BOEING 777-200/-300 用に開発された PW4000-112(PW4074・PW4077・PW4084・PW4090)エンジン。その概要とスペックについて紹介します。
・B777シリーズは、航空会社が3社のエンジン(PW・GE・RR)から選べる選択制となっている。
ここでは、PWが開発したPW4000-112シリーズについて紹介します。GE90シリーズ・RR Trent 800 については下段の「競合エンジン」のリンクから確認できます。
PW4000-112の概要
退役したJALのB777-300型機(500席)。搭載された PW4090エンジンは最大 90,000 lbf(B747のエンジン 2基分)の推力を1台で発生する。
PW4000 エンジンは、ファン径によって3タイプ(-94シリーズ・-100シリーズ・-112シリーズ)がラインナップされている。
B777用に開発された-112シリーズは、推力74,000~90,000 lbf級を達成するために巨大なワイドコード・ファンに換装、エンジン内部コアの燃焼室やタービンも大幅に改良が加えられている。
そのシリーズの中でも PW4098は、100,000 lbf級を狙うためにPW4090に改良が加えられた。その潜在能力は高く、試験エンジン PW40102では102,000 lbfの推力を発生。(さらに、115,000 lbfまで増強したPW40115も計画されていた)
この試験エンジンは、B777-300ERのエンジン選定を狙ったものだったが、結局はGE90-115B(推力 115,000 lbf)の単独採用となった。
PW4000-112シリーズ モデル
・PW4074(B777-200 74,000 lbf)
・PW4077(B777-200 77,000 lbf)
・PW4084(B777-200 84,600 lbf)
※1994年4月 FAA認証
・PW4090(B777-200ER/-300 90,000 lbf)
※1996年8月 FAA認証
・PW4098(B777-300 98,000 lbf)
※1998年3月 FAA認証
PW4098は、PW4084/4090のファン径を0.9インチ大きくし、低圧圧縮機を1段追加した改良バージョン。大韓航空の777-300に搭載されている。
上記ベースモデルの推力減格タイプ・性能改善タイプを含めると、-112シリーズには10タイプがラインナップされている。
・PW4074(4084 推力減格モデル 74,000 lbf)
・PW4074D(4090の推力減格・性能改善モデル)
・PW4077(4084 推力減格モデル 77,000 lbf)
・PW4077D(4090の推力減格・性能改善モデル)
・PW4084(ベースモデル)
・PW4084D(性能改善モデル)
・PW4090(ベースモデル)
・PW4090D(性能改善モデル)
・PW4090-3
・PW4098(4090を改良した推力増強モデル)
ファン(FAN)
Ian Abbott, CC BY-SA 2.0, ウィキメディア・コモンズ
[PW4084・4090] ファン直径112 in(2.84 m)
[PW4098] ファン直径112.9 in(2.86m)
ブレード枚数 22枚
チタン合金製(Ti-6Al-4V)中空ワイドコード・ファンブレード
-112シリーズは4084と4090が共通ファン、4098は再設計したファンが装着されている。
最大出力時のブレード先端(チップ)速度は454m/s(-94シリーズは497m/s)
【-112シリーズ 中空ファンブレードの断面】
National Transportation Safety Board, Public domain, ウィキメディア・コモンズ
低圧圧縮機(LPC)
・軸流式圧縮機(6段)【PW4084/4090】
・軸流式圧縮機(7段)【PW4098】
コントロールド・ディフュージョン翼
高圧圧縮機(HPC)
・軸流式圧縮機(11段)、1~4段は可変静翼
”NASTAR 3D aerodynamics” プログラムを適用し再設計したものに変更されている。
コントロールド・ディフュージョン翼
最大出力時の全体圧力比は34.2~42.8
圧縮機の高負荷化と低損失を同時に実現するために、翼面の速度分布を最適化した翼型。効率低下を起こさずに、回転速度を25%増速(比較:JT9D)することが可能。また、一般的な動翼と比べて前縁が厚いため異物突入にも強い。
