Airbus A330用に開発されたPW4000-100エンジン。その概要とスペックについて紹介します。
・P&W JT9D(JT9D-7R4)の後継機・換装用として開発がスタートしたPW4000エンジンは、ファン径によって3タイプ(-94、-100、-112)がラインナップされている。
1984年4月:-94シリーズの試験運転が成功。
1987年6月20日:パンナム A310-300に搭載されたPW4152が最初の型式として商業運航に入った。
1991年12月:A330用 -100シリーズの開発がスタート。-94シリーズのファン径を100インチに大型化、低圧段(LPC及びLPT)を1段追加するなどの改良が加えられた。
※PW4000シリーズは、旧型のJT9Dと比較して部品数を50%削減、寿命と信頼性の向上、燃費の改善、メンテナンスや修理工程をJT9Dと共通化するなど様々な改良が加えられた。
PW4000-100の概要
Kentaro Iemoto from Tokyo, Japan, CC BY-SA 2.0, ウィキメディア・コモンズ
PW4000-100シリーズ モデル
・PW4164(A330-321 64,500 lbf)
・PW4168(A330-322 68,600 lbf)
※1994年5月 EASA認証
・PW4168A(A330-223/-323 68,600 lbf)
※1998年6月 EASA認証
・PW4164C(64,500 lbf)
・PW4164C/B(68,600 lbf)
・PW4164-1D(64,500 lbf)
・PW4164C-1D(64,500 lbf)
・PW4168-1D(68,600 lbf)
・PW4168A-1D(68,600 lbf)
・PW4170(A330F 70,000 lbf)
※2009年5月 EASA認証
・PW4168Aは推力増強型(高温高地用)として開発された型式。
2008年以降は、性能改善プログラム”Advantage70”が適用され燃焼室をTALONⅡ、高圧タービンの改良、FADECのソフト変更などが行われた。
・PW4170はPW4168Aをベースに2%程度推力を増強したA330F用の型式。
高圧圧縮機やシールの改良を含む”Advantage70”の適用、燃費効率が向上しEGTマージンが増加した
ファン(FAN)
・ファン直径99.8 in(2.53m)、ブレード枚数 34枚
チタン合金製(Ti-6Al-4V)ミッドスパン付ファンブレード
PW4000-94シリーズのファンを再設計。さらに幅広(ワイドコード化)となりブレード枚数は38枚(-94シリーズ)から34枚へと減少した。
最大出力時のブレード先端(チップ)速度は477m/s(-94シリーズは497m/s)
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(5段)、コントロールド・ディフュージョン翼
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(11段)、1~4段は可変静翼、
コントロールド・ディフュージョン翼
最大出力時の全体圧力比は32.0~35.4
圧縮機の高負荷化と低損失を同時に実現するために、翼面の速度分布を最適化した翼型。効率低下を起こさずに、回転速度を25%増速(比較:JT9D)することが可能。また、一般的な動翼と比べて前縁が厚いため異物突入にも強い。
燃焼室
・アニュラ型燃焼器(TALONⅠ)、2008年以降はTALONⅡ
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは2段構成 単結晶合金
第一段タービン翼材質:PWA1484
第ニ段タービン翼材質:PWA1480→PWA1484
低圧タービン(LPT)
・5段構成、タービンケース・アクティブ・クリアランスコントロール
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・ギアボックスには、エンジン用の各種ポンプ、スターター、機体側(発電機、油圧ポンプ)が装着されている。
高圧軸と接続、機体用発電機(IDG:90 kVA)駆動には最大約175馬力(130 kW)必要。
競合エンジン
PW4000-100 seriesスペック
Sean D Silva (GFDL 1.2 または GFDL 1.2), ウィキメディア・コモンズ
Pratt & Whitney | |
型式 | PW4000-100 series |
搭載機種 | Airbus A330-200/-300/F |
形式 | 二軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-5-11-2-5 (Fan-LPC-HPC-HPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [PW4164] 64,500 lbf(29,283 kgf) [PW4168] 68,600 lbf(31,144 kgf) [PW4168A] 68,600 lbf(31,144 kgf) [PW4170] 70,000 lbf(31,780 kgf) |
バイパス比 | 5.1 |
ファン圧力比(FPR) | 1.75 |
全体圧力比(OPR) | 32.0~35.4 |
ファン空気流入量 | ー |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.348(T-O時) |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
- |
回転数(最大) | |
低圧軸(LP) | 3,600 rpm (FLT IDLE 736 rpm) |
高圧軸(HP) | 10,450 rpm (FLT and GND IDLE 5,860 rpm) |
EGT | 645 ℃ |
ファン | |
ファン直径 | 2.535 m(99.8 in) |
ファン枚数 | 34 枚 |
形状 | ミッドスパン・シュラウド付 ファンブレード |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | 5段 |
高圧軸 | 11段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | アニュラ型 (TALONⅠ,Ⅱ) |
燃料ノズル | 24本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 5段 |
材質(Material) | |
ファン | Ti-6Al-4V |
低圧圧縮機(LPC) | Ti-6Al-4V |
高圧圧縮機(HPC) | Ti-6Al-4V・Nickel Alloy |
燃焼室 | Nickel Alloy |
高圧タービン(HPT) | Stg1:PWA1484 Stg2:PWA1480→PWA1484 |
低圧タービン(LPT) | Nickel Alloy |
サイズ | |
型式 | PW4000-100 series |
全長 | 4.14 m |
ファン直径 | 2.535 m(99.8 in) |
重量 | 12,480 lb |
推力重量比 | [PW4168] 5.50 |
運用開始 | 1994年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。