飛行機に乗っている時に『もし、気分が悪くなりそうになったら、単純ですが意外と知られていない画期的な空酔いを抑える方法』を紹介します。
また、普段から『乗り物酔い』になりやすい人は、飛行機に乗る前に【5つの対策】をしておくと心の不安は軽減されます。
医学的な解説ではありませんが、航空業界では一般的に使われている方法という認識で読んでいただけると良いかと思います。
飛行中に吐き気の前兆:対処法
・この記事を読んでいる方はすでに気分が悪いから検索している人も多いはずなので、対処法から先に解説します。
なぜこの方法がいいのか?酔いの原因などが気になる方は最後までお付き合いください。
①:ヘッドレストに頭をつける(固定する気分で)
・飛行中に揺れを感じたら、シートに深く座り骨盤を立てると同時に背筋を伸ばし、ヘッドレストにしっかり頭をつける。
シートと一体感になるくらいの気持ちで、特に頭をしっかりヘッドレストに固定する。
これだけです。
機体が揺れた時に周囲を見てください。ほとんどの人の頭が左右に揺れているかと思います。これを何十分も続けていると気持ちが悪くなるのも当然の結果となります。
目は薄くあけるくらいがおススメですが、景色を見た方がいいのか、目をつぶる方が楽なのかは個人差があるので体調に合わせて変えてみてください。
※揺れている状態のとき、目は比較的速い動きにもついていけるが、三半規管は反応が遅いことから脳に伝わる信号にズレが生じて【酔う】という状態につながるといわれています。
②:飛行機の動きを心で実況解説する
・姿勢を正し、頭をヘッドレストにしっかり固定したら、次はパイロットの気分で飛行機の動きを心の中で実況中継してみてください。
例えば
このように自分が操縦しているような気分で、飛行状況を心の中で実況中継してみてください。
バカバカしいと思うかもしれませんが、かなり効果があります。
③:別のことに集中し意識を逸らす
・機内では多くの方が暇な時間を過ごしています。そんな時に『揺れる』と人間の意識は急に状況把握を優先にします。
そのような時は行動を変えてみてください。
- 機内オーディオ(考えて聞く落語がおススメ)を聴く。
- 機内モニターやシートモニターで番組を見る
- あえてこの揺れを動画投稿する気持ちでスマホ撮影してみる
とにかく、揺れているという状況よりも脳にとって刺激が大きなことをすることが大切です。
・今まで飛行機酔いに悩まされていた女性が、お母さんになったとたんに悪天候でも酔わなくなったという話があります。それは、機内で泣く赤ちゃんの世話に忙しくて酔いどころじゃなくなったというのが理由。
『揺れを意識』することを優先にしている脳の主作業を鈍感な副作業に移すことが大切です。
・人間の頭は同時に複数のことを処理してるわけではなく、一つ一つの作業を切り替えて処理しています。つまり主作業を優先すると副作業が鈍感になる。
パイロットは操縦が主作業、CAさんも乗客を守るのが主作業なので、揺れている場合でも体の検知機能は副作業と認識し過剰に反応しません。
ところが、乗客の場合は大抵の人が暇をしているかと思います。その状況で『揺れる!』というイベントが発生すれば体はそれを主作業として状況把握に徹することから揺れに弱い人は気分が悪くなると連鎖的に反応します。
ちなみに、パイロットやCAさんも乗客として飛行機を利用する場合は、飛行機酔いに悩まされている人も意外と多いとか。
搭乗前の5つの対策
・飛行機酔いを極力低減させるために、搭乗前にできる対策を5つ紹介します。
①:座席指定は主翼部分(重心付近)
・主翼付近は重心に近いので揺れた時の振動が小さく、上昇・下降の際の姿勢変化も最前方・最後方に比べて動きが穏やかなので『飛行機酔い』になりやすい人におすすめの席となっています。
