CFMインターナショナルのベストセラーエンジン CFM56は、ボーイング737やエアバスA320に搭載されているターボファンエンジン。
1974年に開発され累計20,000基以上、総飛行時間は5億時間にせまる勢いの高信頼性エンジンだが、意外にも”CFM56”という名前の由来についてはあまり知られていない。
ネット上には詳しい説明がなかったので(2019/10/29 現在)調べてみました。同じような疑問をお持ちの方はこの記事で解決します。
CFMインターナショナルの誕生
・CFMインターナショナルの誕生は、GE(アメリカ)とスネクマ(フランス)の合弁事業として50:50の出資・・・という内容はWikiなどに詳しくありますのでここでは省略します。
CFM56の名前の由来について紹介します。
スネクマ M56
Arpingstone [Public domain], ウィキメディア・コモンズ
・Snecma(スネクマ)はフランスの国営会社で、1961年に超音速旅客機コンコルド用のオリンパス593 エンジンをイギリスのブリストルシドレー(後のロールスロイス)と共同事業として開発。
また、1967年にはロールスロイスと共同で推力(3~4トンクラス)の旅客機市場を狙ったM45Hエンジンを開発した。
翌年の1968年から、スネクマの技術開発チームは次世代の双発旅客機(150席クラス)に必要なエンジンの研究を進めた。その研究の目的は、1970年後半から1980年にかけて訪れるであろう B727やB737の退役・機材更新を狙ったものだった。
これらの機材には、P&W JT8Dと呼ばれる低バイパス比(1:1)のターボファンエンジンが搭載されていたが、時代と共に騒音と燃費の悪さが問題視されるようになっていた。
その状況を注視していたスネクマは、今後「推力10トンクラスのターボファン・エンジン」が必ず必要になると確信。設計目標値を、これまでのJT8Dと比較して燃費 20%削減・騒音 12%低下となる高バイパス比(5:1)ターボファンエンジンの開発を始めた。
プロジェクトナンバーは ”56” 番
そして、スネクマエンジンの伝統でもあった頭文字に”M”(Mの意味はフランス語で”Moteur”【英語:Engine】)をつけM56エンジンとして開発が進められた。
General Electric TF39/CF6シリーズ
英語版ウィキペディアのBabyNuke [Public domain], ウィキメディア・コモンズ
・その一方、アメリカのエンジンメーカー General Electric(GE)は、アメリカ空軍向けの次世代大型貨物機CX-Xに搭載する大型ターボファンエンジンの開発プロジェクトを1962年から開始し、C-5ギャラクシー輸送機用の大型ターボファンエンジンTF39を完成させた。
この TF39 をベースに、ファンの大型化とコアを改良することで、大型民間旅客機が必要としていた推力 40,000~50,000lb(20~25トンクラス)に転用できるという研究結果からCF6の開発をスタート。このエンジンは、A300、DC-10、B747クラシックなどに搭載された。
その当時、GEは小型のCF34(4~6トンクラス)エンジンと20トンクラスのCF6で民間機の分野を展開しており、中間サイズの10トンクラスは空白地帯だった。
その10トンクラスの旅客機市場で独占状態だったのが、ライバル企業であるP&WのJT8Dエンジンで、GEはこのクラスのエンジン開発を模索していた。
CFM56という名は意外に単純明快だった
・スネクマ(Snecma)は開発を順調に進め、M56の大型ファンを駆動するのに必要なコアを共同開発するパートナー企業を探していた。
オリンパス593やM45Hを共同開発したロールロイス(RR)との開発計画もあったが、3軸エンジンにこだわるRRのコア・エンジンと、スネクマのM56のファン部分がマッチしないことから断念。また、P&Wは旧式のJT8Dを改良(リ・ファンエンジン)にすることで計画を進めていた。
ここからあの有名な話が登場する。
アメリカ空軍 戦略爆撃機 B-1Bに搭載されているGE製のF101エンジンのコアが、スネクマの開発していたM56の大型ファンとうまく適合することがわかり、両社は利害関係が一致したことで共同事業【10トンクラスのターボファンエンジン】の開発を進めるため合弁会社 CFMインターナショナルを誕生させた。
GEはF101とCF6-50のコア技術を活用することから、CF6(Commercial Fan)の頭文字 ”CF” を、スネクマはプロジェクトの名称 ”M56” を組み合わせ CFM56 という型式名が誕生した。
CFM56(Commercial Fan Mouter project 56)
これまで、CFM56という型式名の由来について色々な憶測や噂が飛び交っていたが調べてみると意外にも単純だった。
その他のエンジン型式名の由来は
エンジン型式 | 略語 |
GE CJ805 | CJ(Commercial Jet)*1 |
GE TF39 | Turbo Fan 目標推力 39,000 lb *2 |
GE CF6-50 | Commercial Fan 50,000 lb *3 |
CFM56 | Commercial Fan Mouter (Project 56) *4 |
参考文献
CFM The Power of flight
・各エンジン型式の略は ページ7(*1)、ページ14(*2)、 ページ18(*3)、 ページ91(*4)を参考にしています。