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大型旅客機には小さな風力発電機がある!|その重要な役目とは!(A350・B787・B777)

ラムエアタービンとは

最新鋭 エアバスA350やB787にも装備されている小さなプロペラ風力発電機!

・大型旅客機は、RAT(Ram Air Turbine)と呼ばれる風力発電システムによって、万一全エンジン停止など緊急時にも飛行制御が維持できるようになっています。

ボーイング 777の場合、空中で全エンジン停止及びAPUが作動せずに全ての電力及び油圧が喪失すると、胴体内に収納されたRATが自動的に展開され操縦系統や最低限の計器・無線機に供給されます。

 

航空資料館

B777は全5台の発電機で最大400 kVAの電力供給が可能。全喪失に備え、RATは7.5 kVAの電力と油圧が供給可能。ちなみに、一般家庭は一軒当たり2~3 kVA(目安)の消費電力です。

RAT(Ram Air Tuebine)の役目

757 ram air turbineSwampfoot, Public domain, 

RATは小さなプロペラ風力発電システムですが、その能力は馬鹿にできないほど高性能。

巨大な機体に対しておもちゃのように見える小さな風力発電機ですが、飛行速度によって発電周波数が変動しないよう可変ピッチプロペラによって自動制御する機構や、油圧ポンプがコンパクトにまとめられている。緊急時に最も頼りになる装置です。

 

B777型機のRATの特徴

  • 可変ピッチプロペラ(直径:約1m
  • 発電容量 7.5 kVA
  • 3相交流 AC 115 (相電圧) / 200 (線間電圧)V、 周波数 400 Hz
  • 油圧ポンプ搭載(センター:Center system)に供給
  • 最低飛行速度 115 kt以上より動作
  • 操縦系統(フライバイワイヤ)、スタンバイ計器・無線に十分な電力

 

RATはどこに収納されているのか

・通常、RATは胴体内に収納され緊急時のみ展開するため見ることはできませんが、飛行機撮影などで機体を見上げる機会があれば、収納している場所を見つけることができます。

RATの収納場所は、パネルに赤枠でマーキングされています。

 

BOEING 787

ボーイング 787:RATは右主脚格納部 後方フェアリング 赤枠内に収納されている。

BOEING 777

ボーイング777:ボーイング系のRATは共通して右主脚後方フェアリング部 (B767も同様)

AIRBUS A350

Airbus A350-900 XWB Airbus Industries (AIB) MSN 001 - F-WXWB (10223079236)Laurent ERRERA from L’Union, France, CC BY-SA 2.0

B787のRATが展開している動画

電力の全喪失(RATの使用)は確率的にほぼない

・現在の旅客機のシステムは、全て2重3重のシステムになっているのでRATが展開するという状態はなかなかありません。では、どのような状態になるとRATが展開するのか。

 

【RATの展開条件(B777の内容を一部抜粋)】

  • 全てのエンジンが停止したとき
  • 一方のエンジンが停止、片方のエンジンは発電機が故障
  • 2エンジン(IDG X 2、BU GEN X 2)APU(GEN X 1)5つ全ての発電機が故障
  • 2系統(L,R)の電気母線が全て動作不良
  • 3系統(L,C,R)全ての油圧系統が動作不良(油圧ポンプ 8個)

・展開条件のどれかに当てはまると、直ちにRATが自動的に展開されます。(条件は他にも様々あります)

航空機の部品は、1つ1つ全て厳密に管理され点検や交換が行われています。

B777の場合、エンジンが飛行中に停止する確率は 10万時間に1回以下といわれています。

たとえ、エンジンが1基停止しても複数のバックアップシステムがある現代の旅客機。RATが展開する確率は理論的にはほぼ無いとされている。

逆に、RATが展開している時は大変なことが起きているか、テストフライト等で展開しているかのどちらかなのかもしれない…

 

おまけ:B777の電気システム

・冒頭から主にB777の電気系統について紹介していますが、B777にはどのような発電機が装備され、どれくらいの容量があるのか。

その詳細について、興味のある方は参考にしてみてください。


左エンジン

IDG(主発電機)120 kVA
(3相交流 AC 115 (相電圧) / 200 (線間電圧)V、 周波数 400 Hz)

BU GEN(バックアップ発電機20 kVA
(AC 360 V、周波数 957~1806 Hz ⇒ BU用コンバーターでAC115V 400Hzに変換)

PMG(バックアップ発電機に同軸で駆動)FBW用バックアップ
(三相AC 154 V、周波数 1435~2708 Hz ⇒ FBW用コンバーターでDC 28Vに変換)

右エンジン

・IDG(主発電機)120 kVA
(3相交流 AC 115 (相電圧) / 200 (線間電圧)V、 周波数 400 Hz)

BU GEN(バックアップ発電機)20 kVA
(AC 360 V、周波数 957~1806 Hz ⇒ BU用コンバーターでAC115V 400Hzに変換)

PMG(バックアップ発電機に同軸で駆動)FBW用バックアップ
(三相AC 154 V、周波数 1435~2708 Hz ⇒ FBW用コンバーターでDC 28Vに変換)

APU(地上・空中で使用可能)

IDG(主発電機)120 kVA
(3相交流 AC 115 (相電圧) / 200 (線間電圧)V、 周波数 400 Hz)

RAT(Ram Air Turbine)

風力発電機 7.5 kVA
(3相交流 AC 115 (相電圧) / 200 (線間電圧)V、 周波数 400 Hz)

メインバッテリー

・ニッケル・カドミウム電池 DC 28V 容量 47AH

 

※一般家庭が消費する電力は平均2~3 kVA(目安)です。120 kVAの発電機は単純に40~60軒分の電気を賄うことができます。

・飛行制御にFBW(フライバイワイヤ)が使われているB777は、電気系統が幾重にもバックアップされ強固なシステムを構築しています。

また、FBWの動作に必要な油圧系統や飛行制御コンピューターについても、全て2重3重となっています。


コメント:B737のRATはどこ?

匿名希望さん:738のRATはどこにありますか?

回答:B737にはRATはありません。

B737には、緊急時に舵面(エルロンやエレベーターなど)を動かすための機械的な接続が残されているため、全ての油圧系統が喪失しても操縦は可能です。

通常時のフライトコントロールは全て油圧を使用しています。

 

補足

・B737の油圧系統は3系統(SYS A・SYS B・スタンバイ)があり、どちらからの1系統でフライトコントロールは可能です。

SYS A(左エンジン側)SYS B(右エンジン側)には、エンジン駆動ポンプ(EDP)電気モータ駆動ポンプ(EMDP)がそれぞれあり、どちらか1つが故障しても油圧は維持できます。

・全エンジンが停止した場合でも、風車状態で回転している動力を利用してEDPが油圧を維持できる場合もあります。

・電気駆動による油圧ポンプ(EMDP)は、APUからの電力で作動させることも可能。

また、B737には機械的な操縦システムも残されているので、油圧が喪失しても最低限の操縦は可能な設計となっている。

 

・操縦系統がフライバイワイヤ(FBW)のA320には、RATが装備されています。

A320 RAT PROBE TEST (5559714268)Curimedia, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

※ここまでの内容は、あくまで乗客として飛行機を楽しむための豆知識ですので(作動条件・厳密な表記・細かな内容)は省略していますことをご了承ください。

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