ハイテク機でも自然の猛威には勝てない。予測不能な突然の気象変化で、飛行機はあっけなく墜ちる。
50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。
航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。
全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。
もくじ
墜落:第6巻 風と雨の罠
第一章:BOACの707、富士山麓に墜落
・1966年3月5日、BOAC 911便 ボーイング707(G-APFE)が富士山麓を巡航飛行中に墜落した。天候は快晴だったが激しい乱気流に遭遇。激しい突風により瞬間的に7.5gの力が機体に加わり空中分解した。
第二章:ローガン空港の事故、風のシア
・1973年12月17日、イベリア航空 933便 DC-10-30がボストン ローガン空港で着陸に失敗した。向かい風の中、適切な降下角とスピードでアプローチしていた機体。地表に近づくにつれて風向きが変化し急速に追い風となった。
急激な追い風により機体は通常よりも大きく降下、スピードも減少。エンジンのパワーを上げても上昇が間に合わず地面に激突した。
ウインドシアの存在が初めて明らかになった航空機事故となった。
第三章:離着陸機の後流で墜とされた
・1979年1月19日、ビジネスジェットのリアジェット25Dがカウンティ空港に着陸失敗。着陸の直前、同じ滑走路からはDC-9が離陸していた。
DC-9が離陸後、15~16秒経過した後にリアジェットは滑走路末端に到達したが、DC-9の後流渦に巻き込まれ回復操作ができず着陸失敗。
第四章:小さな爆発|マイクロバースト
・1982年7月9日、パンナム 759便 ボーイング727がニューオーリンズ空港を離陸した直後に墜落した。
低層ウインドシアの警報は通報されていた。向かい風に向かって離陸上昇を開始したが、マイクロバーストが作り出したウインドシアに遭遇。急激な向かい風の減少と追い風に変化したことで、機体は対気速度が減少し下降した。
離陸初期段階という対応が困難な状況での遭遇に、機体は上昇することができず樹木に激突した。
第五章:ロッキードL-1011 晴天乱気流に突入
・1983年11月24日、エアカナダ965便 L-1011 トライスターが巡航中に激しいタービュランスに遭遇。機体には最大マイナス1.042gの垂直加速度が加わった。これにより機内のミールカートは天井を突き破り、乗客3名・客室乗務員1名が重傷を負った。
機体は積乱雲の頂(かなとこ雲)を通過したと推測された。当時の気象レーダーでは、かなとこ雲が感知できなかっただろうとしている。
第六章:マイクロバーストに遭遇
・1994年7月2日、USエア1016便 DC-9-30がシャーロット国際空港に着陸失敗。
機体はマイクロバーストが予想される雷雨の中に進入。ウインドシアに遭遇したが乗務員の認識が遅かった。回復操作をするも上昇することができず地面に激突した。
【どんな人におすすめ?】
・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。
著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。
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