エアバス A320neoシリーズに搭載されている最新エンジン、PW1100G-JM(ギヤード・ターボファン)のファンブレードを紹介します。
大型エンジンのファンブレードとして、初めての高強度アルミ合金(従来はチタン合金やCFRP)を採用。一部では「アルミ・ファンブレード」とも呼ばれています。
P&W PW1100G-JM エンジンについて
AIRBUS A320neo
Pratt & Whitney
PW1100G-JM
FAN BLADE
エンジン概要 | |
型式 | Pratt & Whitney PW1100G-JM |
最大推力 | 24,240 lbf~33,110 lbf (11,000 kgf~15,031 kgf) |
ファン形式 | フォワード・スウェプト型 ワイドコード ファンブレード |
ファン直径 | 2.06m(81 in) |
ファンブレード長 | 0.80 m |
ブレード枚数 | 18枚 |
ブレード材質 | アルコア製 高強度アルミ合金 (7000系列またはAl-Li合金) |
構造 | 前縁チタン合金貼付け |
バイパス比 | 12.5 |
全圧力比 | 42前後 |
搭載機種 | Airbus A320neoファミリー |
・過去50年の間に、民間型のジェットエンジンは大口径ファンによる高バイパス化、高い圧力比の達成、ガス温度の高温化によって燃費は約半分まで改善した。
しかし、この技術も成熟しつつあり改善率は小さくなり始めていた。1990年代に入り、各エンジンメーカーは大幅に燃料消費率を低減させる研究を開始。
1993年頃からP&Wも、PW2000のコアを使った推力50,000 lbf級のギヤード・ファン(GTF)の研究や、推力30,000 lbf級としてPW6000のファン部分に減速ギアを取り付けたPW8000の開発に着手。
数年後、PW8000のプロジェクトは消えたが、新たにPW308をコアとしたGTFの研究が進められた。これが後のPW1100Gとなる。(量産型となる現在のPW1100Gのコアは、PW800と共通点が非常に多いとされている)
研究から20年余り、2014年9月 A320neoに搭載され初飛行に成功。
2016年1月より商用運航に入った。
【関連動画】
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高強度アルミ合金製ファン
・従来の同クラス(30,000 lbf級)のファンブレードの場合、ディスクにはブレード1枚あたり14~28トンの遠心力が掛かっていたが、低速回転のPW1100Gの場合は7~11トンと劇的に減少した。
(例えば100%rpmで比較した場合、V2500は5,650rpm、PW1100Gは3,200rpm)
これまで、ファンブレードの材料にはチタン合金またはCFRPというのが一般的でした。
しかし、引張荷重が小さいGTFエンジンの場合、アルミ合金(7000系に近い性質)でも十分耐えられることがわかり、新たな材料の選択肢として追加されました。
異物突入や雲中の雹や氷に対しての保護材として、前縁にはチタン合金が貼り付けられています。
CFRP素材のブレードよりも安く、翼厚は全体的に薄いため軽いなど、これまでの常識を覆した「アルミブレード」は革新的とさえ言われている。
高効率層流空力設計による洗練された形が、この複雑にカーブを描くブレード形状となっている。
PW1100G ファンブレードの画像
ファンブレードのサイズ
・ファンブレードのサイズは下記のとおりです。
エンジン型式 | PW1100G-JM |
ブレードタイプ | フォワード・スウェプト型 ワイドコード ファンブレード |
材質 | アルコア製 高強度アルミ合金 (7000系列またはAl-Li合金) |
全長 | 800 mm |
最大幅 | 340 mm |
重量 | 5~6 kg |
比較画像 B747 vs A320neo
左:B747-100 (P&W JT9D-7A) 右:A320neo (PW1100G)
[参照]
・Pratt, Alcoa Pioneer Use of Aluminum Fan Blades
・EASA PW1100G