ボーイング 787用のエンジン、Rolls Royce Trent 1000の概要とスペックについて紹介します。
Rolls Royce Trent 1000 の概要
・次世代の高効率・長距離中型機旅客機というコンセプトで開発された ボーイング 787型機。
機体とエンジンの改良で燃費を約20%向上(B767と比較)させることを目標に設計された。
機体側の空力改善や軽量化だけでなく、従来のエンジン抽気(圧縮空気)で作動する機器のほとんどが電気へと変更されたことで、ノーブリード・エンジンともいわれている。
Trent 1000シリーズ モデル
・Trent 1000-A:69,194 lbf(307.8 kN)
・Trent 1000-C:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-D:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-E:59,631 lbf(265.3 kN)
・Trent 1000-G:72,066 lbf(320.6 kN)
・Trent 1000-H:63,897 lbf(284.2 kN)
※2007年8月 EASA認証
・Trent 1000-A2:69,194 lbf(307.8 kN)
・Trent 1000-C2:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-D2:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-E2:59,631 lbf(265.3 kN)
・Trent 1000-G2:72,066 lbf(320.6 kN)
・Trent 1000-H2:63,897 lbf(284.2 kN)
・Trent 1000-J2:78,129 lbf(347.5 kN)
・Trent 1000-K2:78,129 lbf(347.5 kN)
・Trent 1000-L2:74,511 lbf(331.4 kN)
※2013年11月 EASA認証
・Trent 1000-AE:69,194 lbf(307.8 kN)
・Trent 1000-CE:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-AE2:69,194 lbf(307.8 kN)
・Trent 1000-CE2:69,194 lbf(307.8 kN)
※2015年05月 EASA認証
・Trent 1000-AE3:69,194 lbf(307.8 kN)
・Trent 1000-CE3:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-D3:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-G3:72,066 lbf(320.6 kN)
・Trent 1000-H3:63,897 lbf(284.2 kN)
・Trent 1000-J3:78,129 lbf(347.5 kN)
・Trent 1000-K3:78,129 lbf(347.5 kN)
・Trent 1000-L3:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-M3:79,728 lbf(354.6 kN)
・Trent 1000-N3:79,728 lbf(354.6 kN)
・Trent 1000-P3:74,511 lbf(331.4 kN)
・Trent 1000-Q3:78,129 lbf(347.5 kN)
・Trent 1000-R3:81,028 lbf(360.4 kN)
※2016年07月 EASA認証
Edward Orde, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
シリーズ | Trent 1000-A | -C | -D | -E |
離陸推力 | 69,194 lbf | 74,511 lbf | 74,511 lbf | 59,631 lbf |
対象モデル | Trent 1000-A Trent 1000-AE Trent 1000-AE2 Trent 1000-A2 Trent 1000-AE3 |
Trent 1000-C Trent 1000-CE Trent 1000-CE2 Trent 1000-C2 Trent 1000-CE3 |
Trent 1000-D Trent 1000-D2 Trent 1000-D3 |
Trent 1000-E Trent 1000-E2 |
シリーズ | Trent 1000-G | -H | -J | -K |
離陸推力 | 72,066 lbf | 63,897 lbf | 78,129 lbf | 78,129 lbf |
対象モデル | Trent 1000-G Trent 1000-G2 Trent 1000-G3 |
Trent 1000-H Trent 1000-H2 Trent 1000-H3 |
Trent 1000-J2 Trent 1000-J3 |
Trent 1000-K2 Trent 1000-K3 |
シリーズ | Trent 1000-L | -M | -N | -P |
離陸推力 | 74,511 lbf | 79,728 lbf | 79,728 lbf | 74,511 lbf |
対象モデル | Trent 1000-L2 Trent 1000-L3 |
Trent 1000-M3 | Trent 1000-N3 | Trent 1000-P3 |
シリーズ | Trent 1000-Q | -R | – | – |
離陸推力 | 78,129 lbf | 81,028 lbf | – | – |
対象モデル | Trent 1000-Q3 | Trent 1000-R3 | – | – |
ファン(FAN)
・ファン直径112in(2.84m)
ファンブレード枚数:20枚
中空フォワード・スウェプト・ファンブレード
