に解説します。(厳密にはおかしな部分もありますが、あくまで概略の紹介です。)

流体(液体や気体)にはネバネバした性質があり、人間にはほとんど感じませんが空気にも粘性の性質があります。

ハエや蚊といった小さな昆虫は、空気をネバネバした水飴のように感じながら飛んでいるという話もあります。(興味のある方はレイノルズ数を参考にしてみてください)

大気中を飛行機が高速で進むと、機体の表面は粘性摩擦によって加熱され温度が上昇します。他にも高速飛行により空気が圧縮されることで発生する熱もあります。この現象は「空力加熱」や「熱の壁」ともいわれています。

単純にいえば、スピードを速くすると周囲の空気温度よりも温度が上がりますよという話。

極端な例を紹介すると、過去に音速の2倍で飛行していたコンコルドという超音速旅客機。-50℃という環境の中をマッハ2.02(2,180 km/h)で巡航飛行中、胴体の先端付近の温度は空力加熱により約+127℃まで上昇したといわれています。

このTATセンサーで測定した温度には、実際の温度+速度上昇分の温度も含まれているということで「全温度」と表現されています。外気温を求める簡単な方法は、飛行中の速度を調べてその温度上昇分を引き算すれば求めることができます。

 

Concorde - airframe temperaturesSteal88, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

 

飛行機マニアのジャンク遊び

・ジャンク市で航空機の廃棄部品を買う目的は、大空を飛んでいたというロマンを感じたい・デザインがカッコイイ・飾りたいなど様々ですが、それ以外にも分解して仕組みが知りたいという探求心があります。

こうして深く知ることで、また新たな疑問がわき、さらに詳しく調べることで飛行機がもっと好きになるといった具合です。

今回のTATセンサーは構造的に分解できなかったので、テスターやメガーといった電気回路を診断する機器で内部の回路や故障原因を調査してみました。

 

分解や電気回路の診断は手順を誤ると怪我や感電、故障の原因となりますので真似される場合は自己責任でお願いします。

 

航空用と一般機器で違う点

一般的な機器の場合、センサー類は必要最小限で壊れたら取り換えればよいという考えです。しかし、航空用や産業機器・医療機器といった人命に関わる装置には、故障の際のバックアップとして同じものが2つ以上装備されている場合がほとんどです。

特に航空機は飛行中に故障しても空の上で交換は不可能なことから、ほとんどの装置やセンサー類が2つ以上装備されています。このTATセンサーも形は1つですが内部に温度センサーが2つ入っています。

 

例えば、No1のシステムがダメになってもNo2へ自動的に切り替える、Ch AとCh Bは常にお互いを自動的に監視し合い故障の前兆を検知すると切り離すといった感じです。

ピンアサインを調べる(全部で7ピン)

・普通、電気回路の修理には配線図がありますがジャンク部品にはもちろんありません。しかし、7ピン程度のピンアサインならテスターで簡単に内部を調べることができます。

(使用するのは導通確認・抵抗測定モードの2つです)

 

ケースグランドを探す

・まずは手っ取り早く簡単に探せるケースグランドです。7ピンのうち1つのピンがケース本体と接続されています。

テスターを導通モードにしリード棒の一つを本体に当て、もう一方を7ピンすべてに順序よく当てると導通がとれるピンでテスターのブザーがなります。

残り6ピンはヒーター回路と2つの温度センサー

・TATセンサーやピトー管には氷結防止ヒーターが必ず組み込まれています。テスターを抵抗測定モードにしてピンを探し出します。

コツは6ピンの内、一つのピンは当てたまま固定し、もう一方のリード棒で残り5ピンを順序よく当てるとどれかで抵抗値が表示されるはずです。(表示されなければ別のピンを固定して繰り返します)

この方法で見つけたピンアサインがこちら。

 

適当に書いた回路なので正当性は不明ですがほぼ正しい(マニュアルに近い)と思います。

ピンアサイン抵抗値回路
1-2ピン20Ω氷結防止ヒーター
3-4ピン547Ω温度センサー A
5-6ピン547Ω温度センサー B
7ピンー本体0Ω(導通)ケースグランド

※実際のマニュアルとピンアサインの番号は違う可能性があります。

正当性を検証

・どのようにしてヒーター回路や温度センサーと判断したのか?

まず、ヒーター回路 20Ω。

このTATセンサーにはAC 115Vが供給されているので、単純に計算すると約660Wのヒータが内蔵されていることになります。

B747クラシックのピトー管にも690Wの氷結防止ヒーターが内蔵されていることから、TATのヒーターも妥当な数値だと判断。

・2つの温度センサーは547Ω

これは、AとBどちらも同じ値です。温度センサーは温度の変化によって抵抗値が変化するのでドライヤーで少し温風を当てるだけで数値が変わるはずです。

試しに温風を当てるとすぐに580Ωを超えました。A、Bどちらも同一の値で変化することから、このセンサーは正常に動作していると判断。

 

故障原因は何だったのか?

記事のTATセンサーと同一物ですが、画像のエアラインとは関係ありません。

これは絶縁抵抗計(メガー)で調べることができます。ヒーター回路の1、2ピンどちらか一つと、本体の金属部分にテスト棒を当てて診断します。

ケースとヒーターは完全に絶縁されているので、何も問題なければ表示は無限大を示します。

今回のTATセンサーの場合、乾燥している状態では無限大でしたが本体に少し水分が入ると急激に抵抗値が減少、0に近づくことからヒーターの絶縁不良と判断できます。

イメージとしては、晴れている日は問題なく動作しているが、雨の日や水分を含む大気中を飛行するとサーキットブレーカーが落ちてエラーになる。温度センサーは問題なく動作しているので、コックピットの画面上では”TAT HEATER”というニュアンスのエラーが表示されたと予想。交換して廃棄処分されたのが今回のTATセンサーと考えられます。

あくまでイメージですが、このような遊びができるのも航空ジャンクの醍醐味の一つです。

ピトー管やAOAセンサーなどにも今回のようなヒーター回路があるので入門用としておススメです。計器類はピンアサインが多いので実験には不向きです。上級者の中には、実際にマイコンでADCと同じシグナルを作り出して速度計や高度計・VSIを作動させるという人もいます。

教科書で電気や飛行機の知識を学ぶことも大切ですが、好きな物で遊ぶことも力になると思うので興味のある方はジャンク市等で手に入れてチャレンジしてみてください。

※今回のような遊びを実行する場合は、くれぐれもケガや感電・装置を壊さないよう自己責任で十分注意して行ってください。

 

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