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旅客機のジェットエンジン始動(スタート)は空気の力!?

車のエンジンはキーをひねると2,3秒で始動しますが、大型旅客機の巨大なエンジンはどのようにスタートさせるのか?

今回はそんな疑問を解決する内容です。

自動車と旅客機の始動方法は違う

 

自動車には、エンジンをスタートさせるために電動モーター(スターター)が装備されています。

キーをひねるとスターターが回り、調子のいいエンジンだと1,2秒でスタートします。バスやトラックなど大型のディーゼルエンジンでも2,3秒といった世界。

旅客機の大型ジェットエンジンの始動方法

ちょっとした風でも「クルクル」回る風車のように見えるジェットエンジンは、簡単にスタートできそうな感じもしますが実は結構大きな力が必要。

例えば、B767やB747ジャンボジェットに搭載されているCF6エンジンの場合、前面の巨大なファンは最高3600回転(毎分)、内部の高圧圧縮機は最高10000回転(毎分)まで達します。

スターターは、0の状態からエンジンが燃料を燃やし自立運転できる回転数(約6000回転)まで内部の高圧圧縮機を回す必要があります。

もし、この仕事を自動車と同じ電動スターターにさせると、かなり大型で重い大出力モーターが必要になることから、旅客機では高圧空気で作動する軽量で小型・大きな出力が出せるエアーモーター(ニューマチック・スターター)が使用されています。

ヘリやプロペラ機、APUなど小型ガスタービンエンジンは、電動スターターが装備されています。

 

最新B787は電動化
就航当時は電気飛行機と呼ばれたB787、従来機の油圧や圧縮空気が必要な装備品をほとんど電動化したことでこう呼ばれた。エンジンスタートも電動化。ニューマチック・スターターのかわりに大出力で軽量なモータージェネレーター(発電と始動機能)が開発され、これまで常識だった圧縮空気方式での始動方法は廃止された。

 

ニューマチック・スターターとは

ニューマチック・スターター(空気モーター)がどんな物かというと、歯医者さんのあの『キィーン』と唸る歯を削るドリル。あれが空気モーターです。

圧縮した空気を手元の小さなドリル内に導きタービンを高速回転させるという仕組み。これを大きくして高出力にしたのが旅客機のエンジンに使用されるニューマチック・スターター。

ジャンボジェット用でも重さは15kg程度、同一出力の電気モーターと比べて格段に小型で軽いのがメリット。

ただ、歯医者さんのエアーモーターは先端のドリルを回転させるだけですが、ジェットエンジンの始動にはエンジン内部の高圧圧縮機を毎分5000回転程度までアシストする必要があるので、エアーモーターに供給する圧縮空気が大量に必要となります。

それがどれくらいかというと、圧力が3.5気圧(車のタイヤ圧を少し高くしたくらい)、供給流量 1分間に240kg(1mX1mX1mの箱の空気が約1.2kg)の圧縮空気が必要。この量は、1分間に縦横1mの立方体の箱が200個くらいとなります。

ニューマチック・スターターは小型・軽量だけど大量の圧縮空気が必要という装置です。

圧縮空気をどうやって作るのか?

旅客機の場合は基本的に3つの方法があります。

①:APU(補助動力装置)と呼ばれる機体のお尻部分にある小型のガスタービンエンジンで圧縮空気を作り供給する。

②:エンジンが一つでも運転していれば、そのエンジンの圧縮空気をもらい別のエンジンを始動する。

③:ニューマチック車と呼ばれる圧縮空気を作り出す特殊な車両を用意して機体に供給する。

①のAPUと呼ばれる補助エンジンは、これ1台で駐機中の機体に必要な電源・圧縮空気(エアコンもニューマチックで作動)を供給することができます。地上の設備が不要ということで離島など多くの空港で使用されています。

ということで、日常的に見かける空港での光景は①番が圧倒的に多いかと思います。主エンジンが始動した後はAPUは不要となり停止します。

旅客機の補助動力装置(APU)

APIC-APU-for-A320-family
Wiki:APIC-APU-for-A320-family.jpg

ジェットエンジンを始動する動画

実際にジェットエンジンを始動させる動画がこちら。(APUからの圧縮空気でエンジンを始動させます)

エンジンスタートの流れ

①:APUはエアコンに圧縮空気を供給中。

②:(0:25)エンジン始動の為、エアコンを一旦停止。

③:(0:30)エアーの流れがエンジン側へ切り替わると「シュー」という音と共にスターターが起動、エンジンがゆっくり回ります。

④:(0:58)高圧圧縮機が2000回転くらいに達した頃、「ボッ~」と燃料が燃焼する音がします。スターターはまだアシスト中。

⑤:(1:25)エンジンが自立運転可能な状態となりスターターはオフ。右エンジンの始動が完了。引き続き、同様に左エンジンを始動。

【驚愕】B737のマニュアルスタート

・スタートバルブが故障した際に、手動でバルブを開閉しエンジンをスタートさせる方法。見ているだけでヒヤヒヤ、少し怖いですね。

エンジンに描かれている赤ラインより内側に入らなければ、ファンに吸い込まれることはないようです。

まとめ

飛行機に乗っていると、いつの間にか始動しているジェットエンジン。しかし、内部では様々な装置が活躍してエンジンはスタートしています。

半世紀以上前に開発された『APUとニューマチックスターター』は最高の組合わせとして現在でも多くの旅客機で使用されています。

しかし、時代は電動化の波が押し寄せています。補足:B787でも紹介しましたが、いずれはB787以外の他の機体にも電動スターターが使用されるでしょう。

 

参考にした本

ジャンボジェットはどう飛ぶか:佐貫 亦男 著【おすすめ飛行機の本 #1】 航空工学講座7 タービンエンジン:日本航空技術協会【飛行機の本 #37】 空を飛ぶはなし(飛行機のメカ):日本航空技術協会【飛行機の本 #35】 『BOEING 787 DREAMLINER』好きにおすすめの洋書【飛行機の本 #53】
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