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墜落 第5巻 エンジン損傷|加藤 寛一郎(飛行機の本 #68)

航空機エンジンの猛威は、バードストライクだけではない。効率優先の整備によるエンジン脱落、正常なエンジンの停止など、予想だにしない事例が起きている。

50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。

航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。

 

全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。

墜落:第5巻 エンジン損傷

第一章:鳥の衝突 バードストライク

・1975年11月12日、ONA航空032便 DC-10-30がジョン・F・ケネディ空港で離陸に失敗。100羽ほどのカモメが一斉に飛び立ち機体とぶつかった。

その一部が第3エンジンに吸い込まれ、エンジンは爆発分解・脱落した。右翼からは燃料が漏れ火災が発生した。

 

バードストライクの経験がないエンジンだった
搭載されていたCF6-50Aエンジンは、鳥衝突の型式証明に前エンジンのCF6-6のデータ使用をFAAが認めていた。この事故では衝突試験を遥かに超える鳥が突入。ファンブレードの外周を覆うシュラウド材のエポキシ樹脂の粉末が多量にエンジンコアに入り予想外の爆発を起こした。

第二章:効率優先の整備が事故を誘発

・1979年5月25日、アメリカン航空 191便 DC-10-10がオヘア空港を離陸中、機首上げの瞬間に左エンジンがパイロンと共に主翼から脱落。バランスを崩した機体は地面へ激突した。

通常は滅多に起こらないパイロンからのエンジン脱落。整備の際にマニュアルとは違う方法での取り外しに原因があった。

第三章:エンジン故障後の操縦を誤った

・1985年9月6日、ミッドウエスト航空105便 DC-9-10がミッチェル・フィールド空港を離陸後に墜落。

上昇中に右エンジンの高圧コンプレッサーの9段と10段の間にあるスペーサーが破損したことでエンジンが破壊された。

通常であれば1つエンジンでも飛行は可能だが、誤った対応の操縦が悲劇を招いた。

第四章:間違って正常エンジンを停止

・1989年1月8日、BAの737-400(G-OBME)がイースト・ミッドランズ空港へ緊急着陸の際に墜落した。

引き金となったのは、左エンジンのCFM56-3C1のファンブレードの1枚が破断したことが原因だが、乗員は誤って正常なエンジンを停止してしまった。

第五章:逆噴射装置が突然作動した

・1991年5月26日、ラウダ航空004便 B767-300ERがバンコク国際空港を離陸して上昇中、P&W PW4060 左エンジンのスラスト・リバーサー(逆噴射装置)が突然作動。制御不能となった機体は墜落した。

本来は絶対に空中では作動しない装置がなぜ作動したのか。

第六章:アムステルダム市街への墜落

・1992年10月4日、エルアル航空1862便 ボーイング747-200F(貨物機)がスキポール空港を離陸。上昇中、突然右翼の第3エンジンが脱落。そのエンジンは隣の第4エンジンに衝突し同じく脱落。

右翼にある2つのエンジン全てが脱落した機体は、バランスを失いアムステルダム市街に墜落した。

原因はヒューズピンと呼ばれる部品だった。

第七章:ファンブレードの猛威

・1996年7月6日、デルタ航空1288便 MD-88が離陸滑走直後にエンジン破壊事故を起こした。エンジン開発では、万が一ファンブレードが破断してもエンジン内で留まることを試験で証明する必要がある。

試験をパスしたはずのエンジンだったが、破壊事故はブレードではなく想定外のディスク破断だった為、破片は胴体を突き破り貫通。乗客2名が死亡した。

 

【どんな人におすすめ?】

・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。

著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。

論評を期待している方にはあまり向きません。

 

航空資料館

機体を軽々と宙へ浮かし、穏やかに追従するエンジン。実際は想像を絶する力がエンジンや翼には加わっている。

 

この本のまとめ
読みやすさ(初心者向き)
(4.0)
メカ的な面白さ
(3.0)
写真・図面の豊富さ
(3.0)
値段
(4.0)
入手性
(4.0)
買うべきか
(4.0)
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