ハイテク機がもたらす新しいタイプの墜落事故が起きている!
50年間に起きた航空機事故を徹底分析。難解な事故報告書を一般の方でも理解しやすいよう丁寧に解説。
航空機事故の研究している方の入門書としておすすめです。
全10巻で構成されている『墜落シリーズ』、航空機事故を10種類のジャンルに分類。1巻につき4~6の事故事例について概要と原因を説明。著者自身からの論評はあえて控えたとのこと。
もくじ
墜落:第2巻 新システムの悪夢
第一章:コメット、洋上で連続行方不明
・1952年5月2日、世界初のジェット旅客機コメットが就航。成層圏を飛ぶ新しい旅客機が就航後1年間に4回という謎の墜落事故を起こした。
その後も事故は止まることなく5回目の事故が発生。50か所の改修が行われ飛行を再開したが16日後に再び墜落事故を起こした。
この一連の事故は、金属疲労と四角の窓に原因があった。その悲劇が二度と起きないよう徹底的に対策された。角のない楕円形の窓、フェールセーフ構造など。
それらは現在の旅客機にも教訓として活かされている。
第二章:ディープ・ストール|沈黙の降下
・現在のT字尾翼を持つ旅客機ではコンピュータ制御によりほとんど発生しないといわれる尾翼の失速(ディープ・ストール)は死語に近い用語として扱われているが、過去にはディープ・ストールによる墜落事故が多発していた。
1963年10月22日、BAC111と呼ばれるT字尾翼のジェット旅客機(G-ASHG)がイギリス ウィルトシャーで試験飛行中に墜落。
高迎角飛行時の失速試験中、通常であればパイロットの操作で回復するはずの失速から脱出することができず、140秒後に地面へ叩きつけられた。
第三章:エバーグレース湿地帯への墜落
・1972年12月29日、イースタン・エアラインズのL-1011 トライスターがマイアミ国際空港に着陸態勢に入ったとき、ノーズギア(前脚)が正常に降りたことを示すグリーンライトが点灯しなかった。
パイロットは着陸復行し対処することに。コックピット内の全員がノーズギアに意識が向き機体の状態を把握していなかった。その結果、機体はエバーグレース湿地帯に墜落。
事故調査の結果、ノーズギアは正常に降りていたがグリーンライトの電球が玉切れだったという驚愕の事実が判明する。
第四章:設計ミス、熱意のない改修、そして大事故
・1972年6月12日、アメリカン・エアラインズのDC-10の貨物室ドアが吹き飛び急減圧が発生した。操縦系統も多大な損傷を受けたが、機体はかろうじて着陸に成功した。
事故調査をしたNTSBは、FAAに対して当該貨物ドアの改修を勧告したが、FAAは法的拘束力のないSB(サービス・ブリティン)で行うことを決定。ダグラス社はSBを発行しユーザーに対して改修通報を実施。
1年9か月後、トルコ航空で類似の貨物室ドアの吹き飛びが発生。機体は立て直すことができず墜落した。
法的拘束力のある耐空性改善命令(AD)が発行されていれば防げたかもしれない。
第五章:操作ミスを誘発した制御システム
・現在は抜群の信頼性で多くのエアラインで採用されているエアバス A320型機。そのハイテク機も、アナログからデジタルへの移行期のパイロットには多くの混乱を招いていた。
1990年2月14日、インディアン航空のA320がインド・バンガロール空港手前のゴルフ場に墜落した。
原因は、オートパイロットの高度指定を誤って降下率を指定したパイロットの操作ミスとされた。
しかし、このセレクターノブは高度/降下率の指定を1つで機能を併用しており、モード表示を確認する必要があり誤認するような設計だった。
第六章:MD-11 軽すぎた操縦力
・1992年12月7日、中華航空のMD-11が巡航中にタービュランスに遭遇。オートパイロットが外れ操縦困難な状態に入った。回復までの3分間の間に4回失速し、水平尾翼左右の昇降舵を破損した。
通常の飛行機は、主翼が上向きの揚力、水平尾翼が若干の下向き揚力でバランスを保っていることから、姿勢が変化しても自然と機体は水平を保つように設計されている。
しかし、MD-11は燃費効率を優先し水平尾翼も上向きの揚力を発生させる設計になっていた。このことから少しの操作でも機体の上下姿勢は大きく変化するバランスの悪い特性の機体となってしまった。
それに加えてパイロットの操縦に誘起する自励振動(PIO)が加わったことで機体は上下加速度が最大2Gを超え、乗客2名が死亡、乗員・乗客60名が重症、96名が軽傷を負った。
【どんな人におすすめ?】
・この本は、事故事例を報告書に基づき紹介した内容です。概要や事故原因、管制官との無線交信、ボイスレコーダーの内容を時系列に紹介。
著者は自身の論評をあえて控え、一般の方が理解しやすい容易な文章(図)で事実を淡々と解説しています。理解しやすいようたとを加えています。
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