また、窓側だと外を見て気分もまぎれるので良いのですが、翼のバタつきを見て気分が悪くなるという人もいるので、そのあたりはお好みで。
②:食事は水分補給程度にし目的地まで我慢
・国内線の場合は長くても2~3時間のフライトなので、搭乗前の食事はあえてしないというのもかなり効果的です。長距離国際線の場合は、1回目は軽く食べて到着前の食事は断るといった感じです。
食べ物がお腹になければ例え長時間揺れて気持ち悪くなっても吐くものは無いという心理的な安心感が強力に心に作用し意外と酔わない場合もあります。
ただし、水分だけはしっかり飲みましょう。
・管理人も悪天候が予想され揺れることがわかっているフライトの場合は、あえて食事はせずに到着後、おいしいものを食べることにしています。
③:揺れは離陸後15分・着陸前20分
・酔いが酷くなる原因の一つに、この揺れがいつまで続くのかわからないという見えない不安から助長されるケースもあります。
人間は、ただ意味もわからず我慢してといわれるのと、15分だけ揺れるので我慢してくださいと言われるのでは精神的なストレスは雲泥の差があります。
ゴールがわかればある程度我慢もできますが、何も伝えられなければこの苦痛が永遠にさえ感じるものです。
そんな時はこれを思い出しましょう。
一般的に大きく揺れる時間帯は、離陸後15分・着陸前20分程度と覚えておくと安心です。
(巡航中や赤道付近通過中に揺れた場合は、30分程度で状況は変わると自分で勝手に時間設定するのも効果的です。)
④:条件付きフライトなら変更・乗らない選択もある
・前項と内容が少しかぶりますが、【条件付きフライト】というのをご存じですか。例えば目的地が大雪・台風・強風など悪天候の際に着陸できない場合は出発空港へ引き返すという条件で便を出発させる時です。
このようなフライトでは、目的地に着陸できず何度かやり直したり、天候回復まで上空で30分ほど待機して再度着陸を試すといったことが発生します。
もちろん悪天候なので降下時はかなり揺れます、そして前項の揺れても20分で着陸というのは夢のような話になります。
このような【条件付きフライト】と表示されている際の対応として、大手航空会社の場合は便の繰り上げ・変更・キャンセルなども柔軟に対応する場合があります。
搭乗口の前だからダメだと勝手に思い込み諦めて乗るよりも、まずは各社のカウンターで相談することをおススメします。
楽しみにしていた旅行や用事を安易にキャンセルすることは大変なことではありますが、元々飛べない可能性が高い気象条件ならあえて飛ばない勇気も必要です。
管理人
⑤:比較的揺れに強い飛行機を選ぶ
・路線によっては、プロペラ機とジェット機が混在する便があります。プロペラ機は飛行高度が低いので天候の影響を受けやすく、揺れに対して敏感に反応する飛行特性から、フライト全体を通してほとんど揺れるという場合もあります。
航空券を予約の際に便名の横にある【機種】からジェット機の便を選びましょう。
また、ジェット機でも座席数が多い大型機の方が揺れに対して鈍感なのでおすすめです。(B777やB787・B767といった機材)
マニア的な話をすると、小型機の部類にはいるA320もあまり揺れない機材です。揺れに強いわけではなくフライバイワイヤというコンピューターが1G飛行を保つ制御をしているからです。
A320のFBYシステム1G飛行システムとは何なのか概略を紹介しています。
【飛行機の雑学】B737 VS A320 乗り比べて分かった両者の違い以上で【飛行機酔いの画期的な対処法と対策を紹介】は終わりですが、続けて航空酔いの心理的症状・肉体的症状、なぜ起こるのかについて簡単にまとめましたので興味がある方はそのままお付き合いください。
【後半】航空酔いについて
・飛行機酔いは、ただ気分が悪くなって吐くというだけではありません。その前兆として心理的な症状が現れ、肉体的な症状に変化する場合もあります。
