完全なはずの設計、万全を期した整備にもかかわらず機体異常が発生する!
50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。
航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。
全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。
墜落:第3巻 機体異常
第一章:胴体破裂からの奇跡の生還
・1988年4月28日、アロハ航空のボーイング 737-200が巡航飛行中に前部胴体の上半分が吹き飛んだ。客室乗務員1名が機外に吸い出され死亡したが、奇跡的に機体は着陸できた。
原因は胴体外板の接着不良とそれに起因する疲労亀裂、整備ミスだった。
第二章:コロラド・スプリングスの怪
・1991年3月3日、ユナイテッド航空のボーイング 737-200がコロラド・スプリングス空港に着陸する際に突然機体が裏返しになり墜落した。
事故調査の当初は山岳波に巻き込まれたという説が強かったが、決定的な証拠ではないとされていた。
それから3年半後、今度はボーイング 737-300で類似の事故が発生。詳細は第4章で紹介されるが、ラダーのアクチュエーターが操作入力とは逆に動く暴走が原因という説が有力になった。
第三章:失速警報装置が誤作動した
・1992年7月30日、TWAのL-1011 トライスターがジョン・F・ケネディ空港で離陸に失敗。乗客全員が脱出に成功した。
AOAセンサー(翼の迎角)の誤作動により離陸滑走中に失速警報が作動した。機体の速度はV1(離陸決心速度)を超えV2(安全離陸速度)に達していた。
本来であれば警報は誤作動と気付くべきであった。離陸を中断した機体は激しく地面に接地した。最大離陸重量に近い機体には、構造上の設計限度を超えた荷重が加わり右主翼の後桁が損傷し燃料に引火した。
停止した機体は完全に焼けたが、280名の乗客は2分以内に全員脱出し無事だった。
第四章:ボーイング737、方向舵の暴走
・1994年9月8日、USエア 427便のボーイング 737-300がピッツバーグ空港に着陸の際、それまで何も問題のなかった機体が突然左に傾き地面へ激突した。
第二章で紹介したコロラド・スプリングスと類似の墜落事故が発生。
方向舵を駆動するPCU(パワー・コントロール・ユニット)に問題があり、パイロットの入力に対して逆に作動するラダーリバーサルが起きたことが原因とされた。
【どんな人におすすめ?】
・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。
著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。理解しやすいようたとを加えています。
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