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墜落 第8巻 離陸、瞬時の決断|加藤 寛一郎(飛行機の本 #71)

飛行機にとって一番不安定となる離陸の瞬間。もし、緊急事態になったら離陸継続か中止かを瞬時に判断する必要がある。

50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。

航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。

 

全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。

墜落:第8巻 離陸、瞬時の決断

第一章:三つのタイヤが連続破損

・1978年3月1日、コンチネンタル航空603便 DC-10-10がロサンゼルス空港を離陸滑走中に3つのタイヤがパンク。

離陸決心速度(V1)以前の異常発生により機長は離陸を中止したが、雨と3つのタイヤ破損により制動力が規定よりも弱まり、滑走路上で停止することはできなかった。

第二章:閉め忘れたアクセスドア

・1985年1月21日、ギャラクシーエアラインズ203便 L-188C エレクトラがリノ国際空港を離陸直後に墜落した。

右主翼付け根にあるエンジン始動用の外部高圧空気供給口のアクセスパネルが閉め忘れていた。それが原因で離陸直後にバフェットが発生したが、計器の確認を怠り低速・低高度という状況でエンジンパワーを絞ってしまった。

第三章:フラップ・スラットの出し忘れ

・1978年8月16日、ノースウエスト航空255便 DC-9-82がデトロイト カウンティ空港で離陸直後に墜落した。

墜落した機体は、離着陸時に展開する高揚力装置(フラップとスラット)を出し忘れていた。通常であれば警報装置が作動するが、なぜかブレーカーへの電力が遮断され警報はオフになっていた。

第四章:方向舵のトリムミス

・1989年9月20日、USエア5050便 B737-40がラガーディア空港で離陸に失敗。多くの人間が出入りする駐機中に、方向舵トリム装置が左側限界まで動かされていた。

その後のシミュレーター試験では、トリムが左限界まで作動した状態でも離陸または中止は可能だった。操縦ミスが原因とされる。

第五章:離陸の瞬間、エンジン停止

・1996年6月13日、ガルーダ・インドネシア航空865便 DC-10-30が福岡空港で離陸に失敗。滑走路をオーバーランした。

事故の引き金となったのは、搭載されていたCF6-50Cエンジンの内部にある高圧タービン第1段のブレード破断だったが、機体は離陸滑走中でエンジン故障時にはV1(離陸決心速度)を超えていた。

V1を超えた場合は離陸を継続しなければならなかったが、当該機種は離陸を中止した。残りの滑走路では停止することができずオーバーランした。

 

CF6-50系列 高圧タービン破断
・高圧タービンブレード1段目の破断原因は粒界酸化(IGO)と呼ばれるもので、ブレード表面に発生した腐食が結晶の粒界に沿って内部へ侵食する現象。その粒界酸化によってブレード破断が起きたとされている。その後は改良型(内部に腐食防止コーティング)を施したブレードに変更されている。

第六章:エンジン始動の直後、排気口から火焔

・1998年5月12日、ユナイテッド航空801便 B747-400が成田空港にてエンジンスタートに失敗。排気口から火を噴いた。炎は深刻なものではなく一時的なものだった。

しかし、客室乗務員と乗客は機長の指示を聞き取れず緊急脱出を開始した。脱出の際に乗客4名が重傷、他20名が軽傷を負った。

 

【どんな人におすすめ?】

・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。

著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。

 

航空資料館

離陸は人間にも機械にも最も負担がかかる瞬間。判断の遅れや間違った対処で危機的状況は一瞬で起こる。

 

この本のまとめ
読みやすさ(初心者向き)
(4.0)
メカ的な面白さ
(3.0)
写真・図面の豊富さ
(3.0)
値段
(4.0)
入手性
(4.0)
買うべきか
(4.0)
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