B757-200 / -300、C-17(グローブマスターⅢ)、C-34A、Il-96Mに搭載されているPW2000エンジン。その概要とスペックについて紹介します。
・P&W JT8DとJT9Dの推力の隙間を埋めるため開発されたエンジン。当初はJT10Dの名称で開発がスタート(1971年)。10年後の1981年に初の試運転に成功、型式はJT10DからPW2000に変更された。
PW2000は推力40,000ポンドクラスの民間機エンジン(PW2037)として、B757-200に採用された。後に、推力を増強した派生型も開発され 757-300、C-17、C-34Aなど多くの機体に搭載されている。
PW2000の概要
USAF, Public domain, ウィキメディア・コモンズ
PW2000シリーズ モデル
・PW2037(B757-200 37,530 lbf)
※1983年12月 FAA認証
・PW2037M(B757-200 37,530 lbf)
※1987年9月 FAA認証
・PW2040(B757PF C-32A 40,900 lbf)
※1991年3月 FAA認証
・F117-PW-100(C-17 40,900 lbf)
※1991年12月 FAA認証
・PW2337(Il-96M 37,530 lbf)
※1992年2月 FAA認証
・PW2043(B757-300/-200/PF 43,000 lbf)
※1995年2月 FAA認証
・PW2040D(B757PF 40,900 lbf)
※2003年10月 FAA認証
・PW2037D(B757-200)
※2003年10月 FAA認証
ファン(FAN)
・ファン直径 78.5 in(1.99 m)、ブレード枚数 36枚
チタン合金製(Ti-6Al-4V)ミッドスパン付ファンブレード
ファンブレードは、派生型 PW2043の開発に併せて1995年に再設計された。初期のブレード形状とは微妙に異なる。
最大出力時のブレード先端(チップ)速度は476m/s
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(4段)、コントロールド・ディフュージョン翼
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(12段)、可変式インレットベーン、1~4段は可変静翼
ケーシング・アクティブ・クリアランス(8~12段)
コントロールド・ディフュージョン翼
最大出力時の全体圧力比は27.4~31.9
圧縮機の高負荷化と低損失を同時に実現するために、翼面の速度分布を最適化した翼型。効率低下を起こさずに、回転速度を25%増速(比較:JT9D)することが可能。また、一般的な動翼と比べて前縁が厚いため異物突入にも強い。
燃焼室
・アニュラ型燃焼器
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは2段構成
1段目動翼 材質:PWA1480(単結晶)、PW2043以降 は第二世代単結晶材のPWA1484に変更されている。
セラミック遮熱コーティング(TBC)
低圧タービン(LPT)
・5段構成、タービンケース・アクティブ・クリアランスコントロール
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・ギアボックスには、エンジン用の各種ポンプ、スターター、機体側(発電機、油圧ポンプ)が装着されている。
高圧軸と接続、機体用発電機(IDG:90 kVA)駆動には最大約175馬力(130 kW)必要。
競合エンジン
RR RB211-535E4
PW2000 seriesスペック
英語版ウィキペディアのYSSYguyさん, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ
Pratt & Whitney | |
型式 | PW2000 series |
搭載機種 | Boeing 757-200/-300/PF C-17、C-32A |
離陸推力 | |
最大推力 | [PW2037] 37,530 lbf(17,038 kgf) [PW2040] 40,900 lbf(18,568 kgf) [PW2043] 43,000 lbf(19,522 kgf) [PW2337] 37,530 lbf(17,038 kgf) [F100-PW-100] 40,900 lbf(18,568 kgf) |
バイパス比 | [PW2037] 5.77 [PW2043] 5.50 |
ファン圧力比(FPR) | [PW2037] 1.65 [PW2043] 1.74 |
全体圧力比(OPR) | 27.4~31.9 |
ファン空気流入量 | [PW2037] 1,340 lb/s (608 kg/s) |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.342(T-O時) |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.563 |
回転数(最大) | |
低圧軸(LP) | [PW2037 ]
4,575 rpm [PW2043] 4,575 rpm |
高圧軸(HP) | [PW2037]
12,250 rpm [PW2043] 12,360 rpm |
EGT | [PW2037]
645 ℃ [PW2043] 655 ℃ |
ファン | |
ファン直径 | 1.99 m(78.5 in) |
ファン枚数 | 36 枚 |
形状 | ミッドスパン・シュラウド付 ファンブレード |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | 4段 |
高圧軸 | 12段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | アニュラ型 |
燃料ノズル | -本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 5段 |
材質(Material) | |
ファン | Ti-6Al-4V |
低圧圧縮機(LPC) | Ti-6Al-4V |
高圧圧縮機(HPC) | ー |
燃焼室 | Nickel alloy |
高圧タービン(HPT) | Stg1:PWA1480/PWA1484 Stg2:PWA1480/PWA1484 |
低圧タービン(LPT) | ー |
サイズ | |
型式 | PW2000 series |
全長 | 3.73 m |
ファン直径 | 1.99 m(78.5 in) |
重量 | 7,300 lb |
推力重量比 | [PW2043] 5.89 |
運用開始 | 1983年 |
※一部のデータはFAAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。