B777Xに搭載されるGE9X エンジンは、2016年 初運転に成功、2018年に飛行試験を行い、2020年9月に型式証明を取得した。
Mztourist, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ
GE9X の概要
Dan Nevill from Seattle, WA, United States, CC BY 2.0, ウィキメディア
GE9Xエンジンは、ボーイング777X型機用のエンジンとして従来型 GE90シリーズよりも燃料消費率を -10%(XWB-97より -5%)、CO2排出量についても -10%の削減が目標に開発がスタートした。
地上試験では、アメリカ初の有人ロケット(マーキュリー・レッドストーン3号)の推進力:78,000 lbfをはるかに上回る推力 134,000 lbfを発生。
GE90-115Bのギネス記録(127,888 lbf)を大幅に塗り替え、GE9Xは世界最大の大きさで最もパワフルな旅客機用エンジンとなった。
GE9Xシリーズ モデル
・GE9X-105B1A:110,000 lbf(489.3 kN)
ベースモデル
※2020年9月 FAA認証
・GE9X-105B1A1:110,000 lbf(489.3 kN)
高温・低地 スラストバンプ
※2020年9月 FAA認証
・GE9X-105B1A2:110,000 lbf(489.3 kN)
高温・高地 スラストバンプ
※2020年9月 FAA認証
・GE9X-105B1A3:110,000 lbf(489.3 kN)
A1+A2 複合タイプ
※2020年9月 FAA認証
【スラストバンプとは】
ファン(FAN)
Dan Nevill from Seattle, WA, United States, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ
ファン直径 134 in(3.40 m)
ハイブリッド・ファンブレード
(基材:CFRP(基材)、後縁部分(GFRP)の組み合わせ)
ブレード枚数 16枚
(GE90 22枚、GEnx 18枚)
ファンを大型化すると、空力効率やディスクへの荷重などを考慮して回転数を落とすというのがこれまで一般的だった。
しかし GE9Xのファン動翼は、最新の空力設計と材料技術によるブレード自体の軽量化によって回転数を下げる必要がなくなった。
ファン径は従来のGE90-115Bより6インチ大型化されたが、回転数は同程度を維持している。
ファンの先端周速度:446m/s(GE90-115B:444m/s)
最初期のCFRP製ファンブレードの製造歩留まりは 30%程度だったが、現在では 97%まで改善されたといわれている。
GE9X ハイブリッド・ファンブレードとは
ファンブレードの全長が長くワイドコードとなったGE9Xは、耐FOD対策として後縁部分のみに衝撃吸収に優れ、変形することで力を分散できる特殊な構造用ガラス繊維複合材(GFRP)を採用した。
CFRP(基材)とGFRP(後縁部分)を組み合わせるというこれまでにない、新しいハイブリット・ファンブレードが誕生した。
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(3段)
ファンブレードが16枚となり軽量で薄く設計できたことで、低圧段の回転数を上げることが可能となり LPC(低圧圧縮機)・LPT(低圧タービン)の効率が改善された。
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(11段)
1~5段はブリスク構造
最新の3次元空力設計による翼型、高圧化に伴う熱効率の改善、ケーシングとのクリアランスなど、GE90/GEnxのHPCを大幅に改良。
HPCシステムだけで燃費は最大 2%改善
高圧圧縮機の圧力比は 27:1
低圧段の効率化と高速化、高圧圧縮機の大幅な改良によって、全体圧力比はこれまでにない最大 60に到達した。
HPC 段数 | HPC 圧力比 | 全体圧力比 | |
GE90-115B | 9段 | 19:1 | 40 |
GEnx | 10段 | 23:1 | 50 |
GE9X | 11段 | 27:1 | 60 |
燃焼室
・アニュラ型(第三世代 TAPS 燃焼器)
CMC:セラミックス・マトリックス複合材(内側 燃焼器ライナー)
ニッケル合金より約 260℃高い温度で使用できるCMCを使うことで、冷却空気を大幅に削減でき燃費効率が向上。また、金属で作るよりも約1/3の重量となっている。
希薄燃焼によってNOxを30%削減
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは 2段タイプ
高圧タービン・シュラウド、高圧タービンノズル(Stg1・2)にCMCを採用。燃焼室と同様に、従来のニッケル耐熱合金より約 260℃高い温度でも使用が可能となり、冷却空気の大幅な削減と軽量化が可能となった。
