一機100億円以上といわれる旅客機、その航空エンジンもまた1台数十億円と大変高価な機械。驚くことにその内部にあるタービンブレードと呼ばれる部品は金よりも高価らしい…
今回は、世界最大の双発旅客機 B777-300ERに搭載されている世界最大クラスの推力を発生させるGE90-115Bエンジンについて調査。
前回好評だった【旅客機エンジン ファンブレードの値段】に続き、みんなが気になるあの値段!を紹介。
<資産運用の王道>2018年の金相場はいくら?
『資産運用は純金積立てで!』という言葉が一時期流行ったほど金は資産運用の王道ですね。
金取引は1グラムいくら?という表現で毎日価格が変動していて、経済ニュースなどでも今日の金の値段は?という内容を聞いたことがあるかと思います。
では一体、金1グラムの価値はどれくらい変動しているのか。
2018年11月現在は1グラム¥4,800前後で推移しているようです。
この金1グラムの値段とタービンブレードに何の関係性があるのかこれから説明します。
航空エンジンのタービンブレードとは?
轟音を発しながら巨体を軽々と離陸させるジェットエンジンは見ていてとても圧巻ですね。
その推進力の8割を発生させる大部分は前面にある巨大なファンブレードですが、そのファンを駆動するのがタービンブレードと呼ばれる部品。
- 高圧タービン(High pressure turbine)-高圧圧縮機を駆動
- 低圧タービン(Low pressure turbine)-ファン・低圧圧縮機を駆動
特徴
①:燃料を燃やしたガスのエネルギーを回転力に変換する部品。
②:常に高温の燃焼ガスに晒されると同時に巨大な遠心力にも耐える必要がある。
③:離陸時にはブレードの融点以上の超高温に晒される
④:約10,000時間(太平洋横断800回)以上の長寿命が要求される。
世界最大のモンスターエンジン GE90-115B
世界最大の推力を誇るGE90-115Bエンジンの凄さについて。
大量高速輸送時代の幕開けとなったB747 ジャンボジェット機をご存知ですか。4つのジェットエンジンが搭載されている大型旅客機で、過去にはJALやANAでも活躍していた機体。政府専用機(2018年現在)としても活躍しています。
ANA:Boeing 747-400D
その巨大な旅客機を、もし2つのエンジンで飛ばせたらスゴイと思いませんか。
それを可能にするほど大きな推進力を発生させるのがこのGE90-115Bエンジンなのです。
型式 | GE90-115B | CF6-80C2 |
推力 | 115,300 lbf (52t) | 52,000~63,000lbf (27t) |
ファン直径 | 3.25m | 2.36m |
搭載機種 | B777-300ER | B747-400、B767-300、A300-600R他 |
エンジン価格 | 約20億円 | 約8~10億円 |
ANA:Boeing 777-300ER (GE90-115B)
単結晶タービンブレード<最先端素材・構造・加工>
B747 ジャンボジェットに匹敵する重さの旅客機を2つのエンジンで軽々と浮かせるほど強大な推進力を発生させるGE90-115Bエンジン。
その性能の全てのカギを握るまさに心臓部の心臓と呼ばれる部品が、この高圧1段目のタービンブレードで、エンジンメーカー各社がその時代の最高技術を全力で投入するといわれています。
・ニッケル基耐熱超合金という材料
・タービン翼の内部は中空、鋳造時に単結晶なるよう特殊な製法を使用
・ドリル加工では不可能とされる1mm以下の無数の冷却孔
一般的な旅客機エンジンのタービン部分は、複数段(高圧2段+低圧4~7段)で構成されており、燃焼室から出た高温・高圧の燃焼ガスはタービンに回転力を与えながら徐々に温度と圧力が下がり出口から排気されます。
(このタービンに吹き付ける燃焼ガスの温度が高ければ高いほど効率が良くなり、燃費性能の良いエンジンとなります)
その結果、一段目の高圧タービンに吹き付ける燃焼ガスはブレード材料の融点を遥かにこえる温度に晒されると同時に毎分1万回転以上という巨大な遠心力に耐える性能が要求されます。
低圧タービン以降は徐々に燃焼ガスの温度も下がるので、材質の軽量化や効率的な翼型、無冷却ブレードの開発に重点が置かれます。
この重さ350グラムの手のひらに乗る小さなタービンブレード、気になる1枚のお値段は。
なんと200万円!
グラム当たり¥5,714ということで金の価値(2018/11/2 時点)を遥かに超えてます。このブレードが約80枚ほど取り付けられて高圧1段目を構成しています。
航空資料館
絶対に壊れていけない究極の部品
1枚およそ200万円という高圧1段目のタービンブレード。
『絶対に壊れてはいけない究極の部品』の形
ここが一般工業製品とは違う大きな点。
エンジンメーカーとしては安全性を最優先に利益も追求しなければ成り立たない。しかしコスト削減は即性能低下という相反する世界。
では、どこで利益を出すのか?
このような重要パーツは使用時間や飛行回数というタイムリミットが必ずある。修理は軽微なものなら数回程度は許されるが、規定値は厳密に規定されておりいずれ全交換することになる。
ここに巨額のビジネスポイントがあるらしい・・・
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ヤフオクにこんな値段でありましたよ。
驚きしかありません。
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/j623712626