エアバス A350用のエンジン、Rolls Royce Trent XWBの概要とスペックについて紹介します。
JAL A350-800には搭載されているTrent XWB-75エンジン
Rolls Royce Trent XWB の概要
Matti Blume, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ
・エアバスA350は、A330 / A340の後継機として開発された新世代の機体。
搭載されているXWBエンジンは、Trent 1000の技術をベースに開発された推力 75,000~97,000 lbfクラスの派生型で、トレントシリーズでは最大の出力を誇る。
型式承認は2013年2月、推力的にみるとB777に搭載されているPW4074~4090クラスを守備範囲とする新型エンジン。トレントシリーズでは初となる中圧2段式タービン(従来の中圧タービンは単段式)に変更されたことで、より効率的な運転が可能となった。
Trent XWBシリーズ モデル
・Trent XWB-75:74,200 lbf(330.0 kN)
・Trent XWB-79:78,900 lbf(351.0 kN)
・Trent XWB-79B:78,900 lbf(351.0 kN)
・Trent XWB-84:84,200 lbf(374.5 kN)
※2013年2月 EASA認証
・Trent XWB-97:97,000 lbf(431.5 kN)
※2017年8月 EASA認証
ファン(FAN)
・ファン直径118 in(3.00m)
22枚の中空フォワード・スウェプト形 ファンブレード
バイパス比は9.6、Trent 1000と比べると若干低く設定された。
ファンブレードは、高回転時に発生する衝撃波が隣接するブレードに与える影響を抑えると同時に、ブレードチップ側の失速を防止する形状となっている。また、効率の改善とファン騒音も低減されている。
中圧圧縮機(IPC)
・軸流式圧縮機(8段)
可変インレットガイドベーン、1段・2段は可変静翼、ブリスク構造
全体圧力比の高圧化
機体への抽気(ブリードエア)など
中圧圧縮機(IPC)の高負荷化により、中圧タービン(IPT)に要求される駆動力も増加したことから、トレントシリーズでは初となる2段構成のIPTとなった。
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(6段)
3次元空力設計より翼型を最適化
全体圧力比は最大出力時 50に達する。
Trent 1000と同様、カウンターローテーション(同軸逆回転)が採用されている。
エンジン後方から見て、高圧軸は時計回り、ファン及び中圧軸は反時計回りとなったことで、コア内部の空力効率が大幅に改善された。また、部品数の削減やジャイロモーメントの低減などのメリットがある。
燃焼室
・Trent 1000の新しい技術が適用されたシングル アニュラ型燃焼器
燃料ノズル18本
材質:ニッケル基耐熱合金
点火プラグ 2本
内壁はフロートウォール構造
低NOx・低公害型の燃焼室
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは単段
3次元空力設計翼
回転方向は時計回り(エンジン後方から見て)
新しい世代の単結晶材料
動翼シュラウドの冷却を強化
最新のセラミック遮熱コーティング(TBC)
中圧タービン(IPT)
・Trentシリーズ初となる2段構成
回転方向は時計回り(エンジン後方から見て)
中圧圧縮機の高圧化・高負荷化にる駆動力の増大
3次元空力設計による翼型
新世代のコーティング
中圧軸は100%回転時 Trent 1000(8,937 rpm)に対して、8,200rpmに変更された。
従来はシリーズ毎に、中圧段の回転数は常に増速傾向にあった。しかし、XWBでは回転数が落とされた。
低圧タービン(LPT)
・High-Lift翼(高揚力化翼型設計)が適用された低圧タービン動翼
ノズルや動翼の数を削減
回転方向は反時計回り(エンジン後方から見て)
84,000から97,000 lbfへの推力増強は、ファンと直結しているLPTの回転数を 6%増速することで対応。
逆推力装置
・油圧式 カスケード タイプ
燃料制御
・FADEC(ヘルスモニタリング、マネージメント機能が追加)
アクセサリー
・これまで、アクセサリー(補器類)は高圧軸によって駆動されていたが、Trent 1000以降~XWBでも中圧軸からの駆動に変更された。
競合エンジン
・なし
Rolls Royce Trent XWB スペック
Rolls-Royce(ロールスロイス) | |
型式 | Trent XWB Series |
搭載機種 | Airbus A350-900/1000 |
形式 | 3軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-8-6-1-2-6 (Fan-IPC-HPC-HPT-IPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [XWB-75] 74,200 lbf(330.0 kN) [XWB-79] 78,900 lbf(351.0 kN) [XWB-79B] 78,900 lbf(351.0 kN) [XWB-84] 84,200 lbf(374.5 kN) (JAL A350-900) [XWB-97] 97,000 lbf(431.5 kN) |
バイパス比 | 9.6 |
ファン圧力比(FPR) | ー |
全体圧力比(OPR) | 50.0 |
ファン空気流入量 | ー |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.475 (ー) |
回転数(離陸出力時) | [XWB-84] A350-900 |
ファン(FAN) | 2,649 rpm (98.1%) |
中圧軸(IP) | 8,200 rpm (100%) |
高圧軸(HP) | 12,272 rpm (97.4%) |
TGT(EGT) | 900 ℃ (LPT NGV Stg1) |
回転数(離陸出力時) | [XWB-97] A350-1000 |
ファン(FAN) | 2,816 rpm (104.3%) |
中圧軸(IP) | 8,413 rpm (102.6%) |
高圧軸(HP) | 12,575 rpm (99.8%) |
TGT(EGT) | 900 ℃ (LPT NGV Stg1) |
ファン | |
ファン直径 | 3.00 m(118 in) |
ファン枚数 | 22 枚 |
形状 | 中空(拡散接合) フォワード・スウェプト型 |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
中圧軸 | 8段 |
高圧軸 | 6段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | シングル アニュラ型 |
燃料ノズル | 18本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 1段 |
中圧段 | 2段 |
低圧段 | 6段 |
サイズ | |
型式 | Trent XWB Series |
全長 | 4.48 m |
ファン直径 | 3.00 m(118.0 in) |
重量 | 16,028 lb |
推力重量比 | 4.68~6.06 |
運用開始 | 2013年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。