飛行機の廃棄パーツ(ジャンク部品)で欲しいものを難なく探し出せるようになるには目利き力が必要です。
日頃の鍛錬でお宝と偽物の判別は1秒以内にできるようになります。
今回は、そんな目利きの鍛え方について紹介します。
例えば、画像のジャンクボックスに無造作に置かれているコンプレッサーブレード。この中には何種類のエンジン部品があると思いますか?
ジャンク会場では一瞬で欲しい機種のブレードを判別する必要があります。
・ジャンク市の会場では、このように無造作に多種多様なブレードが販売されている場合があります。その中から自分が欲しいものを一瞬で見分ける判断力が必要となります。
ジャンク箱のエンジンブレードを分類すると下の画像のようになります。
7タイプのエンジンブレードに分類できる
もくじ
目利きは0.5秒以内に反応する
・どういうことなのかというと、人間の目と凄いもので自分が強く意識している物に対して物凄く反応します。
例えば、発売されたばかりの洋服やバッグ・アクセサリーを買ったとしましょう。それまで街で見かけることもなかったのに、購入した瞬間、同じタイプの同じカラーの物を身につけた人を何度も見かけるような経験はありませんか。
これは、人間は強く意識したものが目に入りやすくなるからです。
逆に、何も意識していなければ対象が目の前を通り過ぎても見えてないという状態もあります。
欲しい商品が目の前にあっても気にしていなければ見えないものです。
滞在時間は5分以内?
・長年、航空ジャンク市に通うベテランの人達は、会場に入っても5分以内に出てきます。
それは、会場に入った瞬間に狙いの品があるかどうか判断できるから。めぼしい物が勝手に目に飛び込んでくるという感覚です。また、それが購入に適した価格なのか判断するまで一品わずか0.5秒。
周囲を見渡し品定めしながら、会場を時計回り・反時計回りと往復して終了。長蛇の列を横目に見ながら会計して帰るといった感じ。まさに風のように獲物を奪い去っていく。
そんな人と好みの対象が同じならもうお手上げです。
この方法は、私が初心者の頃に親切はマニアさんから教えてもらった攻略法です。ジャンク会場で最初に時計回りで回ったら次は反時計回りで見るという方法。最初に見えなかった商品が角度を変えることで見えるという技。これは結構おすすめです。
①:欲しいジャンク品に狙いを絞る
・航空ジャンク品でハズレを引いてしまう最大の敵は、飛行機の部品なら『何でもいい』という適当な気持ちです。
『漠然と何でもいい』と『旅客機の機体部品なら何でもいい』という考えは雲泥の差があります。後者はいつか目的の部品を手にすることができるでしょう。一方、前者は飛行機の部品を手にすることができても、後になって意味の分からない部品をなぜ買ったんだろうという気持ちになることが多いのも事実。
目的を持って購入したものは、機種不明や用途不明部品でも自力で解明しようという探究心が湧いてきます。しかし、適当に買ったものはほとんど放置されゴミになる場合が多々あります。
自分が欲しい対象を決めて購入することが失敗しないコツ。
②:常に資料を集め形状を頭に焼き付ける
・例えば、狙うお宝ジャンク品を『旅客機(B767)のピトー管』と決めたとしましょう。早速、資料の収集開始です。
まずは、月刊エアラインなど航空関係の雑誌(バックナンバー)からピトー管が写っている記事を探しましょう。他にも、専門書のイラスト図面やネット検索などを丹念に探すと必要な情報は結構出てくるものです。
また、様々な機種のピトー管を意識的に撮影するというのも効果的です。これは必ず役に立つときがきます。
ジャンク市では、多種多様なピトー管がすらりと並ぶことがあります。その時に、B767の形状だけしか判別できなければ、他の大型旅客機の希少なピトー管を買い逃がす恐れがあります。
これは結構ある失敗の典型です。
これとは逆に、少しずつ自信が持て資料集めが怠慢になった心の隙に入り込む失敗例を紹介します。
このジャンク品は、B777のピトー管に間違いないとイベントで購入した人がいましたが、帰宅後に調べたらセスナの物だったという嘘のような本当の話もあります。会場ではそれほど混乱します。
小型機ファンにとっては垂涎の物でも、ジェット旅客機好きにとっては何とも言葉にできない複雑な代物となります。
2つの事例を紹介しましたが、私も初心者の頃に別の部品で似たような失敗を何度もしてきました…
例えば下の画像、
元々は【B737-200 JT8Dのファンブレード】が欲しくて探していましたが、何年探しても見つからないと半ば諦めモードになり資料収集も怠慢になるものです。そんな時に失敗しました。