心理的な症状を感じたら早め早めに対応することも大切です。
心理的症状
- 周囲への無関心
- 倦怠感や気分のふさぎ
- 突然起こる不安感・恐怖感・孤立感
- 自発性の減衰など
肉体的症状
- 吐き気・嘔吐
- 顔面蒼白・冷や汗
- 頭痛・眠気・唾液の増加
- 呼吸が荒くなる・眼振など
飛行機酔いになりやすい状況
- 機体の振動や揺れ
- 明暗、気圧の変化、騒音、温度、湿度、臭気
- 座席の位置、前後の間隔、座席幅
- 飛行機に対する苦手意識、あまり利用しない
- 体調、精神的な状態など
飛行機に酔う方法
馬鹿げた話ですが、『酔う方法』がわかれば逆の方法は対策ということになります。
- 飛行機が苦手で嫌い、普段は陸上移動がほとんど
- 搭乗前日にお酒を飲み当日は少し二日酔い気味
- 窓側の座席、暇すぎて何もすることがない
- 上昇旋回中に地上の景色を見る
- 座席周囲に香水や食べ物の臭気が漂う
- 乱気流に入り揺れる(事前に悪天候が予想されている)
精神的・肉体的にも最低の条件で揺れるという条件が重なると非常に高い確率で航空酔いになるといわれています。
この連鎖のどれかを断ち切れば大幅に軽減されることになります。例えば③の窓側に座るなら、離陸から着陸まであえてスマホで景色を撮影するなど頭を忙しくしてみることもおススメです。
乗り物酔いの原因
・最後になぜ乗り物酔いになるのかという話ですが、こちらはWikiの方が詳しく紹介されているので、ここでは別の視点で説明して終わりにしたいと思います。
乗り物酔いとは、動揺や振動によって不快感を感じる動揺病と呼ばれるものです。
動揺と振動の定義について
- 動揺:周期が1秒以上の大きくゆっくりした動き
- 振動:周期が1秒以内の速い動き
人間が揺れや動揺を感じる3つの主な感覚
- 視覚
- 前庭感覚(耳の耳石と三半規管)
- 体性感覚(骨格や筋肉・肌で感じる感覚)
運動を感知する主な器官
- 耳石:前後・左右・上下の直線運動を感知
- 三半規管:前後・左右・上下の回転運動を感知
前述の運動を感知する3つの感覚は、本来はどんな動きでも同じ情報を脳の中枢神経に送らなければいけませんが、それぞれの器官は揺れに対する特性が違います。
目は速い動きにもついていけますが、三半規管は比較的ゆっくり反応するため速い動きににはついていけません。
その結果、揺れや振動がある周期を超えてくると脳に伝わる運動情報にズレが生じ矛盾が起きます。短時間であればすぐに回復しますが、長時間の繰り返しや体調によっては平衡感覚が失調しめまいやフラツキを招く。これが乗り物酔いといわれています。
人間が不快に感じる揺れの周期
- 前後、左右の動きは1秒間に1~2周期
- 上下動は1秒間に4~6周期
・飛行中の機体がこのような周期に入らずとも、頭が左右に揺れるという動きが複合されることで不快な周期に入る場合もあります。このようなことから冒頭で紹介した頭をヘッドレストに固定し座席と一体化することが有効な対策となります。
船の場合でも左右の揺れが1~2周期に入ると乗客が不快に感じ、バス移動の際は上下動が4~6周期に入ると乗り物酔いの確率が高くなります。
乗り心地の良い環境を提供するために、飛行機開発の際は固有振動数を極力ずらす設計にしたり、乱気流を避ける技術開発、A320で紹介したコンピューターで揺れを抑える技術などが進められています。
特にコンピューターで舵面を制御するフライバイワイヤ(FBY)システムは優秀で、人間が揺れや振動を感知する前に舵を動かすことができることから、不快と感じる周期を避けて飛行させる研究開発が進められています。
参考にした文献
・ISO 2631 (振動評価基準)
・飛行機雑学辞典
飛行機雑学辞典:河崎 俊夫 著【飛行機の本 #4】