B767やB747-400、KC-46A、MD-11やA300など多くの機体に搭載されているPW4000-94エンジン。その概要とスペックについて紹介します。
PW4000-94の概要
Paul Spijkers (GFDL 1.2, GFDL または GFDL), ウィキメディア・コモンズ
・PW4000-94シリーズは、P&W JT9D(JT9D-7R4)の後継機・換装用として開発がスタート、1984年4月 試験運転に成功。
1987年6月20日、パンナム A310-300に搭載されたPW4152が最初の型式として商業運航に入った。
この新世代ターボファン・エンジンは、旧型のJT9Dと比較して部品数を50%削減、寿命と信頼性の向上、燃費の改善、メンテナンスや修理工程をJT9Dと共通化するなど様々な改良が加えられた。
また、環境性能や騒音に関しても21世紀の新時代に対応できるよう設計された。
PW4000-94シリーズ モデル
・PW4152(A310-300)
・PW4156(A300-600)
※1987年5月 EASA認証
・PW4158(A300-600R)
・PW4060(B767-200/-200ER/-300F/-300ER)
・PW4160
・PW4460(MD-11)
※1988年11月 EASA認証
・PW4060A
※1991年3月 EASA認証
・PW4156A
※1991年12月 EASA認証
・PW4462(MD-11)
※1995年6月 EASA認証
・PW4056(B747-400 Series、B767 Series)
※1997年7月 EASA認証
・PW4062(B767 Series)
※1998年11月 EASA認証
・PW4060C
・PW4062A(KC-767)
※2012年10月 EASA認証
ファン(FAN)
・ファン直径93.6 in(2.37m)、ブレード枚数 38枚
チタン合金製(Ti-6Al-4V)ミッドスパン付ファンブレード
JT9D-7Rシリーズから再設計されたファンは、従来タイプよりも幅広となりブレード枚数が40枚(JT9D-7A:44枚)から38枚へと減少した。
最大出力時のブレード先端(チップ)速度は497m/s
他社は比較的低速の430m/s前後のチップ速度を採用しているが、PW4000-94は高速タイプとなっている。この周速度は、戦闘機用のF100エンジンにも採用されている。
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(4段)
・コントロールド・ディフュージョン翼
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(11段)
・1~4段は可変静翼
・コントロールド・ディフュージョン翼
・最大出力時の全体圧力比は32.0
圧縮機の高負荷化と低損失を同時に実現するために、翼面の速度分布を最適化した翼型。効率低下を起こさずに、回転速度を25%増速(比較:JT9D)することが可能。また、一般的な動翼と比べて前縁が厚いため異物突入にも強い。
PW4000-94 HPC Blade Stg1
燃焼室
・アニュラ型燃焼器(TALON Ⅰ)
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは2段構成
・ブレード数を削減する目的でタービン動翼を大型化
・1段目タービン翼のブレード枚数は 60枚(JT9D:118枚)
・材質:PWA1480(単結晶)
※2000年以降 は第二世代単結晶材のPWA1484に変更。
・セラミック遮熱コーティング(TBC)
・2段目動翼は材質が何度か変更されている。
初期 PWA1422(一方向合金)、PWA1480 (第一世代単結晶合金)、PWA1484(第二世代単結晶合金)と改良されている。
低圧タービン(LPT)
・4段構成
・タービンケース・アクティブ・クリアランスコントロール
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・ギアボックスには、エンジン用の各種ポンプ、スターター、機体側(発電機、油圧ポンプ)が装着されている。
高圧軸と接続、機体用発電機(IDG:90 kVA)駆動には最大約175馬力(130 kW)必要。
競合エンジン
PW4000-94 seriesスペック
André Du-pont (Mexico Air Spotters) (GFDL 1.2 または GFDL 1.2), ウィキメディア・コモンズ
Pratt & Whitney | |
型式 | PW4000-94 series |
搭載機種 | Boeing 747-400,767 Series,MD-11,KC-46A Airbus A310-300,A300-600R |
形式 | 二軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 1-4-11-2-4 (Fan-LPC-HPC-HPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [PW4152] 52,000 lbf(23,608 kgf) [PW4158] 58,000 lbf(26,332 kgf) [PW4056] 56,000 lbf(25,424 kgf) [PW4060] 60,000 lbf(27,240 kgf) [PW4460] 60,000 lbf(27,240 kgf) [PW4062A] 62,000 lbf(28,148 kgf) |
バイパス比 | [PW4152] 5.1 [PW4062] 4.8 |
ファン圧力比(FPR) | [PW4152] 1.65 [PW4062] 1.76 |
全体圧力比(OPR) | 27.5~32.0 |
ファン空気流入量 | [PW4056] 1,705 lb/s (773 kg/s) |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.359(T-O時) |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
- |
回転数(最大) | [PW4056,PW4060] |
低圧軸(LP) | 4,012 rpm (FLT IDLE 720 rpm) |
高圧軸(HP) | 10,450 rpm |
EGT | [All models]
(PW4050,4052,4152を除く) 654 ℃ |
ファン | |
ファン直径 | 2.37 m(93.6 in) |
ファン枚数 | 38 枚 |
形状 | ミッドスパン・シュラウド付 ファンブレード |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | 4段 |
高圧軸 | 11段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | アニュラ型 (TALON Ⅰ) |
燃料ノズル | 24本 |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 4段 |
材質(Material) | |
ファン | Ti-6Al-4V |
低圧圧縮機(LPC) | Ti-6Al-4V |
高圧圧縮機(HPC) | Ti-6Al-4V・Nickel Alloy |
燃焼室 | Nickel Alloy |
高圧タービン(HPT) | Stg1:PWA1480・PWA1484 Stg2:PWA1422・PWA1480・PWA1484 |
低圧タービン(LPT) | Nickel Alloy |
サイズ | |
型式 | PW4000-94 series |
全長 | 3.37 m |
ファン直径 | 2.377 m(93.6 in) |
重量 | 9,420 lb |
推力重量比 | [PW4062] 6.58 |
運用開始 | 1987年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。