航空事故の半数が発生する進入・着陸の時間帯は魔の時間といわれ、パイロットの技量が生死を分ける。
50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。
航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。
全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。
もくじ
墜落:第9巻 着陸、危険な時間
第一章:ボーイング727、就航直後の連続事故
・1964年にデビューしたボーイング727は第二世代旅客機の代表とよばれるほどの傑作機だが、就航開始から2年の間に4件の連続事故を起こした。
1965年8月16日、ユナイテッド航空389便がミシガン湖に墜落。
1965年11月8日、アメリカン航空383便がシンシナティ空港手前に墜落。
1965年11月11日、ユナイテッド航空227便がソルトレークシティー空港手前に墜落。
1966年2月4日、全日空60便が羽田空港手前に墜落。
この4件の連続事故には、着陸時の典型的な共通点があった。
第二章:凍結滑走路をオーバーラン
・1982年1月23日、ワールド・エアウェイズ 30H便 DC-10-30がボストン ローガン空港で着陸に失敗。滑走路が氷結していたため停止できずにオーバーランした。
滑走路の状態を管制官がパイロットに伝えていなかった。
第三章:油圧スイッチの誤操作で胴体着陸
・1996年2月19日、コンチネンタル航空1943便 DC-9-30がヒューストン空港に胴体着陸した。
事故原因は、チェックリストの一項目(油圧)をパイロットが読み飛ばしたため、ランディングギアもフラップも出ていなかった。
第四章:高度を下げ過ぎ、丘の上に墜落
・1997年8月6日、大韓航空801便 ボーイング747-300がグアム空港手前の丘に墜落、機体は大破した。
当日の空港はILS(計器着陸システム)の降下経路を示すグライド・スロープが作動していなかった為、ステップ・ダウン・アプローチが実施されていた。
疲労が極限に達していた機長は誤った降下経路を飛行していたが、副操縦士・航空機関士は機長に異議を唱えることができなかった。
第五章:羽田空港、工事中の新滑走路に着陸
・2000年2月28日、日本エアシステム346便 MD-87が工事中の滑走路に誤って着陸した。負傷者・機体の損傷はなかった。
当時、羽田空港は新B滑走路の新設工事中だった。
現B滑走路に進入中、機長は副操縦士の指導に集中。現Bに進入していると思い込んでいたが、それは建設中の新B滑走路だった。
・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。
著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。
論評を期待している方にはあまり向きません。
航空資料館