燃焼室
・アニュラ型燃焼器(低NOx型 TALON燃焼室)
燃焼室内はセグメント化された交換可能な第二世代 フロート・ウォールが採用されている。
高圧タービン(HPT)
・高圧タービンは2段構成 単結晶合金材 PWA1484
初期のHPT1・2動翼やNGV・燃料ノズル・カーボンシールなど、ホットセクションに関わる部品は設計寿命が想定よりも短かったため再設計された。
アップグレードされた部品は、寿命が15,000サイクルから23,000サイクルへ改善。また、2006年にはHPT1・2のブレードが再設計されより強化されている。
低圧タービン(LPT)
・7段構成、タービンケース・アクティブ・クリアランスコントロール
燃料制御
・FADEC
アクセサリー
・ギアボックスには、エンジン用の各種ポンプ、スターター、機体側(発電機、油圧ポンプ)が装着されている。
ギアボックスはシャフトを介して高圧軸と接続
機体用発電機(IDG:120 kVA)
競合エンジン
PW4000-112 seriesスペック
Pratt & Whitney | |
型式 | PW4000-112 series |
搭載機種 | Boeing 777-200/-200ER/-300 |
形式 | 二軸式 ターボファン・エンジン |
構成 | 【PW4084/4090】1-6-11-2-6 【PW4098】1-7-11-2-6 (Fan-LPC-HPC-HPT-LPT) |
離陸推力 | |
最大推力 | [PW4084] 84,000 lbf(38,136 kgf) [PW4090] 90,000 lbf(40,860 kgf) [PW4098] 98,000 lbf(44,492 kgf) [PW4077D] 77,000 lbf(34,958 kgf) |
バイパス比 | [4084] 6.4 [4090] 6.3 [4098] 5.8 |
ファン圧力比(FPR) | [4084] 1.70 [4090] 1.74 [4098] 1.80 |
全体圧力比(OPR) | 34.2~42.8 |
ファン空気流入量 | ー |
コア空気流入量 | ー |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
0.329(T-O時) |
巡航推力 | |
巡航推力 | ー lbf |
TSFC 燃料消費率 (lb/hr/lbf) |
- |
回転数(最大) | |
低圧軸(LP) | [4084] 2,990 rpm [4090] 3,045 rpm |
高圧軸(HP) | 10,850 rpm |
EGT | – |
ファン | |
ファン直径 | [4084/4090] 2.845 m(112.0 in) [4098] 2.867 m(112.9 in) |
ファン枚数 | 22枚 |
形状 | 中空ワイドコード ファンブレード |
材質 | チタン合金 |
圧縮機 | |
ファン | 1段 |
低圧軸 | [4084/4090] 6段 [4098] 7段 |
高圧軸 | 11段 |
燃焼室 | |
燃焼器タイプ | アニュラ型 (低NOx TALON燃焼室) 交換可能 セグメント・ウォールタイプ |
燃料ノズル | ー |
燃料制御 | FADEC |
タービン | |
高圧段 | 2段 |
低圧段 | 6段 |
材質(Material) | |
ファン | Ti-6Al-4V |
低圧圧縮機(LPC) | Ti-6Al-4V |
高圧圧縮機(HPC) | ー |
燃焼室 | ー |
高圧タービン(HPT) | Stg1:PWA1484 Stg2:PWA1484 |
低圧タービン(LPT) | ー |
サイズ | |
型式 | PW4000-112 series |
全長 | [4084/4090] 4.86 m [4098] 4.94 m |
ファン直径 | [4084/4090] 2.845 m(112.0 in) [4098] 2.867 m(112.9 in) |
重量 | [4084] 14,920 lb [4098] 15,740 lb [4098] 16,500 lb |
推力重量比 | [PW4090] 5.71 |
運用開始 | 1995年 |
※一部のデータはEASAから
※TSFCや材質は一般的に公開されている情報です。公開できない事項や調査中のものは[ー]で表記しています。