ボーイング B777-200/-300用のエンジン、Rolls Royce Trent 800の概要とスペックについて紹介します。
Rolls Royce Trent 800 の概要
Edwin Leong, CC BY-SA 2.0, ウィキメディア・コモンズ
・20世紀最大の双発ジェット旅客機 トリプルセブン。その原動力となる3社のうちの1社がロールスロイス製エンジン。
1995年に型式承認された RR Trent 800の最大の特徴はその軽さにある。
GE90の重さが約7.5トン、PW4090が約7.4トンという中、Trent 800は約5.9トンという軽量化を達成。この差は、同じ機種でもペイロードや航続距離の違いとなる。
これほどまでに軽く作れた理由の一つが、3軸構造だったから。各シャフトが最適な回転数で運転できることから、圧縮機やタービンといった構成部品がライバル社(2軸構造)と比較して少なかった。
Trent 800シリーズ モデル
・Trent 875:74,600 lbf(331.9 kN)
※1995年1月 EASA認証
・Trent 877:77,200 lbf(343.4 kN)
※1995年1月 EASA認証
・Trent 884:88,950 lbf(377.9 kN)
※1995年1月 EASA認証
・Trent 892:91,600 lbf(407.5 kN)
※1996年11月 EASA認証
・Trent 892B:91,600 lbf(407.5 kN)
※1997年4月 EASA認証
・Trent 895:95,000 lbf(422.6 kN)
※1999年6月 EASA認証
・Trent 884B:88,950 lbf(377.9 kN)
※1999年11月 EASA認証
Cory W. Watts from Madison, Wisconsin, United States of America, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
ファン(FAN)
・26枚の中空ワイドコード・ファンブレード
超靭性加工と拡散接合による製造
中空内部はチタン製ハニカムコアからウォーレン・ガーダー構造に変更
従来のワイドコードと比較して約15%軽量化
ファン径が2.474m(Trent 700)から2.794m(110 in)に大型化
離陸時には 3,300rpmで回転するファンによって、吸入空気量は毎秒1.1トンを超える。
※ファン部の基本構造はTrent 700と同じ。
中圧圧縮機(IPC)
・軸流式圧縮機(8段)
可変インレットガイドベーン、1段・2段は可変静翼。
ファン圧力比とコア流入空気量の増大に伴い、中圧軸の最大回転数を増速。Trent700と比較して +500 rpm(Trent800:7,500rpm)
※IPCの基本構造はTrent 700と同じ。
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(6段)
V2500のHPCがベース
コア空気流量 393 lb/s(最大出力時)
※HPCの基本構造はTrent 700と同じ。
燃焼室
・シングル アニュラ型
燃料ノズル24本
材質:ニッケル基耐熱合金
点火プラグ 2本
低NOx型 燃焼室
内壁セラミック遮熱コーティング、高温化に伴う耐久性の改善
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは単段タイプ
動翼は第二世代 単結晶(CMSX-4)
内部空冷構造翼
翼表面(腹側)の中央フィルム冷却孔を2列に変更
動翼シュラウドの冷却を強化
セラミック遮熱コーティング(TBC)
中圧タービン(IPT)
・単段、無冷却ブレード
第三世代 単結晶 CMSX-10(RR3000)
中圧圧縮機 高負荷化に伴うブレードの耐久性向上。
中圧軸タービン動翼を無冷却にすることで燃費は改善するが、耐熱性でみると高圧軸よりも厳しい。HPT動翼は第二世代に対して、IPT動翼には第三世代の新素材が使われている。
低圧タービン(LPT)
・5段構成、3次元空力設計翼
排気ノズル
・ディフューザー型ノズル
逆推力装置
・油圧式 カスケード タイプ
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・各種ポンプ、機体側(発電機、油圧ポンプ)駆動用ギアボックス、高圧軸と接続、ギアを介し 27,000rpmで入力、出力は2,000~22,000rpm、全補器類の駆動には約671馬力(500kw)必要。
競合エンジン
Rolls Royce Trent 800 スペック
Aero Icarus from Zürich, Switzerland, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
Rolls-Royce(ロールスロイス) | |
型式 | Trent 800 Series |
搭載機種 | B777-200/-200ER/-300 |
形式 | 三軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-8-6-1-1-5 (FAN-IPC-HPC-HPT-IPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [875] : 74,600 lbf(33,868 kgf) [877] : 77,200 lbf(35,049 kgf) [884/884B] : 84,950 lbf(38,567 kgf) [892/892B] : 91,600 lbf(41,586 kgf) [895] : 95,000 lbf(43,130 kgf) |
バイパス比 | 5.8~6.2 |
ファン圧力比(FPR) | 1.81 |
全体圧力比(OPR) | 34.5~41.6 |
ファン空気流入量 | [875] : 2,467 lb/s (1,119 kg/s) [895] : 2,664 lb/s (1,208 kg/s) |
コア空気流入量 | [892] : 388 lb/s (176 kg/s) [895] : 393 lb/s (178 kg/s) |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | 13,500 lbf (6,129 kgf) |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.557 (35,000ft M0.82) |
回転数(100% rpm) | |
ファン(FAN) | 3,300 rpm |
中圧軸(IP) | 7,500 rpm |
高圧軸(HP) | 10,611 rpm |
ファン | |
ファン直径 | 2.79 m(110 in) |
ファン枚数 | 26 枚 |
形状 | 中空(第二世代) ワイドコード |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
中圧軸 | 8段 |
高圧軸 | 6段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | シングル アニュラ型 |
燃料ノズル | 24本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 1段 |
中圧段 | 1段 |
低圧段 | 5段 |
サイズ | |
型式 | Trent 800 Series |
全長 | 4.37 m |
ファン直径 | 2.79 m(110.0 in) |
重量 | 13,400 lb |
推力重量比 | 5.56~7.08 |
運用開始 | 1996年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。