・2018年頃から成田空港でよく見かけるようになった、B737-800に付いている矢印のような変わった形のウイングレット。
この矢印は『スプリット シミタール ウイングレット』と呼ばれるもので、見た目以上に効果があるので紹介します。
一般的によく見かけるウイングレットは、ANAやJALのB737-800に取り付けられているこのようなウイングレットです。
しかし、このユナイテッドのB737-800には、上下矢印のような形をしたウイングレットが取り付けられています。
・これは、2014年からボーイングがB737-800/-900ERを対象にサービスを開始したパフォーマンス・アップグレードキット(Boeing資料より)
左右両翼の下側にウイングレットを追加装着することで、機体重量は既存の737-800に比べて合計133kg(左右2枚)増加するが、燃費は下記のように改善されます。
・1000nm(1,852km)のフライトで1.6%削減
・3000nm(5,556km)のフライトで2.2%削減
※燃費2%の改善は、年間にすると約1,200万円以上のコスト削減になる。
この効果がどれほど凄いのかという、もう一つの例を紹介します。
例えば、エンジンのコア・アップグレードという内部の大規模改修(型式はCFM56-7BからCFM56-7BEへ変更)を行うことで燃費を約2%改善することも可能。
しかし、エンジンのアップグレード作業は、費用や作業時間などかなりコストがかかる大規模な改修となります。それに対して、ウイングレットのアップグレードは下側部分の追加だけ。その効果は、誘導抗力と呼ばれる翼端渦の空気抵抗を従来機よりもさらに減らすことが可能となり、結果的に燃費を1.6~2.2%改善することができる。
ちなみに・・・
ウイングレットのアップグレード、1機のお値段は約 6,500万円(1ドル/¥110円換算)
2%の燃費削減は約1,200万以上の価値があるようなので、条件にもよるが5年くらいで元がとれる計算なのかもしれない。
翼端から発生する渦は、目には見えないが航空機にとって巨大な空気抵抗なのだ。
・この、B737NGシリーズのパフォーマンス・アップグレードキットをさらに改良したのが、B737 MAX8に装着されているシミタール・ウイングレットとなっている。
Oleg V. Belyakov, CC BY-SA 3.0 GFDL 1.2, via Wikimedia Commons
余談だが、MD-11のウイングレットがスプリット・シミタール・ウイングレットの原型に似ているように見えないだろうか。もしかすると、ご先祖はボーイングに吸収されたマクドネルダグラス社のものかもしれない。
ダグラスMD-11に装着されていた上下のウイングレットを参考にしたのか・・・はたしてどうだろう。
・撮影場所:千葉県成田市古込1−1(第1ターミナル)
・機材:UNITED(ユナイテッド航空)B737-800 N37293