タービンブレード(動翼)は従来どおりのニッケル基耐熱超合金
タービンディスクは粉末冶金(PM)
低圧タービン(LPT)
・低圧タービンは6段
材質は従来のニッケル耐熱合金からTiAl(チタンアルミナイド)に変更。
3次元空力設計翼
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・GE9Xのギアボックスには、エンジン駆動に必要な各種ポンプ類、機体側(発電機、油圧ポンプ)の補器類が取り付けられている。
機体用の発電容量は、現行のB777の2倍が予定されている。
発電機はメインとなるIDG 1台と、容量 50 kVAのBUG(バックアップ・ジェネレーター)1台
ギアボックスは、高圧軸(N2)とドライブシャフトを介し接続。
IDG | BUG | HYD PUMP | |
N2 100%(9,561 rpm)時 | 7,698 rpm | 23,093 rpm | 3,532 rpm |
重量 | 102 kg | 42 kg | 43 kg |
競合エンジン
ー
GE9X seriesスペック
Dan Nevill from Seattle, WA, United States, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ
GE Aviation | |
型式 | GE9X series |
搭載機種 | Boeing 777X (777-8・777-9) |
形式 | 二軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-3-11-2-6 (Fan-LPC-HPC-HPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [GE9X-105B1A] 110,000 lbf(49,940 kgf) ベースモデル [GE9X-105B1A1] 110,000 lbf(49,940 kgf) 高温低地 推力バンプ [GE9X-105B1A2] 110,000 lbf(49,940 kgf) 高温高地型 推力バンプ 【GE9X-105B1A3】 110,000 lbf(49,940 kgf) A1・A2 複合型 |
Flat Rating Temp | 86℉/30℃ |
バイパス比 | 9.9 |
ファン圧力比(FPR) | ー |
全体圧力比(OPR) | 60 |
ファン空気流入量 | ー |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
回転数 | |
低圧軸(N1) | 2,510 rpm (106.6 %) |
高圧軸(N2) | 11,119 rpm (116.3 %) |
EGT | 1,087 ℃ |
ファン | |
ファン直径 | 3.40 m(134.0 in) |
ファン枚数 | 【GE9X】 16 枚 18枚(GEnx) 22枚(GE90) |
形状 | フォワード・スウェプト ワイドコード ファンブレード |
材質 | 第4世代 炭素繊維複合材 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | 3段 |
高圧軸 | 11段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | アニュラ型 TAPS Ⅲ |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 6段 |
アクセサリ | |
IDG | [N2 100% 9,561 rpm時] 7,698 rpm [HP Rating] GND IDLE : 271 HP TO : 298 HP Cruise : 280 HP |
BUG | [N2 100% 9,561 rpm時] 23,093 rpm |
HYD PUMP | [N2 100% 9,561 rpm時] 3,532 rpm |
材質(Material) | |
ファン動翼 | 基材:第4世代 炭素繊維複合材 後縁部分:構造用ガラス繊維複合材 前縁カバー:スチール系(従来はチタン合金) |
低圧圧縮機(LPC) | ー |
高圧圧縮機(HPC) 動翼 | ー |
燃焼室 | CMC・ニッケル合金 |
高圧タービン・シュラウド | CMC(Stg 1・2) |
高圧タービン 静翼 | CMC(Stg 1・2) |
高圧タービン 動翼 | ニッケル合金(Stg 1・2) |
低圧タービン動翼(LPT) | TiAl |
サイズ | |
型式 | GE9X series |
全長 | 5.69 m |
幅 X 高さ | 幅 4.09 m、高さ 4.15m |
ファン直径 | 3.40 m(134.0 in) |
重量 | 21,230 lb |
推力重量比 | 5.18 |
型式証明 | 2020年 |