この形状は、高回転時に発生する衝撃波が隣接するブレードに与える影響を抑えると同時に、ブレードチップ側の失速を防止。効率改善とファン騒音を低減。
Trentシリーズとしては、初のバイパス比が10を超える高バイパスエンジン。
ファンを取り付けるディスクの直径が Trent 900よりも小さくなったことから、ブレード単体の大きさとしては Trent 900よりも大きなサイズとなっている。
中圧圧縮機(IPC)
・軸流式圧縮機(8段)
可変インレットガイドベーン、1段・2段は可変静翼。
全体圧力比(ORP)を上げて効率化させるために、Trent 800・900・1000と世代ごとに中圧軸の回転数は増速している。
Trent500・900のコア技術を適用。
3次元空力設計翼が採用。(HPCにも同技術が適用されている)
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(6段)
3次元空力設計による動・静翼の最適化
全体圧力比は離陸時で47.7、上昇時には50に達し、圧縮機出口温度は680℃を軽く超える。
Trent 900に続き、Trent 1000にもカウンターローテーション(同軸逆回転)が採用されている。
エンジン後方から見て、高圧軸は時計回り、ファン及び中圧軸は反時計回りとなったことで、コア内部の空力効率が大幅に改善された。また、部品数の削減やジャイロモーメントの低減などのメリットがある。
燃焼室
・Trent 500・900の技術が適用されたシングル アニュラ型燃焼器
燃料ノズル18本
材質:ニッケル基耐熱合金
燃焼室内壁はフロートウォール(耐熱タイル)
低NOx・低公害型の燃焼室。
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは単段タイプ
3次元空力設計翼
動翼先端のシュラウド冷却を強化
新世代のセラミック遮熱コーティング(TBC)
ピーク時の燃焼ガス温度は、タービン動翼のメタル溶融温度よりも500℃以上高いという話もある。
中圧タービン(IPT)
・単段タイプ
3次元設計による翼型、新世代のコーティング
Trent 800(7,500rpm)と比較して、1,400 rpm高く増速した中圧軸は最大 8,900 rpmで回転する。
低圧タービン(LPT)
・RRのエンジンでは初となる6段構成
High-Lift翼(高揚力化翼型設計)が適用された低圧タービン動翼
ノズルや動翼の数を最適化、従来型より削減。
現段階のLPTは6段構成だが、将来的にギヤードファン化(GTF)することで6段は不要となる。GTFによる大幅な軽量化が期待されている。
排気ノズル
・ディフューザー型ノズル
逆推力装置
・油圧式 カスケード タイプ
燃料制御
・FADEC(ヘルスモニタリング、マネージメント機能が追加)
アクセサリー
・機体側が抽気(圧縮空気)を極力使わないノーブリード機というコンセプトで開発。電気需要が従来機よりも増えたことから、250 kVAのスターター・ジェネレーターが2基装備されている。
これまで、アクセサリー(補器類)は高圧軸によって駆動されていたが、Trent 1000では中圧軸の駆動に変更された。
エンジンスタート時は、流体クラッチを介しIP段とHP段をスタータージェネレーターで同時に回転させることで素早い始動が可能となった。
競合エンジン
Rolls Royce Trent 1000 スペック
Rolls-Royce(ロールスロイス) | |
型式 | Trent 1000 Series |
搭載機種 | Boeing 787-8/-9/-10 |
形式 | 3軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-8-6-1-1-6 (Fan-IPC-HPC-HPT-IPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [1000-A]:69,194 lbf(307.8 kN) [1000-C]:74,511 lbf(331.4 kN) [1000-D]:74,511 lbf(331.4 kN) [1000-E]:59,631 lbf(265.3 kN) [1000-G]:72,066 lbf(320.6 kN) [1000-H]:63,897 lbf(284.2 kN) |
バイパス比 | 10.4~11.0 |
ファン圧力比(FPR) | ー |
全体圧力比(OPR) | 47.7 (Take-Off) 50.0 (climb) |
ファン空気流入量 | 2,400~2,670 lb/s (1,089~1,211 kg/s) |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.506 (35,000ft M0.84) |
回転数(100% rpm) | |
ファン(FAN) | 2,683 rpm |
中圧軸(IP) | 8,937 rpm |
高圧軸(HP) | 13,391 rpm |
EGT | 900℃ |
TET | 1,562℃(1,835K) |
ファン | |
ファン直径 | 2.84 m(112 in) |
ファン枚数 | 20 枚 |
形状 | 中空 フォワード・スウェプト型 |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
中圧軸 | 8段 |
高圧軸 | 6段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | シングル アニュラ型 |
燃料ノズル | 18本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 1段 |
中圧段 | 1段 |
低圧段 | 6段 |
サイズ | |
型式 | Trent 1000 Series |
全長 | 3.88 m |
ファン直径 | 2.84 m(112.0 in) |
重量 | 13,288 lb |
推力重量比 | 4.80~5.60 |
運用開始 | 2007年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。