エアバス A380用のエンジン、Rolls Royce Trent 900の概要とスペックについて紹介します。
世界初の総二階建て大型旅客機。その大きさはB747を抜き世界第2位(1位はAn-225)の最大離陸重量 560トン。
その巨体の原動力となるTrent 900には、RB211から培われた頑丈・高効率・軽量な3軸式と、Trent 500及び8104(デモンストレーター)の最新技術が適用されている。
Rolls Royce Trent 900 の概要
Dr Brains, CC0,
Trent 900シリーズ モデル
・Trent 970:75,152 lbf(334.3 kN)
・Trent 970B:78,304 lbf(348.3 kN)
※2004年10月 EASA認証
・Trent 977:80,781 lbf(359.3 kN)
・Trent 977B:83,835 lbf(372.9 kN)
※2004年10月 EASA認証
・Trent 980:84,098 lbf(374.1 kN)
※2004年10月 EASA認証
・Trent 972:76,752 lbf(341.4 kN)
・Trent 972B:80,213 lbf(356.8 kN)
※2005年8月 EASA認証
・Trent 972E:76,752 lbf(341.4 kN)
※2017年4月 EASA認証
ファン(FAN)
・ファン直径116in(2.94m)
ブレード数 24枚
中空フォワード・スウェプト・ワイドコードファンブレード
この形状は、高回転時に発生する衝撃波が隣接するブレードに与える影響を抑えると同時に、ブレードチップ側の失速を防止。効率改善とファン騒音を低減。
中空ブレードは、超靭性加工(SPF)と拡散接合(DB)による製造。中空内部は進化型のウォーレン・ガーダー構造に変更。
中圧圧縮機(IPC)
・軸流式圧縮機(8段)
可変インレットガイドベーン、1段・2段は可変静翼。
Trent 500及び8104(デモンストレーター)のコア技術を適用した、3次元空力設計翼となっている。(HPCにも同技術が適用)
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(6段)
Trentシリーズでは初のカウンターローテーション(同軸逆回転)を採用。
エンジン後方から見て、高圧軸は時計回り、ファン及び中圧軸は反時計回りとなったことで、コア内部の空力効率が大幅に改善された。また、部品数の削減やジャイロモーメントの低減など多くのメリットがある。(コントラ・ローテーションと呼ばれる場合もある)
燃焼室
・Trent 500の技術が適用されたシングル アニュラ型燃焼器
燃料ノズル20本
材質:ニッケル基耐熱合金
点火プラグ 2本
ライナー内側全体に交換可能な遮熱タイル
低NOx型燃焼室
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは単段タイ
、3次元空力設計翼
Trentシリーズ初の時計回り(エンジン後方から見て)の高圧軸
動翼シュラウドの冷却を強化
セラミック遮熱コーティング(TBC)
ピーク時のガス温度はメタルの溶融温度より500℃以上高いとされている。
Trent800(10,600rpm)に対して12,200rpmと高回転化されている。
中圧タービン(IPT)
・単段、従来型と比較して負荷が軽減された中圧タービン動翼。
離陸出力時、Trent 800(7,500rpm)に対して8,300rpmまで増速。
低圧タービン(LPT)
・5段構成
High-Lift翼(高揚力化翼型設計)が適用された低圧タービン動翼
IHIによる製造、ノズルや動翼の数を削減
排気ノズル
・ディフューザー型ノズル
逆推力装置
・油圧式 カスケード タイプ
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・オイルポンプ出力 50psi、可変周波数発電機(VFG)
競合エンジン
・エンジンアライアンス GP7000シリーズ
Rolls Royce Trent 900 スペック
Julian Herzog, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
Rolls-Royce(ロールスロイス) | |
型式 | Trent 900 Series |
搭載機種 | Airbus A380 |
形式 | 3軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-8-6-1-1-5 (Fan-IPC-HPC-HPT-IPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [970] :75,152 lbf(334.3 kN) [970B]:78,304 lbf(348.3 kN) [972E]:76,752 lbf(341.4 kN) [977] :80,781 lbf(359.3 kN) [977B]:83,835 lbf(372.9 kN) [980] :84,098 lbf(374.1 kN) [972] :76,752 lbf(341.4 kN) [972B]:80,213 lbf(356.8 kN) |
バイパス比 | 8.5~8.7 |
ファン圧力比(FPR) | ー |
全体圧力比(OPR) | 38.5~41.1 |
ファン空気流入量 | 2,655~2,745 lb/s (1,204~1,245 kg/s) |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | 14,700 lbf (6,673 kgf) |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.518 (35,000ft M0.85) |
回転数(最大離陸出力時) | |
ファン(FAN) | 2,900 rpm |
中圧軸(IP) | 8,300 rpm |
高圧軸(HP) | 12,,200 rpm |
ファン | |
ファン直径 | 2.94 m(116 in) |
ファン枚数 | 24 枚 |
形状 | 中空 フォワード・スウェプト型 |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
中圧軸 | 8段 |
高圧軸 | 6段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | シングル アニュラ型 |
燃料ノズル | 20本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 1段 |
中圧段 | 1段 |
低圧段 | 5段 |
サイズ | |
型式 | Trent 900 Series |
全長 | 4.54 m |
ファン直径 | 2.94 m(116.0 in) |
重量 | 14,190 lb |
推力重量比 | 5.29~5.92 |
運用開始 | 2004年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。