販売者のB737という言葉と、自分の思い込みにより何も疑うことなく購入したファンブレード。何か納得できず月日は流れ、数年後に詳しく調べたら何と【DC-8 JT3Dのファンブレード】とわかり愕然。
JT8Dとはわずか7cmの差、同一メーカーのP&W製なので形状が似ていたという完全な見間違えです。
しかし、失敗したことでより深く探究することができ、慎重に調べる大切さも身に付いたので、結果的には良い勉強材料となり思い出のブレードとなりました。
小さな失敗を糧にすれば大きな間違いを防ぐことができます。
結局、JT8Dエンジンのファンブレードは、さらに数年という時間を要しましたが出会えることができました。
ダグラス DC-8 : P&W JT3D エンジンのファンブレード
BOEING 737-200:P&W JT8D-17 エンジンのファンブレード
③:本物を見に行く
・実物を見るということは目利き力を鍛える上でとても大事なことです。
特に旅客機は、送迎デッキからピトー管などの部品を眺めてもヒゲのようにしか見えませんが、実際のB747のピトー管は全長30cmを超える大きな部品です。
それなら、B777のピトー管も大きいのかというと、意外にも空気抵抗を低減させるために若干小さくなっており、A320などの小型機だとさらに小さな形状となっています。
では、実際に本物を見るにはどうすればいいのか?
ボーイングB747(ジャンボジェット)の実物は航空科学博物館(成田市)に展示されています。
航空科学博物館:屋外展示のBoeing747
また、羽田空港 第1ビル5階にある【ANA ハンガーベイカフェ】にはB777とB787のピトー管、他にB737-500の垂直尾翼に付いているピトー管の3種類が展示されています。
機種の表示はされていませんが、それをどうやって機種特定するかが経験になります。
また、写真や画像から実物の大きさをイメージすることは意外にも難しいものです。ぜひ、ご自身の目で本物を確認することをおススメします。
※ANAハンガーベイカフェは 2020年2月末で閉店したという情報もありますので、ご自身で再度ご確認ください。
ANA ハンガーベイカフェ:Boeing 787 ピトー管
国産旅客機 YS-11が展示されている博物館・空港をまとめて紹介
④:ネットオークションで目を鍛える
・オークションサイトやフリマサイトには、様々な航空ジャンク廃棄品が販売されています。それらの部品を眺めるだけでもかなりの経験値になります。
特に、自分が興味のあるジャンルの部品が出品されたら、購入する気持ちがなくてもほんとにタイトルどおりの商品なのか調べてみましょう。
※但し、余計なトラブルに巻き込まれないよう、間違った情報で出品されていても相手に指摘しないほうが無難です。
あえて間違いを承知でタイトルをつける人も中にはいます。コンプレッサーブレードという正式名よりも、知名度の高いファンブレードやタービンブレードの方が万人受けするので売る方としては当然なのかもしれません。
このようなことは、知識が身に付くのに比例して遭遇する確率も高くなるので、いちいちイライラしたり怒っていては身が持ちません。
目利き力がついてくると、お宝が瞬間的に目に飛び込みますが、偽物や間違いも同時に目に飛び込みます。
【A380のコンプレッサーブレードという偽物】実際はB747のCF6 HPCブレード
⑤:ジャンク市で腕試し
・オークションサイトやネット画像で、航空ジャンク部品の見分けにも慣れてきたら、航空科学博物館(成田市)で毎年3月と9月に開催されるジャンク市に参加して腕試しをしてみましょう。
会場の熱気と3000を越える品数の中からお目当ての部品を探し出す。周囲の雰囲気に翻弄されても実力を発揮できるか試すチャンスです。
狙っていた物を購入できたら更にステップアップを目指し、撃沈ならまた6ヵ月後にリベンジするという目的ができます。
まとめ:失敗は痛手だが肥やしにもなる
・失敗は精神的にも金銭的にもダメージが大きいものです。
しかも、間違った機種をお気に入りの飛行機だと勘違いして何年もコレクションしていた時のショックは結構な痛手です。
管理人もこの経験を何度も味わいました。
そのショックの痛みがわかるので、初心者の方が極力このような失敗に見舞われないように記事にしました。
しかし、時々は失敗することもあるでしょう。この時にどう受け止めて次に進むかが、欲しい物を欲しいままに手に入れる人になれるかの分岐点だと思います。