ボーイング 777-200 / -200ER用のエンジン、GE90シリーズ(-76B~-94B)の概要とスペックについて紹介します。
※B777-300ER/-200LR用は、GE90-115Bシリーズを参照ください。
GE90シリーズ(-76B~-94B) の概要
ウィキペディア Steff, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ
・GE90シリーズは、世界最大の双発旅客機 B777用に開発されたエンジン。
1990年に開発がスタートし、1995年11月 GE90-77Bを搭載したBAのB777-200が就航開始した。当初の推力は 81,000 lbfだったGE90だが、2年後の1997年には推力を増大させた-90B(94,000 lbf)が登場。
さらに3年後の2000年には、高圧圧縮機の再設計やタービンの改良を含むPIP(性能向上パッケージ)を適用した-94Bがラインナップに加わった。
GE90シリーズ 一覧
・GE90-76B:81,070 lbf
・GE90-85B:81,700 lbf
※1995年11月 EASA認証
・GE90-77B:88,870 lbf
・GE90-90B:94,000 lbf
※1997年1月 EASA認証
・GE90-94B:97,300 lbf
※2000年11月 EASA認証
ファン(FAN)
・ファン直径123 in(3.12m)
22枚のCFRP製 ストレートタイプ・ワイドコード・ ファンブレード
金属色に見える前縁以外にも、先端・後縁の外周にチタン合金の補強材が貼り付けられている。
最大出力時 、ブレード先端速度は402m/sに達し、1秒間に1,467 Kgの空気(25mプール 2.1杯分)を一度に吸い込む
・GE90-94Bのファンブレード
- ブレード全長:47.6インチ(121 ㎝)
- 最大翼幅:19.1インチ(48.5 cm)
- 重量(1枚):15.15 kg
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(3段)
大口径ファンと同軸で回転するLPCは、低回転でも高効率を達成する翼型が開発された。
低ノイズ型
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(10段)
可変インレットガイドベーン、1段~4段は可変静翼
十分なストールマージンの確保
可変静翼の追従性向上
最大回転時の全体圧力比は40
-90B以降はPIP(性能向上パッケージ)を適用した3次元空力設計よる高効率翼型を採用
(PIP=Performance improvement package)
燃焼室
・デュアル アニュラ型(DAC)燃焼器
低環境負荷タイプ
NOx排出量 40%削減(従来型のCF6と比べた場合)
高空再着火性向上、燃焼の安定性
GE90-94Bの場合、最大離陸出力時 1秒間に約 3.7リットル、巡航時 1秒間に約 1.35リットルの燃料を燃焼室内で燃やしている。
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは2段タイプ
3次元空力設計翼
第二世代 単結晶合金材(N5)
セラミック遮熱コーティング
腹側全面にフィルム冷却孔
高圧タービンディスクは粉末冶金による製造(第二世代 焼結合金材 Rene R88DT)
低圧タービン(LPT)
・6段構成
低ソリディティ翼(低回転高トルク型)
1段目動翼は単結晶(N5)
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・ギアボックスには、エンジン用の各種ポンプ、スターター、機体側(発電機、油圧ポンプ)が装着されている。
高圧軸と接続、全補機類の駆動には約700馬力(522 kW)必要。
- 機体用発電機(IDG:120 KVA)駆動に181馬力
- 機体用油圧ポンプ 63馬力
- バックアップ発電機(20KVA)43馬力
競合エンジン
GE90 series (-76B~-94B) スペック
General Electric(GE Aviation) | |
型式 | GE90 series |
搭載機種 | Boeing 777-200/-200ER |
形式 | 二軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-3-10-2-6 (Fan-LPC-HPC-HPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [-76B] 81,070 lbf(36,805 kgf) [-77B] 81,700 lbf(37,091 kgf) [-85B] 88,870 lbf(40,347 kgf) [-90B] 94,000 lbf(42,676 kgf) [-94B] 97,300 lbf(44,174 kgf) |
バイパス比 | 8.4 |
ファン圧力比(FPR) | 1.58 |
全体圧力比(OPR) | 39.6 |
ファン空気流入量 | [-94B] 3,234 lb/s (1,467 kg/s) |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
ー |
巡航推力 | |
巡航推力 | 18,400 lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.552 (35,000ft M0.8) |
回転数(最大出力時) | |
低圧軸(LP) | 2,465 rpm (109.0%) ※2,261 rpm (100.0%) |
高圧軸(HP) | 10,918 rpm (117.0%) ※9,332 rpm (100.0%) |
EGT | 1,030℃ ガス温度はLPT手前での測定値 |
ファン | |
ファン直径 | 3.12 m(123 in) |
ファン枚数 | 22 枚 |
形状 | ストレートタイプ・ワイドコードファン |
材質 | CFRP(炭素繊維複合材) 補強材:チタン合金(前縁・先端・後縁) |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | 3段 |
高圧軸 | 10段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | デュアル アニュラ型 |
燃料ノズル | 30本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 6段 |
サイズ | |
型式 | GE90 series |
全長 | 7.29 m |
ファン直径 | 3.12 m(123.0 in) |
重量 | 17,250 lb |
推力重量比 | [-94B] 5.64 |
運用開始 | 1995年 |
※一部のデータはEASAから
・GE90の構造はCF6と似ていると思われている方も多いが、コアエンジンのエアフロー図を見ると CFM56との共通部分が多い。
例えば、高圧圧縮機(翼型・流路勾配)、燃焼室(CFM56-5/-7で開発されたダブルアニュラ型の拡大版に近い形状)、低圧タービン(動翼形状・流路勾配)など、エンジン断面図だけで見比べても CFM56に近い形状ということがわかる。また材質こそ違うが、ワイドコード・ファンの動翼形状などファンセクションにも共通部分がある。 高圧タービン部に関しては、CF6-80C2/-80E1をベースにした改良型となっている。2段構成、単結晶材(N5)、三次元設計翼、ディスクへの取り付け方法など数えるときりがない。